【医師エッセイ】【戦後79年】サバイバーギルド
私は小児科医です。日本は自由で、世界一治安もいい国と言われます。日本の治安の良さを求めて、海外から日本を訪れる医師とともに働くことや、海外の子どもを診療することがあります。2024年現在も、紛争が続く国や地域があることや兵士として戦闘すること、人の死を身近で見聞きする可能性がある世界ですが、日本人は報道でしか知らないので、実感することは難しいとつくづく思います。
例えば友人医師が過去に1年兵役を経験していました。その彼は診療した子どもの親である友人が亡くなり、家族の身の危険を感じ、知り合いのツテを辿って日本に来ました。
けれど、自分だけ安全な地にいる。思い出も友人も何もかも大切なものばかり失った。得たものは自分だけ。
命は何よりも大事です。しかし本当によかったのかと、毎日のように悩み、答えを出してはそうではなかったのだとまた思い悩むのだと言っていました。
やはり戦争ほど悲惨なものはありません。サバイバーギルトと呼ばれる概念。どれだけ人の心と身体に大きな影響を与えるのでしょうか。考えても考えても、その大きさは計り知れないという事だけしかわかりません。