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覚醒剤の適量ってどれくらい?

 「自分にとって適当な覚醒剤の量は?」──これはポン中(覚醒剤依存症者)永遠の命題です。といっても、本当は一生使い続けてもわからないかもしれない。

 非合法薬物の場合、教科書があるわけではないので、覚醒剤の使い方にはじつはかなり個人差があります。自分の場合、20代前半に人からすすめられて使っていたときには、使い方から使用量まで相手に任せていたので、そもそも1回あたりの分量がよくわかっていませんでした。

 一般的には一緒に使う人や売人に教えてもらうのが普通だと思うのですが、自分の場合、40代で再使用したときは周りに聞ける人がいなかったので、とりあえず購入したグラム単位のパケの覚醒剤を一度に全部ぶっ込むというやり方をして、ひどい目に遭いました。食事どころか、3日間まともに立てなかった。今から思えばよく死ななかったなと思います。無知って怖ろしい。

 そのうちに覚醒剤の解説ブログや鶴見済『人格改造マニュアル』などを見つけて、一般的な使い方や適量を知りました。

 ただ、一般的なやり方を知った上でもなお適量の答えが出ないのは、その人の体質や使用環境によって必ずしも覚醒剤の効果が一定でないからです。覚醒剤の質も毎回違います(たぶん混ぜ物の比率が違う)。そして、とくに向精神薬(抗うつ剤、抗不安薬、睡眠薬)を常用している人は、服用していない人に比べて覚醒剤の効果が出にくいと言われています。そのため、向精神薬を服用しているからと思い多めにぶっ込むと、今度は毛細血管が収縮し、顔も手足も真紫になるくらい過剰摂取になったりします(凍傷かと思うくらい、手足がキンキンに冷えます) このさじ加減が難しい。

 あとは使うときの体調にもよります。とくに追い打ち(1回入れて追加で覚醒剤を入れること)の場合は、量を入れても正直そこまで効きません。やはりある程度間隔をあけ、ドーパミンが満タンに回復してから使うのが鉄則になります。

 よくXの投稿とかで20メモとか入った注射器の画像をアップしている人がいますが、実際1回であれだけ入れると、たぶん気持ち良さよりも数日具合が悪くなるのではと心配したりします(数人での回し打ち用なのかもしれませんが)

 要するにポン中になると、使っている間はもちろんクスリのことしか考えられないし、使っていない時も「次回はこれくらいの量をこのやり方で入れれば、絶対前回より気持ち良くなるに違いない」という企みを頭の中で巡らせ、次回の覚醒剤の摂取を期待し続けるわけです。この状態を「薬物依存症」と呼びます。使っていない時も常にクスリのことを考えて、脳からヨダレが出ている状態のことです。

 というわけで、すべてのポン中は「自分にあった覚醒剤の適量」を追い求め、延々覚醒剤を使い続けているといっても過言ではありません。

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