見出し画像

【ネタバレ感想・批評】『TARI TARI』



※注意事項※

本記事は、筆者が当該アニメを視聴した際に抱いた感想を綴ったものです。批評としての体裁を保つべく、可能な限り客観的・論理的な記述を心掛けてはいますが、あくまで個人の主張に過ぎず、その他の意見を否定する意図はございません。内容に触れない批評は説得力がないため、全編ネタバレありです。未見の方はご注意ください。なお、筆者はアニメを鑑賞する上でストーリー・シナリオを最も重視しており、作画・音楽・声優等には余程のことがない限り言及しません。ご了承ください。

記事に対する感想・疑問・指摘等あれば、お気軽にコメントしていただけると幸いです。


作品概要

タイトル:『TARI TARI』
放送開始:2012年夏
話数:全13話
原作:EVERGREEN(オリジナルテレビアニメ)
監督:橋本昌和
シリーズ構成:橋本昌和
アニメーション制作:P.A.WORKS

補足情報:「タリ タリ」と読む。動作を並列するための接続助詞「~たり、~たり」が由来。なぜそんなものをタイトルにしたかは不明。

※参考



基本設定

舞台は「白浜坂高校」という名の高校。普通科と音楽科があり、音楽科には音楽で生計を立てることを目指す生徒が在籍する。高校自体も音楽で有名らしく、プロを招待して行われる合同発表会の常連校。

主役は普通科の3年生5人で、明確な主人公を持たない群像劇。本作は彼らが合唱部を設立し、部活を通じて交流・成長するさまを描いている。


人物紹介

坂井和奏:音楽好きな母に影響され、彼女の母校である白浜坂高校の音楽科に入るが、母の病死を機に音楽と距離を置き、学科も普通科に転科。幼い頃に母と交わした、「一緒に歌を作る」という約束を果たせなかったことを悔やんでいる。

宮本来夏:普通科ながら歌うことが好きで声楽部に所属していたが、昨年の発表会で緊張のあまり失態を演じ、以来顧問からステージに立つことを許可されなくなったため、部を辞めて新たに合唱部を設立。部長として残る4人を勧誘する。前向きな行動派で、物語の牽引役を担うことが多い。

沖田紗羽:来夏の親友。面倒見のよい姉御肌で、合唱部設立に協力する。弓道部所属で音楽は素人。乗馬が好きで騎手になるのが夢。

田中大智:バドミントン部員。部員が一名しかいないため、姉の大学にあるバドミントン部の練習に参加している。音楽は素人だが、来夏の見立てだと歌の素養はあるらしい。

ウィーン :12年ぶりにウィーンから帰国し、白浜坂高校に転入してきたばかりの帰国子女。「ウィーン」は渾名。おおらかで天然。特撮ヒーローが好きで、音楽は素人。

教頭:声楽部顧問を兼ねる。厳格な人物で、ストイックな指導により度々来夏ら合唱部と対立。和奏母とは白浜坂高校の同期であり、声楽部は元々二人が設立した部。才気溢れ人柄にも優れた彼女に対し複雑な感情を持っていた。

校長:声楽部設立当初の顧問。かつては情熱的な指導者だったが、現在は周りに流されるだけの無気力な人物。

その他大小様々な人物が登場。

各話解説

全体としては連続性を保ちつつも、概ね2話完結。ラスト3話のみ3話完結。

1~2話。声楽部の数少ない(ひょっとすると唯一の)普通科部員・宮本来夏は、昨年の発表会で失態を演じ、そのペナルティで合唱に参加できず、
譜めくり(ピアノの伴奏に合わせて譜面をめくること)ばかりやらされていた。ピアノ担当の生徒は「もう覚えたから」と言って合唱への参加を後押ししてくれるが、教頭(顧問)は許可しない。音楽科の生徒がプロの前でアピールする機会をふいにした彼女に対し、「音楽は遊びじゃない」「音楽を愛することは誰にでもできる。しかし、音楽から愛され、人の心を動かすには、特別な何かが必要」と厳しい言葉を投げかけ、対する来夏はその場で退部を宣言。親友・沖田紗羽にかけあって、自ら合唱部を作ると決意する。

