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自販機の衣替え

自宅の近所によく利用している自販機がある。
夜の散歩ついでに、そこで缶コーヒーを買って飲むのが小さな楽しみだ。
だが、近頃その自販機に対してちょっとした不満を募らせていた。

いつになったら、「あったか〜い」缶コーヒーが飲めるのか。

先日までは、まだドリンクが「つめた~い」の表示だった。
たしかにまだ残暑の影はあるし、完全に寒くなったとは言い難い。でも、もうそろそろ「あったか〜い」缶コーヒーが飲みたい。

「つめた~い」がまだ並んでいるのは分かるが、もう寒くなってきたんだし「あったか~い」も用意しといてほしい。
なんで両方、用意しといてくれないんだよ!
なんて小さく嘆いていた。

今日もいつものように夜の散歩に出かけた。
いつもの自販機に向かい、半信半疑でディスプレイを覗くと、なんと缶コーヒーの下に「あったか〜い」の赤い表示が!
途端、「おお」と声が漏れる。

「やっと『あったか~い』になったか~」
嬉しさに思わずひとりごちてしまう。

ディスプレイを見回すと缶コーヒー以外のドリンクも「あったか~い」の表示に切り替わっており、ホットレモンやココア、さらに今までディスプレイに並んでいなかった缶のおしるこまでそこにあった。ディスプレイに並ぶドリンクもついに冬の色を帯びてきた。


自販機もようやく衣替えか。


なんて、しみじみと情緒にひたりながら、「あったか~い」缶コーヒーのボタンを押す。下のトレーに出てきた缶を取り出すと、この缶がまた熱い。この缶から感じるぬくもりも冬の風物詩だ。

来たなあ、冬が。


自販機1つで季節を感じられるとは、おれもなかなか情緒深い人間だなあ。そんなことを思いながら、缶コーヒーを開けてズズッとすする。

コレだよ、コレ。


毎年思うが、寒い中で飲む「あったか~い」缶コーヒーがやっぱり1番うまい。

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