私が医学生時代に陥った相対的境界知能とは
ご訪問ありがとうございます。
今回は境界知能について書いてみたいと思います。最後までお付き合いいただければと思います。
一見普通に見える「境界知能」
境界知能をご存知でしょうか?
だいぶ知られるところとなりましたが、境界知能とはIQ70-84に該当する方たちを指します。
仕事が上手くいかず何度も転職を繰り返している、人より物覚えが悪く作業スピードが遅い、
家事や仕事が時間内に終わらずよく叱られたり、
同僚や家族との人間関係がうまくいかない、
そう言った方に知能検査(WAIS)をしてもらうと実は境界知能だった、というパターンに近頃本当によく出くわします。
それだけ周りからは気づかれにくい、一見普通の人の中にも境界知能の方は紛れているのです。
IQ(知能指数)は正規分布に従うとされています。
知能検査は標準偏差(Standard Deviation以下SD)が15の検査です。IQは100を平均値として、
±1SD、つまりIQ85-115の範囲の知能指数を平均の方たちと定義し、全体の68%の人が該当します。
境界知能は−1SD(IQ85)より下の値、
−2SD〜−1SDの範囲の方たちを言い、
およそ14%、7人に1人が該当すると言われています。
(ちなみに-2SD、IQ69以下は精神遅滞)
私が医学生時代に陥った相対的境界知能(造語)とは
さて、ここで私の医学生時代の話を少しさせてください。
私は(本当に)運良く関東圏の某国立大学に引っかかかりました。模試でも散々な結果でしたから、
元々の自分の能力の割にはレベルの高い大学に入ってしまったな、という自覚がありました。
実際に入学してみると思っていた以上に苦労しました。かなりしっかりと事前に準備して臨んだテストでも下位の方(手応えがあったテストでも)。。
医学部の1学年の人数はだいたい100人、私の場合常に90番前後を彷徨っていたように思います。
これは今振り返ると、医学生というレベルが高い母集団の中で、相対的に境界知能のポジションに居たと言えます。
正規分布曲線で言うと、山が右側(高IQ)に平行移動したようなイメージです(医学生100人のIQが正確に正規分布に従うわけではありませんが)。
もちろん日常生活などで苦労されている実際の境界知能の方からすると、
「腐っても医学生なんだし苦労はないでしょ」と思われるかもしれません。
ただその当時の私を振り返ってみると、まだ世間を知らない20歳前後、閉鎖された環境での6年間は、やはり相当苦しい思いをしていたように思います。
どれだけがんばっても周りに追いつけない、そのうち自分に自信が持てなくなる、
徐々に学校にも行かなくなり、そうするとますます勉強について行けなくなる。
時には周りからバカにされているのでは?と被害的に考えてしまうこともありました。心身共に体調を崩していた時期もありました。
自分に合った環境を選ぶということ
医学生時代に陥った相対的境界知能(私個人の造語)の状態は医者になってからも続きました。
論文は書くのも読むのも一苦労、学会発表をするのも聞くのも大変でした。
相対的境界知能に加えて、発達特性があるのも苦労の一因でした。
人より疲れやすく要領も良くない、上司には好かれないし、ギャンブルにもハマる‥
そんな不適応の状態が続いたため、ある時思いたち環境を変えてみることにしました。
それまで関東圏の病院に勤務していたのを、遠方の他県に引っ越すことにしたのです。これが功を奏しました。
徐々に自分に自信が持てるようにもなり、そのことで全てのことが上手く回るようになっていったのです。
知的障がいよりも境界知能のほうが生きづらい!?
「そうは言っても結局、はぐりんは医者だから仕事にも困らないし上手くいっているんでしょう」と思われる方もいるかもしれません。
たしかにそういう側面もあるかもしれませんが、
決してそれだけではなく、現に医者でも不幸な人はいるし、医師の自殺率は一般の方よりも高いと言われています。
またこれは普段外来をしていて思うのですが、
本来境界知能の方よりもIQが低いとされている軽度知的障がいの方のほうが、笑顔が多く、不調を訴える方も少ないのです。
笑顔で作業所での様子を報告してくれたり、
また自分の現在地を把握し、具体的に次の目標を掲げられる方も多いです。
軽度の知的障がいの方たちは、既に障がい福祉サービスなどの社会資源を利用されており、
同じように障がいを持つ方たちの中で社会生活を送ることで、自身の社会的な役割を実感しながら生活できていると言えます。
お子さんの場合は特別支援学級や特別支援学校が同じような役割を果たしていると言えます。
自分のレベルや特性に合った社会に所属して、自身の役割を認識しながら、最低限自分自身に自信を持ちながら生活していく、ということが心身の健康を保つためにとても重要かつ必要なことと言えます。
最後までお読みいただきありがとうございました。