発達特性を持つ方が30年以上続けている仕事
こんにちは、精神科医のはぐりんです。精神科医のリアルな日常とホンネをお届けしています。
今回は、発達特性を持つある患者さんが30年以上続けている仕事、と題してお伝えしていきたいと思います。
50代の女性Aさん、旦那さんに連れられ初めて精神科を受診されました。
受診の直接のキッカケは夫婦関係の悪化と、
「離婚するために行った」とある軽犯罪行為(詳細は伏せます)でした。夫への当てつけにしては奇妙で突飛な行動と言えます。
Aさんは極端に片付けが苦手で、家は足の踏み場もないほどのごみ屋敷状態、車の中も後部座席やトランクが荷物で埋まっているような状態でした。
また実際に話してみると表情や情感に乏しく、何らかの発達特性(グレーゾーン)はありそうな方でした。
同伴している旦那さんはモラハラ気質、
「何度言っても片づけられない」と普段から、そして診察中も本人を責め続けていました。長年にわたる不満を滔々と述べられ、
構図だけみると妻の共感性のなさや言動に辟易としている夫のカサンドラ症候群とも言えそうですが、どうやら夫からのDVもありそうで、夫婦のことは夫婦にしかわからないといった様相でした。
そんなAさんが、現在まで30年以上続けている仕事が保育士でした。
保育士さんと言えば、子を持つ親なら誰しもが同じだとは思うのですが、頭が上がらない存在です。
一人で多くの子供を担当し、時に親以上に子供の細かな変化にも気づき、通常保育以外にもイベントの準備や進行、遅番早番といったシフト制の仕事でもあります。
一人の子供を文字通り背負いながら、他の子も相手にして、子供の予測不能な言動にも振り回されず、保護者へも笑顔で対応する、そんな光景が目に浮かびます。
そんな超多忙でフレキシブルな対応も求められ、
離職率も決して低くない保育士を、Aさんは不適応に陥ることなく、定年近くまで続けていました。
Aさんがここまで長く保育士続けられている要因として、子供と関わることが好きというのはもちろん、
おそらくは発達特性もあり、大人と関わるよりも、主に子供と関わる仕事の方が本人の性に合っているのかもしれません。
※発達特性があるから子供を相手にする仕事が向いているとか、その逆を言っているわけでもありません。むしろ子供のノンバーバルなコミュニケーション、細かな気づきや予定外の仕事への対応などマルチタスク等、様々な適性が求められると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。