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私が恋愛系エンタメが苦手な理由と、それでも見てしまう理由

私は恋愛モノのエンターテイメントが苦手だ。
恋愛ドラマ、映画、漫画、小説……。

色々とあるのだが、「男女の色恋の絆」に焦点を絞ったストーリーは、どうやって気持ちを盛り上げながら見て良いのかが正直に言ってわからない。

代わりに、ミステリーやサスペンス、刑事モノやアクション、ハードボイルドなどはとても好きで、これらのエンタメの数は豊富過ぎて、興味あるものの全てを見る事ができないのが残念なくらいだ。


恋愛的要素が全て嫌なわけではない。
ミステリードラマの中でも、事件を一緒に追っている仲間たちの間で、色恋ストーリーに発展するキャラクター達が居たりする。
そういう、シリアスな展開や派手なアクションの幕間にひと時の安らぎとして描かれる恋愛ストーリーは、むしろ大好きで、その部分のみを大いに二次妄想したりもする。

要は割合とバランスの問題である。

苦手な理由①:割合の問題

私は、物語の中で繰り広げられる恋愛的要素は、中華定食に付く杏仁豆腐くらいの割合がちょうどいいと思っている。

ピリ辛のエビチリとチャーハン定食を食べ終わった後の、スッキリと甘い杏仁豆腐。
麻辣が効いた麻婆豆腐丼を、卵スープと一緒に食べ、最後に待っている、甘くとろける杏仁豆腐。
熱々の担々麺を汗をかきながら食べ終え、喉を甘く癒す杏仁豆腐。

最高においしい杏仁豆腐の食べ方である。

逆に、杏仁豆腐丼とかがあったら、無理だと思う。
杏仁豆腐がメインでドーンと丼ぶりで出て来たら、甘ったるすぎて完食できる気がしない。

それが、私にとっての「恋愛系エンタメ」なのだ。

いや、わかりますよ。
恋愛系ストーリーの中にも色々と、盛り上がりのポイントがあり、起伏に富み、甘いだけじゃない、酸っぱかったり、辛かったりする要素がふんだんに散りばめられているということを……。

でも、ずっと話の焦点が、一人の女性と一人の男性がどのように結ばれるのか(もしくは結ばれないのか)だけに焦点が当てられている。
主人公の男女以外は、モブ的な存在となりがちな恋愛モノは、飽き性の自分にとっては、途中で集中力が続かずに見るのを止めてしまう事が多い。
ちなみに、恋愛モノでも、多様なカップルがそれぞれの愛の形を模索していくようなストーリーの場合、私の中で「恋愛モノ」ではなく「群像劇」にジャンル分けされるし、1組のカップルに焦点が限定されないので、飽きずに見ることができる。
(自分から進んでみることは少ないけれど。)

苦手な理由②:同調圧力

恋愛モノの他にも、私はホラーモノが苦手であるが、ホラー好き・スプラッター好き界隈の方は、大変マナーが良い。
なので、わざわざ「私、ホラー系が苦手なんです。」と、アピールをしなくても、強制的にホラーを見させられるという被害にあう事は少ない。
なぜなら、ホラー&スプラッター好きの方々は、自分達の好みが決して万人受けするものではないと、ちゃんと理解していらっしゃるのだ。
だから、「この映画、めっちゃ良いよ! 全米で大絶賛らしいよ!」と言って、純真無垢な友人を騙したり、
「初めてのデートでは、この映画を一緒に見るって、私、決めているんだ!」と、キラキラ乙女ムーブを発動して、遠慮がちな恋人を巻き添えにしてまで、自分好みの血まみれホラーの銀幕へ他人を無理矢理引きずり込んだりはしない。
怖がりな人に、無理矢理ホラー映画を見せることは、ある種のハラスメントにあたるからだ。

しかし、恋愛モノが大好きな人達の中には、このようなモラルやマナーが欠落してしまっている人が居る。
彼ら・彼女らは、世界人類皆が恋愛に興味を持ち、恋愛の成就と家族の形成こそが、ハッピーエンドの最大級の形だと信じて疑わない。

