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ログインボーナス

2025年 日本政府は自殺防止の一環として日本国民にログインボーナスを支給することを突然発表した。

毎日、マイナカードへ何かしらの特典が付与される。

一律の特典だけでは自殺防止には繋がらないとして、毎日100名に特別な特典がランダムで付与されるという。

翌日を迎えたボーナスというわけだ。

特別な特典に関しては、当たる確率が高い位置情報が事前に知らされる。そこで翌日を迎えれば当選確率がアップするという仕組みだ。

これで観光業も大いに潤うだろうと予想された。

さらに特典の中には公共交通機関をお得に利用出来るチケットが沢山盛り込まれており、クルマ移動を減少させ渋滞の緩和やCO₂排出の削減を目指した。

もちろん飲食店のクーポンもあり、飲食業も活気づく。

アフターコロナの雰囲気もあり日本政府は意気込んでいた。

明日あすへ ログイン!」

このスローガンを掲げ 国民の反対を押し切りる形で、支給が始まった。

稼働直後は評判もよく定期的なイベントの開催で経済は活気づいていった。

旅行客は増え、飲食店は賑わった。
海外から来た旅行者にもログインボーナスは支給され外貨の獲得にも一役買った。

自殺者も僅かだが減少傾向にあった。

しかし、そんな景気の良い話は長くは続かないのが世の中の常。

ある日 突然リークがもたらされた。
ログインボーナスのシステムを作ったエンジニアからのリークである。

そのリークによると
・特別ボーナスの当選者は操作されている
・金持ちに利益が集中するように作られている
・自殺防止なんてもとより考えていない
・この全自動のシステムの管理先が天下りの候補地になっている
・このシステムで個人情報を集めて他国に売っている
等などであった。

真相は不明だったが、国民は怒り狂った。
庶民の利益を考えたふりをして、結局は官僚たちが旨味を全て啜っていたのかとデモが連日繰り返された。

日本政府は「詫び石」として全国民に7日間特別ボーナスを支給すると発表した。

バカな国民たちはまんまと騙され、怒りを沈静化させていった。

その後も 数々のイベントや他国とのコラボを開催した。
しかし、イベントへの参加には課金する必要があり、国民はログインボーナス以上の出費を余儀なくされた。
イベントに参加できない人は底辺とみなされ、社会では肩身の狭い思いをしている。

次第にイベントに参加できない人が増え始め、それに対するいじめや いやがらせが急増し、自殺者は増加傾向にあった。

日本政府はログインボーナスを増やしたり、無料イベントを増設して なんとか自殺を食い止めようとした。

しかし、無限に予算があるわけもなく 遂に財政難からは逃れらなかった。

ログインボーナスの質は徐々に低下していき、他国ともコラボを断られ孤立していった。

もう日本は限界だった。
自殺者は急増し、未曾有の事態となっていった。
そこかしこで暴動が起き、平和な日本は失われつつあった。

総理大臣は説明責任を果たせ、と各方面から叩かれた。

そして遂に記者会見が設けられることになった。

無数のマイクに向って総理大臣は鎮痛な面持ちで言った。


「日本は本日をもって サ終 とします」




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