【インスタントフィクション】 最新のファストトラベル
旅行に行く時代はおわった。
人間の五感は電子情報として伝えることができる。
素晴らしき時代。
人類は旅立てるようになった。
「いやあ、素晴らしいですね」
「本当にねえ」
「どちらから来られたのですか」
「日本です」
「へえ、めずらしいところから」
「出身地ではないですが」
「ははは、よくあることです」
「あなたはどちらから?」
「月です」
「へえ! 随分とややこしいところから」
「そうなんですよ。生まれがそこなんですけどねえ」
「とすると、ああ! 記憶媒体でない人とおはなしするのは久しぶりだ」
「え、身体がないんですか、あなたは?」
「そうですよ。いまどき珍しくもないでしょう」
「まー…。やっぱり冥王星にアーカイヴがあるんですか?」
「アーカイヴは月にありますよ。なぜそんなことを?」
「ええ…? 10分前にはアーカイヴは冥王星にあったのに」
「10秒前に月に戻ったんですよ」
「時の流れは早いですね」
「ええ、本当に」