9.専門家の丸投げ/渡り介護士の見る景色
介護士以外の医療職の方々、ここからも別々にいろいろな指示が飛んでくる。
「この利用者さん、1日1回10分程度のこの運動をしてもらって下さい。」とか
「この利用者さんの食事の介助を明日から毎食してあげて下さい。」と。
医療の専門家からの指示であるからその利用者にとって必要な事なのであろう。
しかしそんな指示が来るたびにいつも心の中で
「どの隙間にやるの?」と思ってしまう。
1人1回10分の運動でも3人頼まれれば30分である、食事の介助は決められた60分の食事時間の中で20分の仕事が1つ増えた事になる。
そして、この専門家からの指示だけではないが、介護現場では、増えた仕事は無くならない事が多い。
介護というもの自体が、身体能力が下がってきた利用者に対しての補助や対応であるから、能力が戻ってこないと、そこに必要な介護はなくなっては困るものになってしまう場合が多いからだ。
こうしようと一度決まった仕事は、その利用者が何らかの形で施設から居なくならないと無くならない。
何でもタメになる事はやらないよりやった方がいいが、やる仕事が増えれば時間もかかるという当然の話。
人員の変わらない現場に投入する事を、管理者がどの様に捉えているのか、本当に不思議に思えてくる。
現場で適切な業務が出来ていなくても、それぞれの専門家たちが手伝いに入る事は稀である。
自分の仕事が忙しいのかもしれないが介護士がそれを知る術もなく、現場に丸投げしてる様に感じてもおかしくない。
プロであるはずの医療職や専門職の人たちの、現場に対して仕事を丸投げしていくスタイルと、
プロであるはずの介護士が、多すぎる仕事が出来ず、何だかやった様に、ごまかしてしまっている現実。
そこに違和感があり、介護士は管理職や専門職と何か本音で話せない様な、奥歯に何か挟まっている様な会話しかできなかったりする。
場合によっては、対立したりして、本当に必要な連携が取れなくなったりする。
介護士が何か仕事を諦めて、プロ意識とやらを持てないのは、ここが原因なのではないかと思う。
〝意識高い型〟の介護士もここでモチベーションが低下していくのだと思う。