児童書に学ぶリーダーの極意
私の中で司書時代に読むように薦められていた児童書を読むというキャンペーンを開催中!今回は映画にもなった斎藤 惇夫著『冒険者たち』を読んでみた。
400ページ弱の長編で、文字も小さい(約3㎜/字)ので大人でも尻込みしてしまうボリューム…。読んでみると意外と苦にならず、発行されてから30年近く経つのに新鮮な読後感!
子どもはもちろん、働く人にこそ読んでほしい。
※少しのネタバレがあり。
まずは、あらすじ
何不自由暮らしていた町ネズミのガンバはひょんなことからイタチと戦う島ねずみを助けに行くことに…。個性あふれる仲間と力を合わせて、獰猛なイタチに立ち向かう!
注目したいのは、ガンバの素質
言いだしっぺということもあり、戦いのリーダーになったガンバ。彼はずっと町にいたので海のことも町のことも知らない。かといって、腕っぷしが強いわけでもない。もっとリーダーに向いているねずみはいるよ…。というのがはじめの感想。
読み進めていくうちにガンバのリーダーの資質があらわれてくる。これってリーダーに必要じゃない?って特に思ったのは次の4つ。
モチベーションが高い
危機管理能力が高い
メンバーの長所を見つけるのが得意
偉ぶらない態度
これがあれば物知りじゃなくてもよいし、屈強でなくてもよい。得意な仲間にやってっもらったほうが効率的。なんでもできて「俺について来い!」タイプだとその人に任せっきりになって言われたことしかしなくなる。その点、ガンバは「知らないことたくさんあるから、教えて!」という態度だからみんな自ずと協力してくれる。
最近は「できないことあるから、みんな協力して!」タイプも認知されてきたけど、この本が出された1990年代は親分肌のリーダーが主流だったように思う。
休養の必要性
この本では、大事なプロジェクトの前に休養を取るようにリーダーや仲間たちが促す場面がある。今でこそ休養や睡眠の重要性が取り挙げられてるけど、バブル期は働いてナンボ!な空気だったと思う。
著者の斎藤 惇夫さんは福音館書店の編集者をしていてハードワークが当たり前な職業だと思うけど、休養の発想があるのだな…。
弱者を切り捨てない
ガンバの仲間でボーボという吃音がありおそらく知的障害もあるねずみが出てくる。はじめは「なんでこんなやつを連れてきんだ!」と言うねずみもいるけど、彼の明るさや突飛な発想にみんな救われることになる。
この時代どちらかというと「障害がある人はかわいそそう」という考え方が主流だったと思う。その中で共生をテーマにしているのは素晴らしい。
ちなみに文中に知的障害者を示す「うす*ろ」と表記があって差別用語には疎かったことがうかがえる。吃音の「ど*り」は使ってないのに!
苦しいときこそ必要なもの
作中では歌やダンス、詩がたびたび出てくる。楽しい場面ではもちろんだけど、苦しい場面でこそ力を発揮するというのが大きな発見。
コロナ渦で歌やダンスが不要不急だと切り捨てられたけど、苦しいときにこそないと困るのでは?というのが感想だった。
まとめ
正直、ハムスターも無理なくらいねずみは苦手…。でも、話の面白さと登場人物の魅力で感情移入しながら読むことができた。
次は私の好きなリスが出てくる『グリックの冒険』(斎藤 惇夫著)が読みたいな。