笑う 笑いかける 笑われる
いつまでも夏があっちへいってくれない。
今日も暑かった。ぐずついた天気でもあった。ムシムシしていている。早く秋が夏を追い越してほしい。
三連休初日、私は午前中は仕事だった。
仕事を終えて車に乗り込み、大通りから細い脇道に入っていつものようにマンションの横を通ったとき、マンションの外側に並んである花壇におじいさんが埋まっていた。
埋まっているというのとは違うが、正しくは花壇の(幸い花も木も植わってなかった)なかにすっぽりしりもちをついていた。
そこから立ち上がれなくなっていた。
手足をなんとか動かしていたが、どうにもこうにも抜け出せない。うまく立ち上がれない。
そんな様子だ。
「あちゃー」
私は頭をフル回転させた。
こんな細い道路に車を停めて、人助けをするのはリスクが高い。前後から車が来たら、端に避けられるようなスペースがない。
でも、前から車が来たらすぐわかるし後ろの場合は数メートル余裕があるから、突然ぶつけられて事故に繋がるようなことはない。
「ええい、ままよ!」
私は物凄いスピードで車から降り、おじいさんに駆け寄った。
上下茶色のシャツとスボンを履いていたその方は、お花のようにすっぽり埋まっていた。
「立てます?」
声をかけると
「うーん、ダメみたい」と言った。
細くて小柄な男性だった。私は後ろに回って腰の辺りを持ち上げた。
せいのー!という掛け声とともに数回目でおじいさんは立ち上がることができた。
真夏でなくて良かった。
けれど、おじいさんは大汗をかいていた。
私も汗だくにはなった。
服に付着した砂のような泥のようなものを手で払っていたが、すぐ落ちた。さらさらしていた。
「なんか、すみませんねぇ、助かったわ」というので、
私はマスク無しの顔でニコッとしたつもりだった。
それは大丈夫ですよ!全然大丈夫!という意味を込めた。
すると、そのおじいさんは
「ワシの顔、変じゃない?いつも、笑われるんだけど」というので
一瞬意味がわからなかった。
私は、ただ心から良かったぁと思って微笑んだ、つもりだった。
そのおじいさんには、笑われてるというような表情に映ったのだろうか?
「そんなことありません!私そんな顔してましたか?」
思わず聞いてみた。
「いやいや、あなたはそうじゃないんだけど…」
じゃあなんで……???
そのおじいさんはマスクをしていた。
陽気的には、マスクをしたら暑いくらいの日。
高齢の方はマスクをする傾向があるような気もするが、なぜマスクを?とは聞けなかった。マスクをしないと笑われるからだろうか?
誰に?
家族に?
赤の他人に?
すれ違う人に?
もしかして、私が人を小バカにしたような笑いかたをしたのかなあ?
言われたことはないけど。
それでは気をつけて!と声をかけて、家路についた。
あれって一体どういうことだったのかな?
考えても答えはみつからないし、あの方と会うことも、もうないかもしれない。
いつも笑われるってなんか嫌だな。
人の特長を笑うってこと?
また考えてる。
モヤモヤした連休初日。
それでは