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私の下には水があります。

まずいことになった。

ここはいったいどこだろう。

どうしてこうなった。


俺はただ良いサービスを受けたかっただけなのに──




俺は家族の為に身を粉にして働いてきた。

別にそれに不満はない。

でも月々のお小遣いが一万円ってのはどうなんだ?

37歳にもなって一万円じゃ禄に楽しめない。


俺はそうやって日々鬱憤を溜めていた。

そんなある日、一通の身に覚えのないメールが届いた。

それは出会い系のようであり風俗の案内のようでもある不可思議な内容だった。

普段なら無視する迷惑メールだが、何故か目が離せない。

しかし、俺は文章を読むのが苦手だ。

だから単語をピックアップしてなんとなく理解する悪いクセがある。

そのメールで俺の目に飛び込んで来たふたつの単語。

「Dカップ」と「一回9千円」だ。

アホな俺はこう思った。

チャンスきた!

一万円のお小遣いで楽しめるぞ。


全然疑いもせず、ただラッキーだという気持ちでいっぱいだった。

どうやら航空会社で働いている女性かららしい。

ワクワクがとまらない。

LINEのIDが添付されている。

俺はさっそく連絡をとってみた。




で、気が付くとこれだ。

俺は身に覚えのない部屋でひとりきり。

服は着ていない。

そして全身は濡れている。

落ち着け。

状況を整理しよう。




俺は航空会社の彼女と連絡を取り合い待ち合わせをした。

あれ?
顔がうまく思い出せない。

年齢はたしか26歳といっていたか?

たしかに「Dカップ」はあるようにみえた。

顔を思い出せないのは胸ばかり見ていたせいか。

俺は大人らしくカフェでもどうかと誘ったが、航空会社の彼女は恥じらいもなくホテルに行こうといいだした。

俺は面食らったが、まぁ一回9千円だし向こうも時間をかけてはいられないんだろうと無意味な理解を示してホテルへ直行した。






ダメだ。
ホテルの部屋に入ってからの記憶が曖昧だ。

机にあったお酒で乾杯して…。

寝てしまったのか?

かすかに彼女の言葉が蘇る。

「兄さんこれでオーガスト達成よ」

「私は兄のために良いサービスを提供するのよ」

「私の下には水がたくさんあるの」

だめだ。

思い出しても支離滅裂でまったく意味がわからない。



濡れてるこれは水か?
私の下には水がたくさんあるのってこの水か?

コワいコワいコワい。

すぐにシャワーを浴びようとした俺の視線は机で止まった。

そこにはサイフが無造作に置かれている。

俺のサイフだ。

長年使い込まれた長財布。

ない。

俺の一万円札がない。

代わりに千円札が一枚入っていた。

しわくちゃの千円札を薄暗い照明にかざす。

透かしからこちらをみる肖像と目が合う。

脳裏に「一回9千円」がフラッシュバックする。

ちゃんとお釣り用意してんじゃねーよ!

あまりの不可解な現状に、あたりまえの事に無性に腹が立つ。


クッソ。

俺は9千円でいったい何をしたんだ?

今月をあと千円で過ごすのかよ。

あの航空会社の女なにもんなんだ。

オーガストってなんだ。

私の下の水ってなんだ。

9千円払ったんだからそれぐらい教えてくれ。



家族には今日のことは言えないな。

9千円も使ったことがバレないようにしないと。

しばらく缶コーヒーはお預けだ。


はやく帰って今日のことは忘れよう。


俺は簡単にシャワーを済ませて服を着る。

ため息をつきながら靴を履こうとした。


そこで俺は膝から崩れ落ちた。


俺は何時間ホテルにいた?
いや、仮に1時間程度だとしても千円で足りるわけがない。

終わった。

俺の人生「Dカップ」と「9千円」で終わった。

最後に見たかったなぁ「Dカップ」

部屋へ踵を返しベッドにドスっと勢いよく寝転がり独り言ちた。

「俺の下には水がたくさんあります」


俺は泣いていた。




ある男にきた迷惑メールの内容からインスピレーションを得て無駄に書き上げてしまった。

意味不明過ぎて意味不明な話ができました。

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