とある女性のエッセンシャル思考〜『なんとかしなくちゃ。 青雲編』の感想〜
恩田陸さんの『なんとかしなくちゃ。 青雲編』を読みました。あらすじを見てどんな話かわからなかったけど、面白かったです!続編早く出ないかなー。とりあえず、感想をば。
内容
エッセンシャル思考
主人公の梯結子(かけはし・ゆうこ)は何かキモチワルイこと(効率が悪かったり不条理だったり)ことがあると「どうしてそうなったか?」と背景を考え、対応策をいくつか出しその中からコストがあまりかからず諍いが起きない方法を実行して解決していく。
これって前に読んだエッセンシャル思考だ!
対極を知る
「背景を考えて対応策を出す」なんて優しさがないイメージだけど、そんなこと全然ありません。結子の行動原理は自分や他の人が困っていることを解決したい!です。
たしかに幼い頃から効率を重視する傾向があったものの彼女に影響を与えたのは茶道。この茶道が人の気持ちを考えたり時間の流れなど…結子の人生に大きな影響をもたらしていくことに。
印象に残ったのは、お茶の先生の「お茶が美味しいのは、時間をいただいているから」という趣旨の一言。なんでもかんでも急げばよいもんじゃない。結子も感銘を受けたけど私にもグッとくる一言でした。
気持ちとお金の関係
話しは変わって小学生のときってお誕生会ってありませんでしたか?地域や年代によっても違うけど私のときは、ホストが料理やお菓子を用意してゲストがプレゼントを持ってくる形式でした。
プレゼントはそんなに高いものではなかったけど今思えばいろんな家庭があってあのシステムって残酷な一面もあったのではないかと思います。無理させてしまっていたことはなかったのかな。
誕生会のことを思い出したのは、結子の姉のエピソード。彼女は華やかな性格でクラスの人気者。誕生日にはたくさんの友人が集まり裕福な家庭の子はかなり高額なプレゼント用意することも。もちろんプレゼントだけではなくケーキ等の生菓子を持ってくる子も。
かなりの量のプレゼントが集まり生菓子は食べきれなくて腐らせてしまいます。追い討ちをかけるように派手な誕生会がPTAで問題になり姉の学年は自粛令が出されしまいます。
これを見ていた結子は仲良し四人組で誕生会のルールを決めます。ルールを決めるというと厳しいメージがあるけど、枠が決まると誰かが無理をしたり無駄なことをするといった不条理なことがなくなるのだなと思いました。
本当にこのルール決めは素晴らしくて経済的に厳しい家庭の子も考えられています。どうしても人って張り合っちゃうから、一番大切な「みんなで楽しい時間を過ごす」っていう目的を忘れずにいたいものです。
生き残った人が勝者
ときは流れて結子も大学生(ずいぶん端折りました)になり、ひょんなことから城郭研究会に入ります。そのサークルでは城攻めシュミレーションというディスカッション(?)をやっています。実際にあった落された城の原因になったこと(天気や兵糧攻めなど)をなかったことifにして敵味方に分かれて戦うというものです。
城攻めシュミレーション自体面白くてBSNHKの「英雄たちの選択」あたりでいろんな専門家を呼んでやってほしいです。それはさておき結子の核となる考え方「カケハシドクトリン」を紹介させてください。
彼女は一発目の城攻めシュミレーションで「何をもって勝ったとするか?」に疑問を持ちます。裏返せば何が落された(負けた)とされるかです。結子は「生き残った人が勝者」と考え、それも怪我やPTSDなどが少なく心身共に健康な状態と定義します。
作中にも書いてあったけど後に歴史を残すのは、生き残った人なんだよね。プライドとかで投降しなくて全滅しちゃったら意味ないもんね。死人に口無しだもん。心身共に健康っていうのもポイント。
なんとかしてほしいところ
次回なんとかしてほしいところは、結子が失敗しないところだな。何事にも失敗は付き物だし(仕事だとなおさら)、彼女は一つの失敗から何個も学びそうなのでそこが見たいです。あとは、家事についてもっと触れてほしい。食堂方式以外にも家族を巻き込んだ人的マネジメントとかで辣腕振るってほしいな。
あと恩田陸さんの主人公って派手ではないけど美人って設定が多い。ルッキズムとか言われてる時代だし、物語に関係ないから形容しなくても良かったんじゃないか?と思いました。恋愛が絡んできたからだけど美人でなくてもモテる人はいるからね。
まとめ
とにかく規格外で分類ができない作品だなと思いました。何かに向かって進むというより一つ一つのエピソードが刺さるのでゆっくりしながら読むのが良いかと思います。早く続編出て〜!
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