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15. 省略される仕事/渡り介護士の見る景色
さて、このようなあらゆる事を丸投げされている現場で仕事量が多く時間内に仕事を終わらせる為に介護士が自己判断で省略して時間削減している事とは具体的にどんな事だろうか。
毎日の仕事の中の細かな作業、色々な事を省略しているだろうが、総括して考えた私からの具体例として1番時間削減効率が高いものを1つ挙げたいと思う。それは「利用者の尊厳保持を諦める。」事である。
介護の考え方として「利用者の尊厳の保持」というものがある。介護施設において利用者の精神的にも肉体的にも適切な対応をし尊厳を傷つけない様に、つまりはプライドを持って自分らしく生活してもらおうとする、あまりにも基本的な姿勢である。詳しい事を書いているとあまりにも膨大になるので気になる方は調べて欲しい。
「尊厳保持を諦める。」とは要約すると、利用者に自分らしく生活してもらう事を諦めてもらう。1人ひとりの希望やペースを考えず、コミュニケーションも程々に、こちらの都合のいい時間にこちらのペースでパパッと終わらせてしまう。
ここを省略したならば時間は大きく削減される。まさに流れ作業になるが、この仕事の次はあの仕事があるから振り向く事なく突き進むのだ。
また本来、認知症の利用者への尊厳保持に努める事も介護士の大切な仕事である。
例えば「夕食後に、食べたはずのご飯を〝食べてない!〟と何度も怒り出す認知症利用者への対応。」とか、
例えば「持ち込んでもないのに〝財布の中身が盗られた!〟と空っぽの財布を持って3分おきに真剣な表情で尋ねてくる認知症利用者への説明。」なども、利用者を否定する事なく意思を尊重しながら対応する様に努めなければならない、とされている。
しかしどれだけ時間を割いて話を聞いても解決されず、利用者によっては毎日同じ対応を何十回もやる事になる。
人間への1番強いストレスは生産性のない作業を延々とやらせる事だと聞いた事がある。
であれば、頭で解っていたとしても、忙しい最中に同じ理由で何度も仕事を中断させられる介護士が、穏やかに平常心で対応する事はなかなか難しいのではないだろうか。