だから、私みたいに「恋愛モノのエンターテイメントは苦手で……。」と言う人間が許せないのか、しきりに
「恋愛モノ、いいのに! なんで?」
「まだ、いい映画に出会っていないだけじゃない?」
「恋愛モノが苦手だなんて、変わってるよね……。」
と、恋愛系エンタメを好きになれない私に、まるで非があるような問いかけを浴びせて来るのだ。

恋愛系エンターテイメントが苦手な理由の一つは、恋愛モノ好き女子達のそのような無遠慮な同調圧力に、とてつもない恐怖を私は感じるからだ。

うん。今、書いていて気が付いたけれど、私の場合、恋愛系エンタメの内容が苦手と言うよりも、ファンたちの同調圧力が怖いから苦手という側面がかなり強い気がする。

あと、恋愛エンタメの中では、「男女の色恋の絆」「家族の絆」こそが真の絆のように描かれており、他全ての絆の価値があまり重要視されていないように感じるのも残念だ。
「友の絆」や、プロジェクトを通じての「職場の絆」「仲間の絆」などは、二の次のような扱いだ。
バディ系の刑事モノや、巨悪を暴く法定ミステリーなどは、仲間や職場、地域住民の絆など、様々な人間模様を一つのストーリーの中に見る事ができる。
それらの絆だって、大切じゃん。
私は、エンタメでも日常生活でも、恋愛感情よりも友情を推したい派の人間なので、余計にそう思うのかもしれない。

苦手な理由③:恋ゆえの強引な行動(トラウマになった恋愛映画)

私が「やっぱり、恋愛モノは苦手だなあ。」と、はっきりと自覚し、以後は意図的に避けるようになるきっかけを作ったトラウマ級の恋愛映画を紹介します。

『The notebook きみに読む物語』である。

この映画で、若い二人が出会うシーンが本当に嫌で嫌で……。
たしか、主人公の女性に一目ぼれした男性が、女性の注意を引くために、観覧車の梁にぶら下がって、「デートしてくれなきゃ、落ちて死んでやる。」みたいな脅し文句を言って、女性がそれに応じるような流れだったように思う。

これ、脅迫でしょ?
なのに、ロマンチックなシーンとして恋愛エンタメ好きな友人達は「いいよね~♡」という反応である。
私は絶対に嫌だし、これを「良いもの」「ロマンチックなもの」として許してしまう空気感も嫌なのだ。

この映画以外にも、恋愛系エンタメの中では「好きだから」「愛ゆえに」「嫉妬心で」「夫婦だから」「独占欲」「それが恋だし」という言い訳を連ね、「だから、しょうがない」とばかりに、通常であればNGな行動も全て「ロマンチックな行為」としてキラキラシーンに変換させてしまう暴力が、まかり通ってしまうのである。
なんと言うか……、ぞっとする。

グロテスクなシーンが苦手な人が、友人の誘いに乗ってスプラッター系の映画を見て、「こわい!」「やっぱり、血まみれのシーンは嫌だ」と感じているところに、友人がウキウキとした様子で「あの血しぶきは最高!」と話している様子を想像してみて欲しい。
恋愛映画における、強引な告白シーンは、私にとってグロテスクな血しぶきシーンに近い恐怖感がある。
その恐怖シーンに対して「ときめく~♡」となっている友人達の感覚を、申し訳ないが、理解できないのだ。

苦手な理由④:私自身の好みの問題

あと、私自身は、ディープなキスや濃厚なセックスに対して、ネガティブな印象を持ってしまっているから恋愛モノが苦手という側面も大きいと思う。
挨拶程度のハグやキスは何とも思わないけれど、「ロマンチックなシーン」として描かれがちなベッドシーンには、ときめくよりも、むしろ「気持ち悪くないのかな?」と、思ってしまう。
プラトニックな恋愛モノならまだいいのだけれど、「物語の最大の見せ場」とばかりに力が籠った長いラブシーンが始まると、気持ちが冷める。