部に必要な人数(5人)を集めるため、まず同じクラスで元音楽科の坂井和奏に声をかける。母の死以来音楽を避けていた彼女は、「楽しく歌いたいだけならカラオケに行け」「遊びに誘うな」と一蹴するが、来夏は「遊びじゃない」「楽しんでるから真剣じゃないってことはない」と反論、「何もしないで諦めて後悔したくない」と続ける。この言葉は母との約束に未練を持つ和奏の心に刺さり、一度は交渉決裂するも、最終的に名前だけ貸すということで合意。その後弟のツテを頼るなどして頭数を揃え、校長(和奏母の恩師)を名ばかり顧問に迎えてどうにか部を設立。急ピッチで練習を進めつつ、校長権限で発表会のプログラムに合唱部をねじ込む。

発表会当日。部員の乗るバスがトラブルで遅れ、順番を繰り下げてもらうがなお間に合いそうにない。諦めかける来夏だが、紗羽に「これだけの人巻き込んどいて何もしないで帰る気?」「もう次はないんだよ」と発破をかけられ立ち直る。そして和奏の伴奏の下、二人だけでステージに上がるのだった。

2話にしていきなりクライマックスかと思うほどスピーディな展開で驚かされる。やや駆け足で説明不足な部分はあるものの、少ない尺で挫折・友情・復活を綺麗に描いており、ラストの合唱がそのままEDに繋がる演出も美しい。この時点でこれは良作だと確信した。

3~4話。発表会終了後、誘われただけの部員が次々辞めて3人となり、再び部員集めの必要に迫られる来夏。一方、同じく部員不足で廃部を通告されたバドミントン部員・田中大智は、なんとか県大会に間に合わせるため、転校生・ウィーンを部に誘う。両者は互いの部に目を付け、「勝ったほうが負けたほうの部を吸収する」という条件でバドミントン勝負が開始される。3人同時にサーブするという卑怯極まりない戦術で勝利した来夏は、大智に「合唱時々バトミントン部」なる部活の入部届を差し出し、「大会出なよ。その代わり、合唱にもちゃんと参加してよ?」と告げる。一瞬感じ入った直後、「負けても合唱辞める気なかっただろ」と問い詰める彼に、来夏は飄々と「その時は、バトミントン時々合唱部だったかもね」と返答。現実でもたまにある「落として上げる」タイプのサプライズであり、来夏の気遣いと茶目っ気が同時に表れていている。また本エピソードに象徴される「諦めの悪さ」は作品全体を通じた特徴でもあり、それがいかにも青春という感じを視聴者に与えていて非常に良い。

※なお、以降は正式名が「合唱時々バドミントン部」となるが、長いので本稿は「合唱部」で統一する。

夏休み。商店街でアマチュア音楽イベントをやると聞いた来夏、合唱部もエントリーしようと意気込むが、偶然その場に自身の好きなバンドが居合わせていることに気付いた彼女は、一転して出場枠を譲り、さらに練習を放り出して彼らの追っかけを始める。紗羽はそんな彼女を見て、「尊敬してる凄い騎手が相手でも、一緒に走るんなら絶対負けたくない」「ファンクラブで満足なら、私も合唱部辞めるから」と一喝、目が覚めた彼女は滑り込みでエントリーを間に合わせる。
イベント当日。合唱部のステージはほとんど客足がつかず、件のバンドに「一緒にステージに上げてやろうか」と情けをかけられるが、来夏は「自分たちのステージがありますから」と拒否。彼女の部長としての自覚が上手く表現されている。その後、近所の子供3人を相手に歌と踊りを披露する合唱部。質素なステージに地味なパフォーマンスだが、和やかで楽しげな雰囲気は次第に子供達を盛り上げてゆく。

