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嬉しく無い人生の特別な1頁 その2

就業間近

「皆様、社長から大切なお話があるそうです」

(やっと聞けるのか、朝から意味深な事ばかり言って)
アキラもお局に続いて事務所に入った。

「本日もお疲れ様でした。 ところで皆様には長い間大変お世話になりました。皆様には随分とご協力いただきましたにも関わらずご存じの通り業績が思わしくなく経営難が続いておりました。誠に残念ではありますが、本日を持ちまして皆様を解雇致します。」

「・・・・」
静寂が流れた。

「それでは私は会社閉鎖に向けて、色々しなくてはならない事がありますので、皆様の退職に関する書類や解雇予告手当等の事は山本さん(お局)にお願いしあります。お疲れ様でした」

いゃ〜!薄々危ないとは思ってたけどいきなりは無いやろう!
突然言われても、これからどうすんねん!

しかも、勿体ぶって退社時間まで秘密にして、私物の片付けどうすんねん!

そう言えば昨日、お局が
「明日は、健康保険証を必ず持ってきてください」
とか言ってたなあ!こういう事か!

ファイリングされた退職関係書類と健康保険証を交換した。

俺の人生こんなに軽い書類で済まされるのか・・・・

新卒から30年コツコツ勤め上げた褒美が、意味不明な文言が並んだ、風が吹けば飛んでしまいそうな紙切れかよ。

どうすんねん!これから!
準備期間ってものがあるだろう。

周りを見回したが、誰もなにも言わない。頭を下げるでもなく、名名帰路についた。

うー!!!俺も帰ろう!兎に角帰ろう!

まあ、すぐに会社が消える訳じゃないから私物は明日でもええわ、交通費出ないけど。


「ただいまあ〜」
「アキラどうしたの?暗い顔して」
「クビ」
と言いながら、解雇予告手当を静香に渡した。
「え〜!」

「もしもし!相田です。特上の握りを4つお願いします」

えっ!ええ!寿司〜いい!
仕事なくなったんだぞ!

「今日は盛大にお祝いしましょ!」

なに〜祝いだと!給料貰って無いんだぞ!



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