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【ネタバレ感想・批評】『響け!ユーフォニアム』

※注意事項※

本記事は、筆者が当該アニメを視聴した際に抱いた感想を綴ったものです。批評としての体裁を保つべく、可能な限り客観的・論理的な記述を心掛けてはいますが、あくまで個人の主張に過ぎず、その他の意見を否定する意図はございません。内容に触れない批評は説得力がないため、全編ネタバレありです。未見の方はご注意ください。なお、筆者はアニメを鑑賞する上でストーリー・シナリオを最も重視しており、作画・音楽・声優等には余程のことがない限り言及しません。ご了承ください。

記事に対する感想・疑問・指摘等あれば、お気軽にコメントしていただけると幸いです。


作品概要

タイトル:『響け!ユーフォニアム』
放送開始:2015年春
話数:全13話
原作:武田綾乃の同名小説
監督:石原立也
シリーズ構成:花田十輝
アニメーション制作:京都アニメーション

※参考


まえおき

『けいおん!』と同じ女子高生×音楽で、 同じ京都アニメーションだが、ジャンルは違うし監督やシリーズ構成も別人なので、特に比較する必要性は感じない。

基本設定

主人公は高校の新入生。中学時代の部活は吹奏楽部で、高校ではどうするか決めあぐねていたものの、結局流れで吹奏楽部に入部する。主人公らの高校は特段吹奏楽で有名というわけではなく、前年度までは緩い雰囲気の部だったが、今年着任した顧問の影響で全国を目指すこととなり、部員らは一転して練習に励むようになった。本作第1期では彼らが夏の府大会に出場するまでの過程を描いている。

クソアニメ

開始1分で「あ、もうダメだな」と分かる。冒頭1分半は主人公の中学時代の回想なのだが、この1分半にこのアニメの悪いところが詰まっている。
中学3年の夏、最後のコンクールにて結果発表を待つ主人公。詳しくないので間違っていても許してほしいが、吹奏楽の地区大会では金賞の枠が複数存在し、その中から上位大会への出場校を決めるらしい。ここで選ばれなかった金賞を「ダメ金」と呼ぶそうだ。結果発表を聞いた主人公は、「ダメ金だけど金……」と嘯く。その隣では同級生・高坂麗奈が膝を抱えながら涙を流していた。感激していると勘違いした主人公は「よかったね、金賞で」と囁きかけ、対する彼女は「悔しい……」とこぼす。こんな当たり前のことを指摘するのもどうかと思うが、悔しがっている最中の人間は「悔しい」などと言わない。小説ならまだしもアニメなのだから、表情や仕草で悔しがる様を十分表現できるだろう。というか、実際できている。なのに、わざわざ台詞にする。未就学児にでも見せることを想定しているのだろうか。単に脚本のレベルが低いだけか。

まあこれだけならちょっとした手落ちということで許せなくもないが、その後の会話には度肝を抜かれた。「悔しい」を連発する彼女に対し主人公は、「本気で全国行けると思ってたの?」と返す。この瞬間、このアニメのストーリーは破綻した。確かに、多くの部活にはいわゆる「ガチ勢」と「エンジョイ勢」の棲み分けがあり、思想を異にする両者が衝突するのもおかしなことではない。が、3年も一緒に活動していて、相手がガチ派閥かエンジョイ派閥か把握すらしていないというのは、いくらなんでもありえない。
まだ本編が始まってもない段階で矛盾が発生するということは、作者が自分で作ったキャラクターをまるで理解できていないということである。そんな人間が書いたストーリーが面白くなるわけがない。

各種問題点

内容に入る前に、作品を通じての欠点を洗い出しておく。見てわかることをモノローグで説明するのがうざい。作画力があるのはいいが、無意味に動かすのはやめろ。多動症か? この無駄作画に幼稚なギャグが相まって、精神年齢が幼く見える。正直、もっとお高くとまった感じの作風だと思っていた。それから題材の都合上仕方ないのかもしれないが、キャラが多すぎる(部員は名無し含め60名超、しかも全員描き分けている)。面白いアニメなら何十人いようが憶えられるのだが……

各話解説

1~2話。間に寒いギャグを挟みつつ、スローテンポで進行する。なんせ、部活物なのに入部するか決めるだけで丸1話、担当楽器を決めるのに半話使い、本格的に練習が始まるのは3話からである。
2話Bパート、新任教師が顧問としてやってくる。曰く、「自主性を重んじたい。今年度の目標を決めてくれ」と。流れでガチ(全国出場)かエンジョイ(仲間内で楽しく)か多数決で決めることになる。なぜその二択しかないのか、多数決で不満が出ないのかとツッコみたくなるが、議論とか各自持ち帰って考えるとか一切ないまま、いきなり投票が開始される。エンジョイが1名しかおらず、方針は自ずと確定。とはいえ残りの全員がガチ側に手を挙げたわけではないし、挙げた中でも明らかに渋々選んでいる者が多く、自主性を重んじた票決とは到底言えない。それでも決まったもんはしょうがないので、弱小校なりに全国目指して奮起することになった。

