「ホールvsキッチン問題」
みなさんこんにちは。
相手の立場を理解するということはなかなか難しいことだと日々感じています。例えば飲食店におけるコミュニケーション不足の代表例といえば、ホールスタッフとキッチンスタッフの不仲問題ではないでしょうか?
お客様に接して、お客様のして欲しいことを察知しながら行動していくホールと、料理をベストな状態に調理して提供するキッチンとでは、仕事の性質が異なってきます。そのため、どちらかのことしか分かっていないとトラブルが発生しやすくなります。これは、メーカーなどにおける製造部門vs販売部門の構図と非常に良く似ています。
ホールスタッフはお客様とダイレクトに接します。なのでお客様のご要望にできるだけ応えたいという意識を持っています。そしてキッチンスタッフは、一定の品質の商品をスピーディーに提供することが求められます。そのため、イレギュラーな対応を嫌うことも多いです。
そのお店の責任者がホールとキッチンを両方こなせる方であれば、比較的問題は起こりにくいのですが、特に大型店舗の場合はどちらかに専門特化する場合が多いです。その為、責任者がホールしかできない場合はキッチンへの要望が通り辛くなることがありますし、反対にキッチンしかできない場合は、ホールスタッフに的外れの指示を出してしまうことがあります。
ホールとキッチンの関係性がよくないお店は、お客様から見ても「なんかギスギスしている」と感じられてしまうでしょう。
仮に、キッチンの勢力が強くなってしまっている店舗があったとします。
そこではどんなことが起こるでしょうか?
例えば、ホールスタッフが料理提供が遅れていることに気付いても、シェフに怒られるのが怖くて「あとどれくらいで出来るのか」とキッチンに確認できない。とか、お客様から〇〇を抜いて作ってくださいというような要望があった時に、キッチンに確認するのを躊躇して「できません」と断ってしまう。そんな状況が考えられます。
ここで一番の問題なのは、キッチンスタッフはおそらくホールスタッフの状況に気付いていないということです。このお店のキッチンスタッフはおそらく「料理」だけをみて仕事をしています。それが単純に悪いという話ではなく「気付いていない」だけの場合が多いのです。
みんなそれぞれに「お店を良くしたい」と思っていても、考え方や方法が異なっているとうまくいかないことがあります。ここのキッチンスタッフは「自分が最高の料理を作ることが全ての顧客満足につながっている」と考えているかもしれません。その考え方自体は非常に素晴らしいかもしれませんが「それが全て」だと思い込んでしまうことで問題が発生します。同じように、ホールスタッフも「お客様のご要望にはすべてお応えする」という考えを持っていた場合、首を縦に振らないキッチンスタッフに不満を持つかもしれません。お互いに、自分が正しくて相手が間違っているという構図を作ってしまいます。こんなことが、日々の飲食店の現場ではよく起こっていると思います。結果としてこのお店はお客様を満足させることはできるのでしょうか?
ホールとキッチンの関係性がうまくいっているお店にはある共通点があります。それは、お互いの意思疎通を図る努力をしていることです。
代表的なものは、開店前のミーティングです。ホールの責任者から、本日のご予約のお客様がどんな方なのか、たとえば接待での利用なのか、家族のお祝いなのかなどの情報が共有されます。その事によりキッチンスタッフは具体的にお客様をイメージすることができます。反対にキッチンの責任者から今日の仕入れに基づいたおすすめ商品や日替わりメニューの説明があります。料理の味付けのポイントやおすすめの仕方を知ることで、ホールスタッフはお客様に自信を持ってお勧めすることができるようになります。それ以外にも問題点や懸念事項があれば共有しておきます。この時にお互いをリスペクトしていれば、トラブルになることはないでしょう。意思疎通を図ることにより、感謝の気持ちが生まれ、ホールとキッチンがお互いの努力でお客様の満足が成り立っていることを意識できます。
非常にシンプルですが、ここにたどり着くまでにはたくさんの困難があると思います。スタッフ全員が同じ方向を向くためにはお店のリーダーが方向性を示すことが重要です。「このお店はこんなお店にしたい」という店舗の理念やビジョンを明確にすることで、スタッフとの向き合い方を変えていく。結果としてお客様にもそれが伝わり「いいお店だな」と感じられるようになるはずです。
一期一会という言葉があります。
私は飲食店は生き物だと思っています。今この瞬間は二度と訪れません。同じレストランでもそこに座っているお客様の雰囲気や、働いているスタッフの仕草、明るさなどによって常に顔を変えています。だからこそ、「今」に集中することが大切なのです。
難しいけど、面白い。
飲食業って素敵な仕事ですね。
読んでいただきありがとうございます。