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人口爆発

世界の人口が240億人を超えた。
凄まじい勢いで増える人類に対して 人類は無力だった。

色々な施策を試みたが なぜか逆に増えてしまった。
一人あたりの居住区はどんどん狭くなり、食糧が行き渡らない地域も増えてきた。
それに伴い合成食や昆虫食など研究は進んでいった。
しかしこのままでは地球は人類で埋め尽くされてしまう。
近い将来 資源を使い尽くし死の星となってしまう。
人類は焦った。

そんな中 世界中の科学者が、なんとか人口を減らす方法はないかと連日リモート会議をしていた。
強い国の科学者は弱者を殲滅しようと提案する。
弱い国は深海や宇宙に居住区を探しにいこうと呼びかけた。
野蛮な国は人間を食べたら一石二鳥だと豪語した。

そして日本の科学者は言った。
「世の中には自分と同じ顔の人間が3人いるという」
「これだけ多く人がいるのだから同じ顔の人間は3人もいらない」
「同じ顔の人間同士を引き合わせ その中からひとりを残そう」

この意見に 全世界の科学者はスタンディングオベーションで賛辞を贈った。
ブラボーという言葉が全世界のインターネットを席巻した。

かくして同じ顔の人間を集める作業が始まった。
人類の98%が携帯端末を所持し顔認証システムを使用しており、そのシステムを流用して 同じ顔の人間を集めることは難しいことではなかった。

こうして集められた同じ顔の3人は 誰が生き残るのか決断を迫られた。
これは全人類が等しく直面する決断であった。

賢い者は言う。
「また人口爆発なんて馬鹿げたことを起こさない為にも賢い人間が生き残るべきだ」

力の強い者は言う。
「生き残った人間達を先導出来るのは腕っぷしの強い人間だ。へなちょこに労働なんてできるのか?」

心の優しい者は言う。
「こんなことはおかしい。誰も死なずに生きる術を考えるべきだ」

子どもが言う。
「公平にじゃんけんで決めよう」

集められた3人はそれぞれの解決方法で残すべきひとりを決めていった。
選ばれなかった2人はその場で有無を言わせず安楽死させられ、合成食として世界へ配給された。
こうして人類は三分の一にまで減少した。
計画は大成功だった。

人類は喜んだ。
賢い者、力の強い者、心の優しい者、じゃんけんが強い者達が生き残った。
これで人類は新たなステージへと進化できるに違いない。
皆そう思った。

しかし、しばらくすると異変に気が付いた。
男しかいないのである。
賢い者、力の強い者、心の優しい者、じゃんけんが強い者達は全員が男だった。
同じ顔の人間が同性とは限らない ということを誰も予想出来なかったのだ。

こうして人口増加は止まり、人類は滅んだ。

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