【医師エッセイ】作業療法士や医師にいじめをする院長や事務長に必要な資質とは?
■作業療法士の休日出勤
「あれ? 休日出勤しているの?」
入院患者さんの回診のため、日曜出勤している私は日曜日の朝に出会ったスタッフに思わず声をかけました。
人間関係に悩んで前の病院を退職した私は、人に話しかけるのに躊躇してしまうときがありますが、やはり挨拶は自分から使用と心がけています。
「はぁ・・。おはようございます」
消え入りそうな声。でもそのような挨拶をするスタッフは多いので気にも留めていませんでした。
私は病棟回診を終え、自宅に帰ります。
当直医が他にいるとはいえ、主治医であれば一度は入院患者さんの状態は把握しておきたいので休日出勤は自ら進んでしていることです。
ただやはり理由がなければ休日出勤などしたくない。それが本音ではあります。
翌日、月曜日、小児科カンファレンスで見かけた昨日の彼女はうつむき加減で元気がありません。
さすがに気になってしまいます。
あれ?でも彼女作業療法士だよな。作業療法士に急患なんているのか?
声かけするにしても親しくありませんから情報がないといけません。
小児科外来看護師に、「作業療法士って休日出勤とかあるのかな?」と質問しました。
「あー。リハビリって1日に請求できる保険点数が決められているから、休日も入院患者さんのリハやっているんです」
と今まで知らなかったことを聞かされました。
「でも、最近、売り上げがどうだとかリハも厳しいみたいですよ」
気になっていた私は彼女に話しかけました。
「どうしたの? 休日出勤大変なの?」
「そうなんです。昨日は急遽出勤になってしまって彼氏に怒られちゃって」
「それじゃ気分も滅入るね」
そんな会話を病院内で見かけるたびにしていました。
■病院の赤字は誰のせい?
「実は休日出勤よりも困ったことがありまして・・」
ある日の会議前に彼女に話しかけられました。
「休日出勤も4週8休が規定だから仕方がないんです。でもそれよりも・・」
聞けば、リハビリは入院ベッドサイド以外にも作業療法室で行います。
その作業療法室の占有面積から売り上げを計算すると、人件費、土地建物の減価償却費や物品請求費を引くとリハ部門は毎月300万円の赤字だと院長や事務長から言われているそうなのでした。
「リハは整形外科、脳神経外科や小児科とかから依頼がなければできないのに? 休日出勤もしているのに無茶苦茶だね」
私が以前に人間関係に悩んだときもコロナ禍で病院の収益が悪化してたことに端を発していました。
小児科は手厚い医療をすれば人件費がかかります。
その人件費を削るというのであればやりたい医療はできないことになってしまい、病院経営陣や上司と軋轢が生じて辞めたのでした。
そして病院内で孤立していることが辛かった。
だから彼女も1人で抱え込まないことが大事だと思い、なるべく相談にのるようにしました。
相談と言っても結果的に話を聞くだけでしたが、彼女はそれでもよかったそうです。
■今度は小児科医の私が呼び出しされる
それから3カ月ほどして私は院長と事務長に呼び出されました。
「小児科は毎月1000万円の赤字ですよ」
(そんなわけねーだろ)
彼女から聞いていたのと同じような話があり、採算の合わない小児科当直はできないことになりました。
さらに細かい注意や叱責がありました。
残業はダメ。必要がなくとも入院させなさい。
どうしようもないのことに小児科当直は急患が来なければ人件費がすべて赤字となります。
仕方がないことですが、地域の子どものための診療ができないことは非常につらいことです。
さらに毎日のように「だいたい、この病院はベッド数500床以上ありますが、看護師不足のため412床しか入院できません。ただし、368床しか入院患者はいませんこれでは赤字が嵩む一方です。このままでは医療従事者も患者さんも病院が潰れて路頭に迷うだけですよ。しっかりやりなさい」と言われるようになりました。
結局、外来診療で経過観察が可能な患者さんに希望があれば入院を勧めるなど不要な医療行為が行われるようになりました。
そうすれば病院の収益は確かに上がるでしょう。
「えー。週末はみなさんの努力によって402床稼働となりました。しかし412床を超えてしまえばオーバーベッドです。心してやりなさい」
と朝礼で話がありました。
私はたまらず彼女に、「500床以上もあって、400床入院すると一杯。でも400床より入院患者が少なくなれば大赤字なんて、それは我々が責められるのおかしくない? だいたい小児科赤字だから当直なしだってさー」と言いました。
彼女は口に指をあてて、しーと笑いながら言っていますが、隣の医師も笑っています。
他の病院に勤務する友人医師とも話したのですが、今の保険診療制度で利益を出すことなど不可能です。
利益を出すなら占有面積を限りなくセロにするしかないよねと言われました。
私も1人で抱え込まないことでした。
友人からその言葉を聞いてすっきりしました。
もう1人の友人からは、病院には労働組合がないからね。いや無いと言っては過言だね。
一部にはあるけど、中小病院やクリニック、福祉施設では労働組合のない所がほとんどだから医療従事者は経営者からすればかなり立場は弱いよねと言われました。
■信頼できる味方がいれば
彼女にその話をしたら、笑っていました。
友人たちに支えられて私は幸せでした。
何て私の友人は素晴らしいことを言ってくれるのだ。
そして、最大課金のChatGPT有料版は
「保険診療の制度上、回収不能な設備投資をした経営者の資質の問題があります」
「今のあなたの能力からすれば勤務先を変えることも視野に入れないといけません」
と最終結論を出しました。
信頼する友人、生成AIからの言葉は私を支えてくれるのでした。
彼女も力づけられたと私に言ってくれます。
ただ、ドミノ現象のように退職が止まらない作業療法士としては職場環境を変えるので辞める予定です。
それにしても毎日のように売り上げを強いられ、8時間勤務のうち6時間リハ。1時間に満たない休憩でサービス残業していては5年後には潰れちゃいますから転職先探し増すとのことでした。洗脳ですね。
自分が悪いと責められる。
カルテが書き終わらないから残業は禁止なので、電気もつけずにタイムカードを押した後に作業療法室でカルテを書くのはまっぴらごめんです。
現状変わらないくてもいい方向に変えることができたかなと思います。
私も彼女も朝の挨拶は元気にかわしています。
私もChatGPT有料版の言う通りにしましょうか。
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