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【医療コラム】怒られると辞めちゃう若い医師    小児科医が語る

■今と昔の風潮の違い


今の時代の風潮は、若者に何も言えない、言ってはいけないようなところがあります。どの業界でも同じだと思うのですが、ちょっとした言葉でもハラスメント扱いになってしまうというのも問題の一つです。ただ昔は良かったではないですが、今とは時代が違うからこそ、対処の仕方がわからなくなっているという部分は否めません。

まだ私が小児科医局に所属していればフォローもできるのですが、ローテーションで来ているような内科研修医には腫れ物に触るような態度……まではいかなくても、完全にお客様状態となってしまいがちです。と言うのも、病院上層部からそう言われているのもあるのですが、かつてちょっとした指導で来なくなってしまった研修医がいたため、きつい言葉……いえ指導をなるべくしないようになってしまったのです。

■病院に来なくなってしまった研修医の話


では来なくなった研修医に、何があったのかというと……それは医局のちょっとした集まりの飲みの席でした。「今日は無礼講だからね」という設定でも、どこまでが許されるのか、やはり分からないものですから、普通は借りてきた猫のようにおとなしーく皮をかぶっているものです。しかし、その研修医は無礼講の意味を取り違えて、学生のノリではしゃぎすぎてしまい、店の方からやんわりと注意されてしまいました。

それに対して先生も研修医に対して「そうだね。ちょっと無礼講とはいえはしゃぎすぎたね」と諭しました。大人として普通の態度だと思います。けれど、研修医は「無礼講って言った本人に注意された、ありえない!」と病院中に言って周ったのです。そればかりか、店についてSNSで書き込んでしまい、それはそれは大事件になりました。

しかし本人はどこ吹く風。周りに話をしたらスッキリしたのか、何事もなかったかのように仕事をしていました。ですが、1ヶ月ほどして病院上層部が指導に入ったことをきっかけに、研修には来なくなってしまいました。

■今と昔は一長一短


怒られた経験が少ないから、怒ってはダメなんだよと上司からは言われていたのですが、それから医局で研修医との関わり方を議論しましたが結論は出ませんでした。ただ、指導医として研修医に指導すべきことはしなくてはならない。しかしプライベートやプライバシーも重視するあまり、話し合い分かり合える機会も少なくなっていて一歩引いた状態で接してしまう。何がいけなかったのか、どうすべきかを話し合う時間もないというのが現状です。

結局のところ、「ダメだダメだ。何であんなことしたんだ!」と言われたことが、彼からしてみれば理不尽に怒られたという思いしかなかったかもしれません。

私の頃はなんだかんだで定時に帰るなどありえない、気づくと彼女なんかよりも先輩と食事して、飲みに行って、医局のソファで雑魚寝して、そうやっていろいろな人と交わり学んだものです。昔なら私のような問題児研修医を育てる時間もありましたし、諭すばかりでなく怒鳴りつけるといった技も使えました。けれど今はそんな環境も時間もありません。

研修医の働き方改革によって、研修医は得た物が羨ましいぐらい非常に大きいのですが、失ったものも非常に大きいのだろうと、昔を知る私はどうしても思ってしまうのです。

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