5~6話。県大会。部員総出で応援に行くも、ベスト8で終わる。落ち込む大智を紗羽が励まし、彼の方ももう負けないと宣言する。

一方和奏は、自分が音楽の道へ立ち戻ることに躊躇いを感じていた。彼女の母は彼女が中学3年の時に入院し、受験が終わると同時に他界したため、受験に集中していた彼女は母との最後のひとときを満足に過ごせず、そのことが未だに彼女にとって心残りとなっていた。自室にある母との思い出が詰まったピアノを見て、過去を振り切るためにピアノの処分を決意する彼女。父親にその意思を伝え、業者を呼び撤去してもらう。
和奏が沈んでいることに気付いた来夏は、事情を聞きに彼女の家へ。彼女は母との約束を果たせなかった後悔を述べ、なぜ病気の深刻さを教えてくれなかったのかと嘆く。来夏はこれを聞き、自身も祖父とライブに行く約束を果たせなかった過去を打ち明け、しかし「今は約束叶わなくてよかったって思う」と述懐。戸惑う彼女を前に、「約束があったから、いつもおじいちゃんのこと思い出す」と続け、後悔も大事な思い出だと語る。これを受けて二人の距離が少し縮まる。

後日、先述の疑問を父親にぶつける彼女。すると父親は、生前妻と交わした言葉を語り始める。入院中、なぜ余命が短いことを伝えて曲作りに誘わないのかと尋ねる彼に対し、和奏母は「一緒に歌を作ると自分を相手の心の中に残せる気がする」と前置きし、それゆえ、自分自身を「悲しい別れの歌」として娘の心に残さないために、敢えて病気の話は隠し通す、と。これを聞いた和奏は泣き出し、思い出を断ち切ろうとしたことを激しく後悔する。しかし父親は、妻が受験後に和奏と作るつもりで書きかけていたという譜面を持ち出し、続きを作らないかと提案。さらにピアノも実は取ってあると明かし、部屋に置いていいか尋ねる。彼女は首を縦に振り、楽譜を抱えたまま泣きじゃくるのだった。

死に別れた親子のすれ違いが解消されるエピソードで、母親の切ない気遣いを描きつつ、最後には希望を持たせる感動的な締めとなっている。惜しむらくはこれが高3の出来事という点で、母の死が中3の時なことを考えると、流石に遅すぎるとの指摘は免れないだろう。

7~8話。紗羽の家に、彼女が請求した競馬学校の入学案内書が届く。しかし父親には反対され、その上入学要項の体重制限にも引っかかると知り思い詰める彼女。栄養失調で落馬を起こすまで絶食し、参加を予定していた流鏑馬イベントからも辞退を命じられてしまう。そのことを4人に打ち明けるが、和奏に「少し離れてみたら」と提案される彼女。「今離れたらもうお終い」「将来なんてない」と言い返し、以後自宅でふさぎ込むようになる。

一方、教頭に呼び出され、文化祭ステージへの申込取消を迫られる合唱部。以前のように音楽は遊びじゃない、発表の機会は真剣な生徒のものと説かれるが、和奏は合唱部に入り、技術を磨くことではなく人と音楽をすることの良さを知ったと穏やかに話す。さらに来夏は1話の件を踏まえ、「私、音楽に愛されてます」「一人じゃ無理だけど、みんなの力を借りれば、ほんのちょっとだけ、人の心を動かせるようになったと思います」「そのほんのちょっとを大きく育てるのが、先生の仕事だと思います」と力強く反駁する。
政治ものや軍記ものでもなかなかお目にかかれない、かなりの名スピーチといってよい。無論、ここまでの積み重ねがあって初めて説得力を持つ主張であり、1話では黙って引き下がるしかなかった彼女が努力で勝ち得た成果といえよう。
教頭もこれには従うほかなく、選考会への出場を許可する。しかしなんと、その選考会というのが当日で、慌てふためく合唱部は欠席中の紗羽をなんとか呼び出そうとする。呼び出しのメールを受け取った直後、入学に反対していたはずの父親が隠れて競馬学校に直訴している姿を目にする紗羽。さらに来夏らは即興の歌で応援のメッセージを届け、彼女はついに選考会へ向かうことを決心。馬を駆ってギリギリで体育館に駆け込んだ彼女は、4人とハイタッチを交わして合唱を開始する。

キャラを走らせて感動を取るみたいな展開は青春ドラマにありがちだが、脚本に走らせるだけの必然性がないとシュールギャグにしかならない。もちろんその点においても本作は抜かりなく、和奏との衝突を伏線として用意した上で、父親とメンバーに後押しされて駆け出すまでの過程を、長めの尺を取ってドラマチックに演出している。選考会が即日というのはやや無理がある気がしないでもないが。なお、最終回で紗羽は、海外の騎手になるべく渡航するという道を選ぶ。