3~4話。手始めに、『海兵隊』という初級の楽曲が課題として出され、顧問は「完成したら呼べ」と言って消える。各パートごとに練習を開始するも、パートによって熱意に差があり、やる気のないパートは空き教室で遊ぶなどしていた。なぜこれほどやる気がないのかというと、昨年、やる気のある1年(=ガチ)とない3年(=エンジョイ)が対立し、ある方が辞めたので、現2年生は数が少なくやる気もない、ということらしい。なぜある方が辞めるのか解せないが、それはそうと、練習を嫌がる部員達はさっさと顧問を呼び出して演奏を始める。案の定顧問にダメ出しされ、1週間後までに改善しないようなら、例年参加していた吹奏楽イベント「サンライズフェスティバル」にも出なくていいと言われる。部員達はなぜか逆ギレし、本当にそうなったら顧問に抗議しようと、妙な方向に一致団結する。
一方顧問は自ら前線に立ち、厳しい練習を課し始める。最初からやっとけよというツッコミはさておき、部員の間には当然のごとく不満が鬱積する。直接顧問にぶつける者もいたが、「お前らが決めた目標」と突っぱねられる。この時の彼女の心情を代弁すると、決めてない。
そんな中、主人公は放課後に、幼馴染でもある1年男子と顧問のやり口について話していた。彼が顧問に対し批判的な論を展開していると、立ち聞きしていた別の部員が口を挟んでくる。誰かと思えば高坂麗奈で、有名校への推薦を蹴ってなぜか主人公と同じ高校に入ったらしい。まあ実のところ、イケメン顧問のケツを追ってきただけなのだが。発情期の彼女は「先生は凄い人」「馬鹿にしたら許さない」と詰め寄るものの、どう凄いのか説明しないので全く心に響かない。ちなみに、後々他の誰かが説明してくれるとかもない。

その後、部員たちは不満を原動力にして練習に励み、最低限のラインはクリアしたと顧問からお墨付きをもらう。ここまでで4話だが、「下手でも真面目にやれば小マシになった」の一行で説明できてしまう内容で、なんの面白みもない。あまりの退屈さにげんなりする。

5話は先述のサンライズフェスティバル。正直、演奏の良し悪しなどわからないのだが、観客の反応を見るに、この2ヶ月の間で、周囲の有名校に見劣りしない程度には上手くなったらしい。過程と結果が釣り合ってない気がするが、まあいいか。

7~8話。3年生の一人が、受験で忙しいからと退部する。彼女は去年の退部騒動を悔いており、今更彼女らのことを忘れてガチ路線へ転換することに抵抗を覚えていた。序盤で唯一エンジョイ派に投票したのも彼女である。さらに彼女の退部をきっかけに、現部長がリーダーとしての自信を失い自暴自棄になる。元々彼女は何か飛び抜けた才能があるわけではなく、実力も人望もあるのに部長就任を拒否した現副部長に代わって今の地位に就いただけである。そのことを副部長に訴える部長。副部長は「ならお前も断ればよかった」と返し、二人の間に亀裂が走る。以上のような流れを受け主人公は精神が不安定になり、コンクールを前にミスを連発する。
……が、なぜかこれらの惨状はすべて棚上げされ、主人公の幼馴染と主人公の女友達による三流ラブコメという、極めてどうでもいいエピソードが始まる。と思ったらあっさり玉砕し、主人公と高坂麗奈の因縁に焦点が移る。まあ因縁といっても主人公が一方的に気に病んでいるだけで、向こうはだいぶ前から気にしていない風の態度を見せているため、別に険悪な感じはない。祭りの夜、なぜか楽器を担いで山に登る主人公と高坂麗奈。これ以降の彼女の台詞はことごとく要領を得ず、どうにか要約して箇条書きしてみたが、間違っている部分があったら申し訳ない。
曰く、主人公は性格が悪い。だから仲良くなりたい。化けの皮を剥がしたい。自分は他人と違うことがしたい。麓の祭りを無視して山に登るもその一環。特別になりたい。トランペットを選んだのはそのため。極めればもっと特別になれる。
……らしい。端的に言って意味不明。主人公は性格が悪いのではなくただ頭が悪いだけ(1話冒頭のシーンも嫌味ではなく純粋な疑問)だし、逆張り精神で登山するのは構わないが、主人公や楽器を引き連れていく必要はない。夜の山で女子高生が演奏するという「エモい」演出のために、ストーリーの方を捻じ曲げている。演出はあくまでストーリーを盛り上げる手段であって、演出それ自体が目的になっているようではお笑い種だ。トランペット云々はよくわからないが、まあ大抵の楽器は極めれば特別になれるのではなかろうか。何より解せないのは、これをわざわざ主人公に話す必然性があまりにもないことである。中二病の痛いキャラという設定にしたかったのかもしれないが、ここまでそんな伏線は一切ないし、中二病は自ら中二病ですなどと言わない。豪勢な作画と音楽で誤魔化してはいるものの、アニメ史上でも指折りの馬鹿脚本である。

