『血と骨』 著者:梁石日(ヤン・ソギル)
『血と骨』 著者:梁石日(ヤン・ソギル)
『血と骨』は在日朝鮮人作家梁石日(ヤン・ソギル)さんの小説。
崔洋一さんが監督を務め、主演ビートたけしで映画化もされています。
映画では主に小説の下巻(後編)部分を中心に実写化していますがなにせ膨大なページ数を誇る原作の3分の1程度しか実写化できておりません。
主演のビートたけし(北野武)は身長170㎝台ですが原作の主人公は180㎝越え、体重100㎏以上の巨漢。先に映画を見ていたので違和感は無かったですが原作から入っていたら違和感が出るかも…。ただ、狂気性や暴力性はもの凄く演じ切っており原作のヤバいやつ感は画面から嫌でも伝わってきます。
娘の花子役の田畑智子さんが幸が薄い可愛さ(豚解体祭りの『マッコリあるよ~』の所)とか新井浩文さんや北村一輝さんもはまり役ですね~。
私は映画から入ったのでそこまで違和感は無かったのですが小説から入った方はボリューム不足を感じる方も多い模様です。
そんな『血と骨』ですが私はU-NEXTで購読。
上下巻併せて1,000ページ以上あったのですが一晩で読み切りました。
ガチで夜の10時ぐらいから読み始めて読み終わったら朝の5時ぐらいに読み終わり翌1日を完全に終わらせました…。
主人公の『金俊平』は済州島出身の在日朝鮮人、猜疑心が強く自己中心的な性格で暴力に物を言わせて従わせようとする粗暴な人物。180㎝100㎏以上の体躯で兎に角無茶苦茶な人物です。元となったのは作者梁石日さんの父親でほとんど作中の金俊平と同じような人物だったとの事でやべぇ親父だなと思わざるおえません。
暴力的な人物ではありますが戦中戦後当時の在日朝鮮人コミュニティの中でだけ暴力的な人物なだけで日本人(身内やヤクザ者は別)やその他外国籍の人物に対して凶暴性を出す人物ではありません、あくまでも自分の理解が及ぶ中の範囲で暴力をふるい続けるので警察や市中の一般人にまで暴力をふるうような描写少なく同族、自身の民族間に添った人物に対して暴力をふるう。
性描写は官能的というよりは野性的で暴力描写に関してはほぼ漫画の様な強靭性を見せる主人公が年を取り因果応報的に老いて朽ちていくのはある種の趣味の悪いカタルシスを感じるほどです。
強姦して無理やり結婚させられる妻の『李英姫』も映画のような幸薄でか弱い女性ではなく強かで生きるためであれば違法な行為にも手を染める人物である点は良かったです。子供の幸せと平穏を求めながら自身の女という部分を捨てきれず金俊平と子供を作り続ける、朝鮮の男女感やカースト制度的な部分から不幸な境遇も運命と捉えつつも子供の為に只々頑張る。
カネ・暴力・セックスをトコトンまでに書き尽くしているにも関わらず主題は『家族』。血と骨という言葉にはコリアンに特別な意味があり『母親からは血を受け継ぎ、父親からは血より濃い骨を受け継ぐ』、息子である『金成漢』との軋轢もストーリーの中で重要な部分です。ちなみに金俊平の感覚では骨を分け与えた子供は自分の所有物なので暴力をふるいますが死んだりすると暴れまわります、
ちなみに父系血統重視なので女児が生まれた瞬間、子供に興味を無くすのは徹底しているなと思いました。今の時代なら相当ヤバいです。
これだけ陰鬱で暴力的・救いようの無いストーリーですが死の描写はとても呆気ないものです。暴力描写や性描写はこれでもかというぐらい細かく書かれているのに人の死というモノに対してはあまりにもシンプルに描かれます。花ちゃん自殺未遂しすぎ~。
朝鮮の父系血統重視の陰鬱で暴力的なストーリーはある意味でエネルギッシュ、読後はどっと疲れてしまいますが私は映画より小説派です。どっちも素晴らしいですが…。
血と骨は漫画バージョンもあるようなのでいつか読んでみたいです。あと血と骨で調べたときサジェストで『本当にやってる』とでるのですが本当にやってる訳ねぇだろ。
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