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創作活動お助け! ノブレスオブリージュから考えるキャラ作り

勉強する中で創作に役立つと思った知識を、ばっくりとお伝えします。
まずは前置きから

思い付き創作は更に飽和していく


昨今のYouTubeを見ても分かるように、【~してみた】などのアイデアは、あっという間に摸倣され拡散します。
小説で言えばVチューバーモノが当てはまるでしょうか。
若しくは家電製品や食べ物を主人公にしたりする、一発芸的な物語。
少しだけ毛色を変えれば、比較的誰でも書けてしまいます。

そしてAIが創作できるようになりつつある現在、アイデアだけが売りの作品は更に大量生産されていく可能性があります。
これまで小説を書いたことのない方が、パッと思い付いたアイデアでAIに執筆させてしまう。
イラストAIも進化してますので、漫画の画力やラノベの挿絵の魅力も差別化には至りません。

オリジナリティがあり、かつ深みのある作品を作るには、知識を増やしていかねばなりません。
知識が増えることで生まれるアイデアもありますしね。(というかその方が多いと思う)

いずれAIはそれらの知識さえも乗り越えてくるでしょうが、まずは第一波である――

【簡易な文章を大量生産】

この波を逃れる為にも、知識を蓄えていくことが必要です。

では前置きはここまで、本題の解説に入ります。

ノブレスオブリージュとは


ざっくりと言えば、高い身分や才能を持つ者は社会的義務を負う、というものです。
19世紀に生まれた言葉ですが、概念自体は昔から存在し、聖書にも似た記載があることから欧米では美徳される考え方です。

海外の有名人や成功者がチャリティを行う。

イメージし易いのはこの辺りでしょうか。
しかし、これを単なる親切や奉仕の精神だと、日本人的に解釈するだけでは足りません。

そもそもの考え方として、高い身分や才能というのは、天から与えられた贈り物だとしています。
英語ではgiftという言葉が用いられますが、giftには天性の才能という意味も含まれるのです。

天から贈られたギフトであれば、己の実力で得たものではない。
己のものではないのなら社会に、あるいはギフトされていない者に与える義務がある――という感じです。

これは決して、お金だけに限った話ではありません。
基本、アメリカのスーパーヒーローは、この精神の下に動いてます。
例えば——

大いなる力には大いなる責任が伴う

スパイダーマンのベンおじさんの台詞として有名ですね。(この格言の発祥自体はもっともっと古いです)
これはまさしくノブレスオブリージュです。
この責任の意味を日本人的には——

やべぇ力を持っちゃったから気を付けて扱ってね?
悪用してはならないよ。

みたいな解釈で止まります。
間違ってはいないのですが、しかし根本の考えとして——

君は巨大な力をギフトされた。ならばこの力は君のみが所有していいものではなく、社会のものとして使わなければならない責任がある。

という部分が根っこにあります。
まずそもそも社会に還元する義務という土台があり、その上で正義にも悪にも転びうるから気を付けてね、という解釈が成り立ちます。


次はストーリーに落とし込んでみましょう。

日本的な場合
巨大な力を持つ悪党が現れた。
大いなる力を持つ主人公が悪を倒す。
めでたし。

水戸黄門、ヤッターマンなどなど。
なろう小説に見るざまぁ系が流行るのも、勧善懲悪ものの文化が強い日本に刺さるのでしょうね。

ノブレスオブリージュの場合
大いなる力を持つ主人公がいる。
力を社会に使うべく動く。
悪を見つけ出し叩く。

おんなじじゃないかって?
いや、違うんですよこれが。

前者は悪に対するカウンター。
まず絶対的な悪が現れて、それを倒せば正義という単純な構造。
対してノブレスオブリージュの精神を持つ者は、義務感から悪を見つけて叩きます。

有名なポケモンで例えると——

サトシはロケット団を倒します。
別にロケット団を自ら倒そうと励むのではなく、あくまで道中の邪魔者だったり、見逃せない悪だから懲らしめる訳です。
ロケット団という絶対悪がいるから、それを倒すだけでサトシの正義が光る訳ですね。

これがノブレスオブリージュの場合、自らロケット団を倒しに行きます。
ロケット団を倒せる力を持つならば、それが己の義務だと考え行動します。
サトシの正義感に主体が置かれる訳ですから——

悪があっての正義ではなく、サトシの思う正義で悪を倒す

この構図になる訳です。
つまりサトシの思う正義が必ずしも正しいとは限らない。

悪の団体であるロケット団を見つけ出し、そこにいるムサシを倒す。
しかしムサシには過去、貧困で苦しんでいた過去があることを知る。
自分が倒した者が、元々は守らなければならない弱者だった。
果たして正さなければならないのは、ロケット団という悪の団体なのか。
それとも悪の団体に入らざる負えない者を生み出す、この社会なのか。

正義とは何か、悪とは何か。
逃げたい、しかし義務であるからには逃げる訳にはいかない。
そもそも、なぜ自分なのか。なぜ天は己を選んだのか。神は俺に何を望んでいるのか。
葛藤するサトシが描ける訳です。

出てきた悪を返り討ちにする構図では、なかなか描けない物語ですよね。
さすがにこの構図をポケモンに使うのはありえないですけど…(おまけにサトシだけ特別な力を持ってる世界観じゃないし)
でも、なんか深みっぽいものが出ることは分かりますよね?

主人公に葛藤させたい場合には、ノブレスオブリージュの精神が使えます。

反対に、【二度目の人生は自由に~】【スローライフ~】
などなどはリバタリアニズムな考えです。
個人の自由を尊重し、自分の能力は自分のものとして使うべきだというリバタリアン、現代では主流な思想です。

転生を受ける、スキルを貰うなどは、描写として神から授かる場合が多く、疑いの余地なく恩恵を受けてると分かります。
仮にノブレスオブリージュの精神を持つ者だったら、その力は個人が所有して良いものではなく、大いなる義務感に駆られるはずです。

また主人公の自由な行動に対して素直に共にする者、疑問に思わない地域もリバタリアニズムないしリベラリズムということになります。
そうした地域に王政が敷かれていた場合、なぜ自由を良しとする人たちが民主化を目指さないのかという矛盾が発生……

みたいなところまでいくと極論だと思いますが…深い物語を作る際には応用できる部分があります。
個性というより時代性、民族性としての一貫した表現をしたい場合には、なにより現実にある思想を引っ張ってくるのがリアルな上に楽ですし、アイデア頼みの人間には確実にできない表現でしょう。

ちなみに令嬢などの貴族ものを描く方は、もっともっと深くまで勉強する必要があります。
貴族のノブレスオブリージュ的思想は彼らを描く際に必須であり、こんな概要程度じゃ全然足りません。

貴族はほんっと奥深いですから…
自分が金持ちになったらこんなもんだろ! 
程度の浅はかな予想は100%外れます。

歴史の他にも心理学やら科学やら絵の勉強やら、広く浅くの私には到底説明できません。
今を生きるイギリス貴族。イギリスの一般人ですら貴族たちの社会に興味を持ち、そのミステリアスさを解明できてはいないのです。

日本で育った日本人の私に完全理解は無理な話だ!

なんですけど、それでも勉強してる中で貴族のすげーと思ったことは別記事で書こうかな…

最後は蛇足でしたが、以上がノブレスオブリージュから考えるキャラ作りでした。

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