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ふるさと納税

「ふるさと納税どうしようかな」

私はスマホを見ながらつぶやく。

周囲から 絶対にやった方がいいよ と言われるし、やってなかったら わかってないな〜みたいな視線を送られるし。

私の勝手でしょうに。

まぁ返礼品も色々とあるみたいだしビビッときたものがあれば考えてみようかな。

自分を鼓舞してサイトを回る。
数が多すぎてよくわからない。

キーワードで検索するしかないか。

えーっとどうせするなら面白い方が良いよね。

『おもしろ』検索っと。

ほうほう。
南大阪の返礼品は「リアル節分 家に鬼を派遣します」だって。おもしろ〜い。

長野の返礼品は「マイルドヤンキーと2時間電話で喋れる権利」だって。マイルドヤンキーってなんだろう。ちょっと喋ってみたいかも。

ん?
これは聞いたことがない地名だ。
なんて読むんだろう。
返礼品は「あなたの身近な人を呪います」って怖っ。

税金払ってこんな抽象的なものが返礼品でいいの?
でもめっちゃ イイね ついてる。
もしかして「祝います」の誤字?

いや、レビューを読んだ感じは完全に「呪い」ね。

みんなめっちゃ感謝してる。
ちょっとやってみようかしら。

それにしても「おもしろ」検索でひっかかるのはダメでしょ。
遊び半分で人を呪うなんて趣味が悪い。

私は本気で、ちゃんと心の底から呪いたいから大丈夫。

えーっと。
呪いの程度で金額が変わってくるのね。
松竹梅かー。
こういうのは中間の竹を選ぶ人が多いって聞いたことがあるわ。
ここは奮発して梅にしときましょ。

次はー。
呪う方法かぁ。
ここはオーソドックスに「藁人形」にしときましょ。

次はー。
釘を刺す場所かぁ。
あんまり大事になっても面倒だし、自然な所がいいわよね。
うーん。
「鎖骨」っと。

次はー。
呪い返し保険への加入?
ふむふむ。
「保険に加入していただくと、呪った相手が 呪い返し をした際の依代よりしろを準備いたします」かぁ。
こんにおおっぴらにに「呪います」って書いてあるし、対策している人も多いかもね。
「加入」っと。

次はー。
藁人形の材質ね。
藁だけじゃないんだ。
一番効き目が良さそうなのはー。
「対象者が着ていた衣類を裁断して人型にまとめた人形」っと。
これだけで呪えそう。

次はー。
呪い当日のアリバイ工作の有無かぁ。
これは必要ないなー。
「無し」っと。

次はー。
お、呪いたい相手の氏名と住所かぁ。
えーっとたしか…◯◯県✕✕市の……っと。
名前は……っと。

次はー。
呪う対象との関係かぁ。
「片想いの人」っと。

次はー。
呪う日時かぁ。
先輩と一緒の出勤の日は…◯月✕日っと。
時間かぁ。
二人きりになれるのは…14時ぐらいかなっと。

これで、申請完了っと。

楽しみだなぁ。
ふるさと納税めっちゃ有能じゃん。

これで私の長年の片想いも ついに結ばれるわ。

あ、そうそう「呪い返し やり方」検索っと。
ふむふむ。
なーるほど。
こりゃ簡単でいいわ。




「ぐわぁぁ!!」

「きゃー!先輩っどうしたんてすか!?」

私はニヤつくのを我慢して先輩に駆け寄る。

「うぅ…。突然、鎖骨に激痛が…ぎゃあぁ!まただ!痛ぇ!」

私は鎖骨あたりを優しく押さえながら言う。

「先輩っこれはたぶん呪いです。なにか心当たりはありませんか!?」

先輩はうめきながら首を左右に振る。

「私、こういうの祓う方法知ってます!先輩にならきっと効くと思います!」

「やぁ!」

私はポケットから「厄除け」の御守りを取り出し鎖骨へあて、叫んだ。


「あれ…うそ…。全然痛くない…。君すごいね」

先輩はポカンとした表情で私を見ている。

「よかったです上手くいって。誰にでも効果があるわけじゃないんです…」

私は少し恥ずかしそうに振る舞う。

「え?それってどういうこと?」

先輩は首をかしげて聞く。

「相手への深い愛情がないと効果がないんです…」

私は俯いて両膝の上でギュッと拳を握る。

「え…それって…」

先輩は少し顔を赤らめている。

私は恥じらいながらも意思の強い感じで言う。

「はい…」

「先輩っ大好きです」




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