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呪術捜査
「ダメだ…犯人の手がかりがまったく掴めない」
「このままじゃ迷宮入りだぞ」
捜査第一課は捜査に行き詰まっていた。
凶悪な連続殺人事件が発生して2週間が経過していた。
これ以上マスコミに 捜査が難航している事を隠し続けることは難しい。
しかし、警察の無能ぶりを世間に知らしめるわけにもいかなかった。
「課長、そろそろ奴等の手を借りるしかないかもしれません」
「遺留品がこの髪の毛数本ではとても犯人検挙は…」
ひとりの捜査官がそう告げる。
「これだけ捜査しても何の手がかりもないのは 犯人が我々の捜査方法に関して知り尽くしている という可能性もあるな」
「その裏をかくには…不本意だが仕方がない、あの変態どもに連絡しろ!」」
課長は部下の捜査官にそう命令した。
「で、我々に応援要請…というわけかい?」
捜査第一課からの応援要請に気だるそうに答える男は手に藁人形をもっている。
「はい。我々の手には追えず、あなた達『呪術第一課』に応援を要請いたします」
「これが犯人の遺留品の毛髪です」
「前科者にDNA型の適応者はいませんでした」
捜査第一課の捜査官は早口で捜査状況を伝えた。
一刻も早くこの暗い呪術第一課から離れたかったのだ。
警察署内でも暗く陰気なこの課は毛嫌いされていた。
「わかったよ〜後はやっておくから君は早く帰った帰った。あ、これあげるよプレゼント」
藁人形をぽーんと投げ渡すと、呪術第一課の課長は虫を払うように手をヒラヒラさせて言う。
「さぁて呪術第一課のみなさん お仕事の時間ですよ」
呪術課課長がそう言うと、どこに潜んでいたのか 暗い室内のそこかしこからワラワラと捜査官が出てきた。
「今回は連続殺人犯だ。手加減は無用だよ。徹底的に呪ってやりたまえ」
呪術課課長はそう言うと犯人の毛髪を配っていった。
まずはこっくりさんチームが住所や氏名の特定にとりかかる。
「こっくりさんこっくりさん、この髪の毛の持ち主が何処に住んでいるのか教えてください」
ひらがなで五十音が書かれた紙の上を捜査官が指を乗せた10円玉が移動する。
こっくりさんチームが動いてる横で、丑の刻参りチームが藁人形に遺留品の毛髪をねじ込んていた。
「特定した犯人が逃走しないように両足に五寸釘を打ち付けておけ」
薄暗い部屋の中にカーンカーンという釘を打つ音が響き渡る。
そして呪術課課長は見慣れぬ不気味な人形を取り出して髪の毛を埋め込んだ。
そしてブツブツと呪文を唱え始めた。
「アデーデュイーダンバラー アデーデュイーダンバラー 我に力を与えたまえ」
呪術課課長の呪文で他の呪術の呪力が上がる。
この統率された呪術捜査で解決できなかった事件はなかった。
こっくりさんチームが住所を特定した。
その住所は捜査第一課の課長の自宅であった。
それを突き止めたと同時刻に課長をはじめ、捜査第一課の捜査官全員が両足に大怪我を負い 歩く事も困難になってしまった。
呪術課課長は「こりゃやられたね」とため息をついた。
「遺留品にしては毛髪の量が多いと思った。あれは捜査第一課捜査官全員の毛髪だったんだね…」
「その証拠に…ぐふっぅ…」
呪術課の捜査官が次々と倒れだした。
みな胸を手でおさえて苦しんでいる。
「これは…丑の刻参りか…あの野郎…心臓にッ!」
呪術課課長はその場で倒れた。
その後、警察署内の人間は1人残らず変死した。
呪術第一課へ応援を要請したあの捜査官だけを除いて。
「アデーデュイーダンバラー…力をありがとう」