紫陽花とギドラ HERO is Blue (詩のようなもの)
心がぽっきりと折れた。
「実は弱い」というレッテルを貼られて。
もう、何にも立ち向かえないと思った。
その日、僕は雨の中、ビルの屋上にいた。
すると、数え切れないほどのキングギドラもどきの群れが、
突然、西の雨空の雲間から、
物凄いスピードでギラギラと金色の鱗を雨に反射させ、
ミラーボールのように地上を眩しく照らしながら、
僕の頭上を通り過ぎて行った。
地上を見下ろすと、
逃げ惑う人々の合間に咲く、
紫陽花がきれいだった。
雨に濡れて、
ギドラの鱗でキラキラと光っている。
心がぽっきりと折れた。
「実は弱い」というレッテルを貼られて。
じゃあ、いったい誰がヤツらに立ち向かうんだろう?
人々の絶叫が響いている中でも、
紫陽花はきれいだった。
雨に濡れて、
ギドラの鱗でキラキラと光っている。
キングギドラもどきの群れはどこに向かうのだろうか?
……もう、どうでもいいんだ。
この星のことは、この星でやればいい。
もう、放っておこう。
もう、疲れた……。
あ、スカイツリーが燃えてる…
けど、
どうせ…
1人じゃ、あの群れは全滅できないよな。
僕は「実は弱い」のだし…。
…もう、帰ろう。
実家に。
ああ、目の前に火の海が迫っていても、
火傷の怪我人で溢れていても、
紫陽花はきれいだった。
雨に濡れて、
ギドラの鱗でキラキラと光っている。
その日、僕は雨の中、ビルの屋上にいて。
耐火性の皮膚ゆえに、
火傷なんかはしなかったが。
…風邪を、ひいた。