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明かりを絶やしてはならない〜『らんたん』の感想〜

柚木麻子さんの作品は絶対面白いから、もったいなくて買ったままにしてた『らんたん』を一年越しでやっと読みました。かなりよくて読み終わるのが寂しい気持ちになりました。

内容

大正最後の年。かの天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児は、渡辺ゆりにプロポーズした。
彼女からの受諾の条件は、シスターフッドの契りを結ぶ河井道と3人で暮らす、という前代未聞のものだったーー。

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恋愛感情のないパートナーシップ

最近LGBTQのカップルへの理解も少しは進んできているけど、どこか人生のパートナー=恋愛感情をベースに結ばれた2人という暗黙の了解があるように思います。恋愛感情…もっとストレートに言うと性的関係があるかないかです。

友情を基にした関係でしかも3人。今でこそ反対されそうな最先端なことを、この日本でしかも昭和初期頃に行われていたことに頭を殴られたような衝撃を受けました。

ゆりと乕児は子どもを設けているので恋愛感情のある夫婦だけど、道とゆり、道と乕児には性的関係はありません。新しすぎて?(はてな)がいっぱいだけど子どもが小さいときは道も子育てを手伝ったり、道が病気になった際はゆりと乕児が面倒を見たりと互いに助け合っているので理に適っているように思います。

もし今後、誰かと一緒にパートナーシップを築くなら必ずしも恋愛感情をベースにしなくてもよいのではないかな?と思いました。まぁ、道・ゆり・乕児みたいな人に出会えるかが問題だけど。3人は誰か1人があぶれそうだから私は2人がよいな。

女性の自由=明かり

ちょこっとネタバレあります。

タイトルの「らんたん」は道が留学したアメリカのブリンマー大学(女子校)で新入生歓迎のセレモニーで使う「ランターン」から来ています。道は同級生から「この火を絶対消しちゃだめ」と言われます。それは最初に火が消えた人は卒業後すぐ結婚し、最後まで火が消えなかった人がドクターになると言われているからです。

この「ランターン」の風習はのちに道とゆりが開く恵泉女学園でも引き継がれて、卒業生が在校生に手渡される「学燈ゆずり」として行われているそうです。

この灯籠の火が女性の自由を象徴している気がします。戦前から弾圧されながらも火が絶えないようになんとか続いてきてなんとか今に繋がっている。現代になってやっと女性の権利について少しは考えられるようになったけど、まだまだ不十分だよね。

広岡浅子、津田梅子、平塚らいちょう、村岡花子……オールスター勢揃い

経済界、教育界、社会活動界(?)、文学界などジャンルを問わない著名人がたくさん出てきます。実際に道やゆりと関係があったみたいですが、ちょっと盛り込みすぎでややこしい…。

と思ったのですがどの人も必ずしも意見が同じではないし、道やゆりの考えが間違っていると糾弾する場面もあり多様性を垣間見ているようでした。一つの意見しかない、他の意見を言えないっていう環境自体不自然なのかも。

まとめ

読んでいて前向きになれた作品です。今期No.1といってもよいかも。ただ、気になるのは日本の女子大のイメージ。女性が社会進出できるようにっていう志で開かれているのに真逆な良妻賢母感。高校までは進学校のところも多々あるけど、大学になると偏差値はあまり高くない所の方が多い。

女の人全員が働かなくてもよいけど、建学当初の思いはどこに行ったんだと聞きたくなる。この辺も踏まえた現代の女子大を舞台にした作品を柚木さんに書いてほしいです。


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