9~10話。文化祭で音楽劇をやることになった合唱部。資金繰りのため、商店街の雇われご当地ヒーローとして宣伝に精を出す。
母から受け継いだ曲を音楽劇で使うことになった和奏は、作曲に行き詰まりを感じていた。彼女は母と教頭が旧知の仲と知り、教頭のもとへ相談に訪れる。教頭は和奏母が自由な気持ちでメロディを作っていたことを思い出し、「作らねばならぬと思っているうちは無理」「歌というものは、心の奥から、自然にあふれてくるもの」と助言、和奏は気持ちを切り替え再び作曲に乗り出す。

11~13話。文化祭に向け、合唱部やその他の部は着々と準備を進めてゆく。が、その裏では理事長による、学校を取り壊してマンションを建てる計画が進行していた。彼は校長に圧力をかけ、工事を前倒するため文化祭中止を通達。校長はこれに屈し、文化祭の中止と廃校の決定を発表。生徒はもちろん教職員や保護者もお通夜ムードとなる。合唱部も例に漏れず気の抜けた雰囲気になっていたが、和奏が突然、完成させた曲を抱えて4人のもとへやってくる。彼女は「学校がなくなっちゃうのは、私達の力ではどうしようもないけど、それで私達が終わっちゃうわけじゃない」と言い、自主的にステージを執り行うことを提案する。

手始めに生徒会にかけあって、学校側に中止撤回の嘆願を出すよう進言する来夏。会長はその場で各部の代表に決を採り、結果は14人中賛成5で否決。ここで普段来夏に悪態をついている弟が、賛成側に手を挙げているのが憎らしい。彼女は「それでも私達は歌いますから」と言い残し、次なる策を練る。
そんな中、和奏は教頭に歌が完成したことを報告し、「音楽は楽しむもの」というアドバイスのおかげだと感謝を述べると、彼女はそれが和奏母の言葉であることを明かし、楽しむ姿勢に身を委ね切れなかった自分にはアドバイスする資格がないと続ける。対する和奏は、「自分には楽しむことと同じくらい、友人の力が必要でした」「母にも、そういう友人がいたんじゃないでしょうか。一緒に楽しんで、悩んでくれた人が」と彼女の存在を肯定、これを聞いた教頭は堪えきれず涙を流す。

その後合唱部は商店街の面々(白浜坂の卒業生が多い)に頭を下げ、街中で宣伝して既成事実化してもらう約束を取り付ける。さらに彼女らに賛同するいくつかの部が準備に協力、教頭も合唱部をバックアップするよう、密かに声楽部と吹奏楽部に指示を出す。

そして迎えた文化祭当日。理事長は学校を閉め切り、校門に立ち入り禁止の立て札を置いて妨害するが、校長と教頭が現れ理事長に対抗、さらに宣伝チラシを見た街の人々も次々学校へやってくる。理事長もこれには逆らえず、捨て台詞を残して退散。教頭は来夏に「あなたが動かしてきたこのステージ、私に指揮をさせてもらえませんか?」と問いかけ、彼女も承諾。1話から対立してきた二人の和解がついに成り、合唱部によるステージが始まる。
音楽劇の内容は本作の物語とリンクしており、故郷を失った主人公達が、「たとえ奇跡は起こせずとも、ただひと時の憩いのために」想いを乗せて歌うという筋書きになっているらしい。ここの一連のセリフは自演とわかっていてもかなり心に来た。セリフが終わると教頭指揮の演奏とコーラスが始まり、5人は和奏の曲を歌いだす。それを見守る生徒や保護者、今まで出てきた街の人々。まさしく音楽が、絶望の中に「ただひと時の憩い」をもたらした瞬間といえよう。

その後月日は流れ、卒業式の日。5人の最後の合唱に合わせ、エンディングという形で本作は締められる。ここで過度に湿っぽい空気にせず、楽しげな雰囲気のまま物語を閉じるのが本作らしい。彼らは今後苦境に立たされても、歌と友情の力で逞しく乗り越えてゆくだろう。


