【読後感】ランドルトの環|八幡橙
「ランドルトの環」を読んだ。
本を読んで、その読後感を素敵にまとめられるくらいの語彙力がまだないのが悔やまれるが、とにかく考えさせられた作品だった(それにしても語彙力)。
あらすじ(本当にざっくり)
高校生の青年が、ある女性と出会う。
その人は同級生の母親で、自分の母親(以下実母)とは何もかも対照的な彼女に惹かれていく。しかも彼女は青年の大好きな漫画のアシスタントだったことが判明し、めちゃくちゃ話が合う。
彼女の描く絵がすごく良くて、漫画をもう一度書いてコンテストに応募しようと話を持ちかける青年。そこから青年は水を得た魚のようにいきいきと彼女の執筆を支え、自分のやりたいことや熱中できることに気がつく。
一方で実母は、自分の意思とは裏腹に世間一般の「幸せ」を押しつけてくる。その対比からますます彼女にのめり込み、依存的になってしまう。
そんな中、同級生である彼女の息子に関係がバレてしまう。駆け落ちを決行しようとするが、実母が気づき自殺未遂までして青年を引き留める。
結局駆け落ちはできず、彼女は行方をくらまし、青年は大学進学と漫画関係の職に就くことを決める。
(私の主観的なニュアンス含む)
読後感
主人公の境遇が、詳細は違えど私に似ている気がした。今まで何の波もなく、こんなもんだと思いながら歩いてきた人生。歩かされたと言ってもいいかもしれない。自分が何をやりたいのかわからない。どこに進んだら良いかわからない。親や周囲の人が言うように、安定した職に就けば間違いないし楽なんだろうけど、なんか違う。もやもやする。
そんな日常が、たったひとりとの出会いで大きく変わっていく。感情がむき出しになり、振り回される。
そしてふと、何となく生きていた日常が、誰かの支えがあって成り立っていた奇跡だったと気がつく。
人生ってなるようになるんだな、と思った。
あのとき「彼女」に出会わなかったら。「彼女」が同級生の母親じゃなかったら。あのとき実母にばれずに駆け落ちできていたら…。
挙げ始めるとキリがないけど、こんな偶然の連続で人生が成り立っているんだよなぁと、他人の人生をみて改めて考えさせられた。
そしてそれは小説の中だけじゃなくて、私の人生においてもそう。偶然が積み重なって必然の人生がつくられていく。というか、もうつくられている。それをただ歩かされているだけ。
だから自分ではどうにもできないし、なるようになる、逆に言えば、なるようにしかならない。だからこそ面白い。
作者さんの伝えたかったこととは違うかもしれないけど、私はそんなメッセージをこの小説から読み取った。
今やりたいことが見つからなくて、もやもやして、時に自責の念に押しつぶされそうになっている。これからも、生きていく中で、つらいこと、思うようにいかないことは数え切れないほどあるだろう。
でも、それすら「すでにシナリオが決まっている私の人生」の演出の一部だと思えば、ちょっと面白がれる気がする。
推しも「楽しむって勝ちでしょ」って言ってたし。
私にも「人生を大きく動かすような誰かとの出会い」という演出が用意されているのかなぁ、と、ちょっと未来が楽しみになった。
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