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ギャンブル依存からの回復のヒント「執着の転換」
今回はギャンブル依存症からの回復のヒントというテーマで、実際にギャンブル依存から抜け出せた人を紹介しながら考えてみたいと思います。
10年来のギャンブル依存から回復した方
「なぜかわからないんだけど、10年来ギャンブルに見向きもしなくなった」と仰っる方がいる。
更生のため過去にDARC(※)にも入所していた、れっきとしたギャンブル依存症の方「だった」。
※DARC:drug addiction rehabilitation center 日本全国に展開する依存症からの回復支援施設。アルコールやギャンブルも扱う。
依存症の方によく見られる取り繕いや否認(私は依存症なんかじゃない)、正当化もなく、客観的に見てもスリップすることなく経過している方だ。
依存症の方に対しては懐疑的に(本当にスリップしていないの?という姿勢で)応じることもあるが、
そういった目で見ても言葉に嘘がないと感じさせる方だ。一言でいうと、正義感が強く、粘り強い印象の方だ。
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執着やこだわりを見せるてんかん気質とは
実はこの方は「てんかん」の持ち主だ。
てんかんの方たちには、ある共通した特徴があると思っている。
クレッチマーという昔の精神科医が、統合失調症と躁うつ病、てんかんの方には、それぞれ体格と性格について共通の傾向があると提唱した。
クレッチマーの理論には批判的な意見もかなりある。たとえば躁うつ病の方は、太り体型で循環気質(社交的で情味が豊か)としているが、
「言われてみれば確かにそうかもしれない」くらいで、科学的な根拠はない。
てんかんの方に関しては、クレッチマーは「粘着気質」としており、物ごとにこだわりやすく執着する傾向があると提唱している。
個人的な意見だが、これに関してはかなり当てはまっている感覚がある。てんかんの方で、コロナワクチンを打つか打たないかを外来に来るたび私に相談され、1年間逡巡していた方もいる。
冒頭のギャンブル依存症「だった」方の話に戻すが、やはりてんかんの方らしく粘着気質を感じさせる方だ。
外来では職場での規律の話、それを周りが守っていない、どうして私だけ不遇を受けるのか、といった話を唐突に切り出し、それを毎回繰り返す。
そうやって愚痴を吐きながらも、実際には職場で粘り強く働き、同僚の評価も上々だ。
その彼が「なぜかわからないが、ギャンブルに見向きもしなくなった」と言うのだ。
これにはギャンブル以上にエネルギーを注ぐべき、他に執着すべき対象がある、というのが一番の要因に思う。仕事を含めた日々のルーティンや規律、また彼の場合飲食にもかなりこだわっている。
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発達障害は熱しやすく冷めやすい!?
やや話が飛躍するが、こだわりと言えば発達障害だ。発達障害の方は一般的にはギャンブルやアルコールなどの嗜癖(しへき)に対してハマりやすいと言われている。
ここからは私見だが、その反面そういった嗜癖から「抜け出しやすい」とも言えるのではないか。それは興味(やこだわり)の対象が他に移った時である。
てんかん気質や発達障害の方に限らず、何か没頭できる、心血注げる「他の何か」を見つけるというのは、ギャンブルやアルコールといった嗜癖から抜け出す手段の一つになり得ると思う。
「何もすることがないから酒やギャンブルを続けている」というのはよく聞く話だ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
追伸:ギャンブル依存やゲーム依存に関しては「精神依存」が主ですが、いわゆる体が欲する「身体依存」でもあるタバコやアルコール、薬物に関しては今回の話の限りではないでしょう。