才能

通常、部活ものにおいて、「才能」は切っても切れない存在である。真剣勝負の場で、才能と努力をぶつけ合いドラマを生む、というのが青春部活もののセオリーだ。
ところが本作は部員5人のうち素人が3人に半素人1人、経験者は1人だけ。しかも結成時期は3年の1学期。当然ながらまともな活躍は期待できないし、事実、作中でも社会的栄誉にあたるような実績はなんら残していない。しかし、それで十分なのだ。そもそも高校の部活など、大半は本人らの自己満足である。本作の素晴らしいところは、その自己満足をありのまま肯定したところにある。実績がなければ部活動を名乗れないのか? 音楽に愛されなければ音楽を愛してはならないのか? そんなはずはない。音楽の本質は「音を楽しむこと」だと、作中でもはっきり明言されている。楽しむこと、すなわち自己の満足。それこそが勝利以上に尊いものだと、13話かけて証明していくのが本作である。2話や8話が合唱を始めるシーンで幕引きなのは、歌うことそれ自体に意味があるのであって、その巧拙は問題ではないからだ。

本作の終着点は自己満足にとどまらない。楽しさには伝播するという性質がある。来夏の一人相撲から始まった合唱部は、彼女の熱意により4人の仲間を集め、彼らの真剣な、されど楽しむ心を忘れない姿勢は、彼らの肉親、生徒や教職員、街の住民と、様々な人の心を動かしてゆく。音楽に愛されなくても音楽を愛することはできるし、音楽を愛する人に愛されることもできる、というわけだ。なんと前向きで美しいメッセージだろうか。どっかの吹奏楽アニメに爪の垢煎じて飲ませてやりたい。

キャラクター

キャラが賢い。各話解説を読んでもらえばわかるように、各キャラの発言・思考が論理的で筋が通っているため、対話を経て心情が変化する過程に説得力がある。
また5人それぞれが、年齢相応の悩みと適度な反抗精神を備えている。若者らしい悩みはキャラクターに深みを与えてくれるし、反抗精神は展開を盛り上げるのに役に立つ。8話の選考会で和奏が無理矢理時間稼ぎをするシーンなどは、個人的にかなり気に入っている。
それからどのキャラも性格とノリがよく、見ていて気持ちがいい。例えば大智は大会さえ終われば合唱部を見捨ててもなんら実害はないのだが、来夏への義理を果たすために最後まで部に残っているわけで、彼の人柄の良さを物語っている。


ギャグ

ストーリー主体の青春物語とは思えないぐらい、尋常じゃなくギャグセンスが高い。特に画で魅せるタイプのギャグを得意としており、1話のストローで返事するシーン、2話の産婦人科のシーン、6話の肺活量を鍛えるシーン、8話の駐輪場のシーンなど、心情的には理解できるのに絵面の面白さで笑ってしまうシーンが多々ある。普通のボケやツッコミにも一々キレがあり、いかにも仲のいい高校生同士が繰り広げていそうな、リアルな気安さ・辛辣さが存分に描き出されて良い。

テンポ

無駄を徹底的に省いた合理性の高い脚本で、非常にハイペースなストーリー展開を実現している。具体的には、RPG的なお遣いシーンは目的地だけ述べて道中は飛ばす、キャラ同士が事情説明するシーンは視聴者が知っている内容なら導入だけで飛ばすなど、あの手この手で重要シーンための尺を確保している。これにより山場が次々に到来するため、一向にダレることがない。

まとめ

最初はメインキャラを周囲と対立させてそれぞれの葛藤を描写、終盤は成長した彼らが周囲を動かす展開へと転じ、それでいて伝えたいメッセージは1話から一貫しているという完璧な構造。やはり優れた物語には優れたロジックがあるものだと再認識した。描きたいものがハッキリしているから話が横道にそれることがなく、全13話をフルに活用していて満足度も非常に高い。所々詰めの甘い箇所こそあるものの、青春ドラマ系アニメの金字塔と言って差し支えないだろう。

結論

P.A.WORKS最高傑作。タイトルだけどうにかしよう。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集