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スウィング・キャットガール

吹奏楽という世界は、猫的ではない。むしろ、犬的だ。規律、協調、練習、努力――それがすべて。吹奏楽の世界では、「完璧」が求められる。だから、私は今の吹奏楽部に少し居心地の悪さを感じていた。猫のように自由で気ままに生きたいと思う自分にとって、吹奏楽はその真逆の世界だったのだ。

私が吹奏楽部に入ったのは、中学2年の秋だった。特に音楽に興味があったわけではなく、友達に誘われて「なんとなく」始めた。あの頃は、何かを深く考えて決断するなんてことはほとんどなかった。軽い気持ちで始めた部活が、まさかこんなにも私を追い詰めるものになるなんて、想像すらしていなかった。
しかし、高校に進学し、吹奏楽部の練習が本格的になるにつれ、「なんとなく」では済まされない重圧がじわじわと私を蝕んでいった。中学時代のような無邪気な楽しさはどこか遠ざかり、副部長としての責任や、サックスのソロパートを任される重圧が日に日に増していき 、私はもはや軽い気持ちで続けられる部活ではなくなっていた。

日々の練習は、完璧さを追い求め、失敗は許されない。「成果」を出さなければならないという重圧は、私にとってどんどん大きくなり、耐えられなくなっていった。そして、次第に部活を休むことが増えていった。
しかし、そんなプレッシャーに押しつぶされそうな日々の中で、私には誰にも言えない秘密があった。実は、唐突ですまないが、私は猫の気持ちがわかるのだ。いや、正確に言えば、彼らの感情がなんとなく伝わってくる。家の近所の野良猫や、学校の図書館に住み着いている三毛猫たちが、時折私に話しかけてくるような感覚があった。彼らは自由で気まぐれだ。好きなときにふらりと現れ、気が向けばさっと去っていく。その姿を見るたび、私は自分も猫のように自由に生きられたらいいのに、と強く思っていた。だけど、吹奏楽の世界はそんな自由さとは無縁だった。練習は厳格で、協調性が求められ、努力と規律がすべてだった。だから私は、次第にその重圧に押しつぶされ、部活から少しずつ遠ざかっていった。

そんなある日、大事なコンクールが近づいてきた。私はサックスのソロパートを任されていたが、責任の重さに押しつぶされそうだった。吹奏楽部では、ミスは一人の問題ではなく、全員がその責任を背負う。全員の成果を自分一人の演奏が左右する。そんな状況に、私は耐えられなくなり、部活を避けるようになってしまった。
それでも、逃げてばかりではいられないことも知ってはいた。


「本気で逃げるつもり?」

ある日、図書館の三毛猫が私に話しかけてきた。「失敗しても、また挑戦すればいいじゃない?」と、彼女はいつも軽やかに言うけれど、私はその言葉を信じられなかった。失敗が怖かった。もし本番でミスをしてしまったら、みんなに迷惑をかけてしまう。それが怖くて、私はただ逃げ続けていた。

その夜、夢の中で三毛猫が現れた。彼女はのんびりと伸びをしながら、「あんたね、猫だって失敗するわよ。でも、それがどうしたの?次に進むだけでしょ」と言った。その言葉が心に響いて、私は少しだけ気が楽になった。

翌朝、私は再び部活に向かう決心をした。吹奏楽は猫のような自由さとは無縁だ。それでも、私はもう一度挑戦することにした。部室に入ると、いつもより少し緊張した面持ちの部員たちが集まっていた。みんな、私と同じようにコンクールを前にしてプレッシャーを感じているのだと思った。そんな時、副部長として何を言うべきか悩んだが、ふと、三毛猫の言葉が頭に浮かんだ。「失敗しても、また挑戦すればいいじゃない」。
私は笑顔を作り、みんなに声をかけた。「みんな、失敗しても大丈夫。私たちはここまでやってきた。最後は一緒に楽しもう!」。その言葉に、少し硬かった空気が和らぎ、部員たちも微笑んでくれた。私一人ではなく、みんなで挑戦しているんだ、と改めて感じた瞬間だった。
そして、コンクール当日。舞台に立った私は、心臓がバクバクと音を立てるのを感じたけれど、深呼吸をして落ち着こうとした。ふと、周りを見渡すと、仲間たちが私を見つめて微笑んでいるのが目に入った。彼らも同じ不安や緊張を抱えながら、それでも信じて演奏を続けようとしていた。三毛猫の言葉が頭をよぎる。「失敗してもいいのよ。次があるんだから」。その瞬間、肩の力がすっと抜け、気持ちが軽くなった。ソロパートが始まり、指が震えていたが、私は音を出し続けた。完璧ではなかったけれど、最後まで仲間と一緒に演奏できたことが嬉しかった。
演奏が終わると、仲間たちが「よくやったよ」と声をかけてくれた。結果は期待していたほどではなかったが、みんなで一つの挑戦をやり遂げた充実感があった。失敗しても、だからこそ次に進める――そんな猫たちの生き方を、少しだけ理解できた気がした。
帰り道、あの三毛猫がふらりと現れた。「どうだった?」と聞かれ、私は少し笑って答えた。「失敗したけど、楽しかったよ」。彼女は満足げに尻尾を振って、どこかへ去っていった。

吹奏楽の世界は、規律や努力を求める、いわば犬的な場所だ。息苦しく感じていたけれど、挑戦を重ねていくうちに、それが自然と心地よくなっていった。ミスを恐れずに支え合いながら一つの音楽を作り上げる、そのプロセスには特別な達成感があった。
猫のように自由に生きることも素敵だけど、犬のように仲間と協力し、互いに支え合って前に進む生き方も、なかなか悪くない。どちらにも、それぞれの良さがあることに気づいたんだ。

でも、やっぱり、猫が一番なんだけどね。
 
-Fin

#挑戦してよかった




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