こうした私の感覚は、特別変わっているとは自分では思わない。
私の周りには、その気持ちに共感してくれる友人も多く居るからだ。

例えば、恋愛モノに興味がない友人や同僚に話を聞いてみると、彼らの理由もさまざまだ。
「恋愛描写が過剰で不自然に感じる」「ストーリーがワンパターンで退屈」「現実とかけ離れすぎていて感情移入できない」など、恋愛系エンタメに興味を失った理由は多岐にわたるが、共通しているのは、「見ていて疲れる」「気持ちがついていけない」という感覚だ。
友人の中には、その恋愛ドラマにハマれるかどうかは、キャラクター達の魅力がどれだけあるかにかかっている、と言う人も居る。
「好きだな」「かっこいいな」と思う、自分好みのキャラクターが居れば、恋愛ドラマにハマれるそうだが、魅力的なキャラクターが居ない場合はハマれないという。

うっかりのめり込んでしまう恋愛モノ

恋愛系コンテンツが苦手だと感じる理由を、自分なりに色々と考えてみたけれど、逆に、上記理由に当てはまらない恋愛モノは、抵抗感なく楽しめてしまっているように思う。

例えば、物語のベースに恋愛ストーリーがありながら、ミステリー要素があったり、階級や社会構造を考えさせられるようなテーマがあるような作品は、のめり込んでしまう事が多い。
また、群像劇のように、登場人物が多いと、ストーリーが恋愛中心ではなくなるので、興味がわく。

映画『タイタニック』は、ローズとジャックの恋愛ストーリーを追っているようで、それだけではない様々な要素を併せ持つ映画だ。
ローズという一人の女性の成長を描くヒューマンドラマであり、タイタニック号に翻弄された多くの人々の悲劇の群像劇であり、大河ドラマとして、何度観ても感動してしまう。

漫画・アニメの『BEASTARS』は、肉食獣であるオオカミのレゴシと、草食でか弱いウサギのハルの青春恋愛ストーリーがベースにありながら、ミステリーやサスペンスとして楽しめるストーリーだ。
また、「社会的に認められた理想的なカップル像」から外れた異種族間カップル達の葛藤や、本能(食欲・性欲などの衝動)と恋愛感情がごちゃ混ぜになることで、異種族への恋愛感情が危険な「性癖」として描かれているところが、おもしろい。

ストーリーが、主人公2人の世界に限定されず、恋愛以外の感情やストーリーも十分に堪能できるエンターテイメントは、どうやら私の中では「恋愛モノ」と認識されずに楽しめるらしい。

複数人で観ると楽しい恋愛バラエティー番組

一人で観ることは無くても、複数人でエンターテイメントを共有することによって楽しめる場合もある。
例えば、恋愛系バラエティ番組などは、寮やシェアハウスの友人達と、「がんばれ~!」「今の告白はダメでしょ!」「いい!今のアピールはキュンとくる!」と応援やダメ出しを、自分勝手にワイワイしゃべりながら消費するのが楽しかった。
スポーツ観戦をするかのようなノリだ。
推しのカップルが成立すると、タンバリンやブブセラを鳴らしながら手を叩いて祝福する。
サッカーの試合で、ゴールが決まった時のような盛り上がり方だ。

この場合は、このバラエティ番組が楽しいというよりも、一緒にテレビを見て盛り上がれる仲間が居るのが楽しい。
お酒を飲みながら盛り上がるのも良い。

番組を見終わった後でも「どの人のアプローチが一番素敵だと思った?」「〇〇が同じ状況だったら、なんて答える?」とか、友人達と盛り上がれる要素がたくさんある。

と、まあ、「恋愛モノのエンターテイメントが苦手」と言っている割に、楽しんでいる事も多いのだけれど、ちゃんと自分の中で、なぜ苦手意識を感じるのかを言語化しておきたかった。
なぜなら、全体的に苦手感のある恋愛モノだが、一方で、激ハマりをしてしまったり、検索をしてでも読みたい恋愛モノもあるからだ。(自分では「恋愛モノ」という認識ではないのだけれど……。)

「恋愛モノ」のエンタメは、自分自身の欲望や理想、性癖が作品に反映されていないと、共感できないし、ピンとこないものなのではないだろうか。
自分自身の欲望を知る為にも、恋愛系エンターテイメントの好みは、しっかりと整理して把握していきたい。

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