OD患者を立て続けに診て思ったこと
昨今のODはうつだけが原因じゃない
今も昔も自殺企図行為によく用いられる手段に、
過量服薬(Over Dose、以下OD)があります。
最近立て続けにODの患者さんを診察する機会がありました。
たまたま重なったのか、季節の変わり目/気候の影響からなのか、新学期シーズンだからなのか、原因はよくわからないのですが、兎に角多いです。
男性も少なくはないですが、やはり女性に多いと言えます(今回は主に女性のODに関して)。
診断名だけ見るとうつ病や適応障害、アルコールが原因でODする方が多いですが、
中身を見てみると、その多くが人間関係、特に家族間の悩みからODしています。
嫁姑問題が発展し、同居や介護に疲弊しているにも関わらず周囲(特に夫)から労いの言葉もかけてもらえないとOD、
母親が、仕事や下の子のことで手一杯で、未成年の娘(長女)が母親に分かってもらえないとOD、
逆に母親の方がODしてしまうケース‥etc
自殺といえば兎角うつ病やうつ状態と言われますが、背景には母子間の愛着の問題、
発達障害やパーソナリティ症、貧困問題などの社会背景など様々な要因が複雑に絡み合っています。
ODは危険〜まず総合病院に入院になる〜
通常ODしたその日は、飲んだ薬の種類や量にもよりますが入院になることが多いです。
しかも総合病院に入院することが多く、なぜなら場合によっては胃洗浄や緊急透析といったことも必要になるからです。
総合病院に数日入院した後、紹介状を持って精神科を受診するという形になります。
まずODの患者さんを診る際には、精神科においても入院させるのか、家に帰して大丈夫なのかという選択に迫られます。
入院になるかどうかは様々な要素から総合的に判断するのですが、最終的には精神科医のこれまでの経験による直感で判断することも少なくありません。
数多くのOD患者と接して感じること
そんな彼女たちと接していると、
なぜたくさん薬を飲んでしまったのか?
その日に限って何があったのか?
ODした理由とそこに至るまでの経緯を事細かく聞くことに「あまり意味がない」と思うようになりました。
本人にとっては分かりきっている、自明の理、皆まで言うな(それくらい察してくれ)とも言えるし、
その逆でODしてしまうことに理由はないとも言え、答えに窮してしまう方もいます。
OD直後の患者さんを診察する際、OD自体に焦点を当てて話しても手応えがありません。場合によっては責められている、と捉える方もいるでしょう。
代わりに「ODするほどつらい」「死にたいほどつらい」「それを分かってほしい」そういった部分を引き出し、ただ聞き役に徹する方が重要です。
入院になったOD患者さんを見ていると、翌日か翌々日にはパッと表情が良くなる方も多く、笑顔を見せる方もいます。
本人自身もなぜODしてしまったのか、衝動的に、
その時の感情で、中には生理前でイライラしていてどうしようなく、といった方もいます。
そういった意味では、極論ODすることに理由はないとも言えるかもしれません。
ODをしてしまった理由や経緯は後々ゆっくり聞けばいい話だし、行為自体に焦点を当てて認知行動療法的にアプローチしていくのも、やはりもう少し後の話でしょう。
もし皆さまの身近にODをしてしまった方がいたら、「どうしてこんな事したの?」とは聞かず、
「ツラかったんだね」「何がツラかったの」と声をかけてあげてください。
あとはお相手から出てくる言葉をただただ聞いてあげる、たったそれだけでかなり前に進んでいると言えます。
最後までお読みいただきありがとうございました。