9~10話。7話で出来した問題はいつの間にか雲散霧消し、話題はコンクール出場者を決めるオーディションへと移る。あれだけ無気力だった部員達はいつの間にかやる気満々で、落選して涙を流す者までいた。この辺りも少し違和感があるが本筋でないので省略。物議を醸したのはソロパートの選出である。3年・中世古香織を押しのけ、1年の高坂麗奈がソロに選ばれる。中世古香織は昨年時点で一番上手い部員だったが、年功序列で3年にソロを取られ苦い思いをしており、それを知る部員は彼女に同情的だった。しかも高坂麗奈は顧問と入学以前からの付き合いで、部内では八百長疑惑が高まる。これを受け顧問は再審を宣言、全員の前で演奏し多数決で決めると発表した。ただこれもおかしな話というか、八百長とは下手なのに手加減されたり贔屓されて勝つことを言うわけで、高坂麗奈は明確に中世古香織より上手いという設定である。確かにオーディションは密室で一人ずつ演奏する形で行われたが、普段の練習でそれぞれの演奏を耳にする機会はいくらでもあるし、ことトランペットパートのリーダーである中世古香織は、同じトランペット班の高坂麗奈の実力を間近で見て知っているはずである。なのに再審を求め、周囲も彼女を焚き付ける。もちろん3年で後がないのはわかるが、今のまま再審に臨んだところで、全員の前で恥をかくだけだと気付かないのだろうか。高坂麗奈も高坂麗奈で、上手い方が選ばれるのは当然、文句があるなら自分より上手くなれと挑発する。発言内容それ自体の是非はともかく、男を優先して強豪校を蹴った人間が口にしていいセリフではない。

11話。中世古香織シンパの2年生が、高坂麗奈に頭を下げて、再審で手を抜いてくれと頼みこむ。正直、こっちの方が人間らしくて好感が持てる。当然拒否され、オーディションが始まる。ここからの流れが酷すぎて呆れてしまったが、結論から言うと、中世古香織2票、高坂麗奈2票、あとは棄権した。しかも、投票した4人は全員私情である。わざわざホールを借り切ってこれとか、視聴者を馬鹿にしてんのか? 「全員の挙手によって決定」とはなんだったのか。一応言っておくと、演奏で優っていたのは明確に高坂麗奈で、部員もそれは理解した上で、である。部員の大半は中世古香織に恩があるわけでも、高坂麗奈に恨みがあるわけでもないのだから、素直に高坂麗奈に入れればよい。あるなら、中世古香織に入れればよい。どちらに入れても責任を負うのが嫌なのだろうが、そもそもお前らが不満を言うせいで再審などという事態になったのだから、まずそっちの責任を果たせ。投票を行うこと自体が理不尽だった2話の時とは違って、今回の選考は明確に部員側の意向である。それでこのザマだと、もはやこいつら全員、ただ性根が腐ってるだけとしか思えない。本気で全国を目指すのではなかったのか?
話を画面に戻す。顧問が中世古香織に尋ねる。「ソロを吹くか?」と。返答は「吹けない。高坂麗奈が吹くべき」。
……は? 今までのなんだったの? いや分を弁えて引き下がったというのはわかるが、遅すぎる。だから恥をかくだけだと言ったのに。これを聞いてシンパが泣き出し、彼女の顔がアップになる。とりあげず泣き顔に合わせて挿入歌流せば泣けると思うなよ。クラナドの頃から何も変わってないな。
結局、ソロは高坂麗奈に決まる。初めからそうしとけ。長々とやってきたがつまるところ全部内ゲバで、肝心のコンクールに向けての対策はまだ何もできていない。あの寒いメガネの副部長風に言うなら、「心の底からどうでもいい」。あとこれも本筋でないので軽く触れるだけにするが、「本気で殺すよ?」のシーンは薄っぺらすぎて吐き気がした。これ以降、とってつけたようなレズシーンが急増し、元々ない視聴意欲を限界まで削ってくる。

12話にしてようやく主人公に焦点が当たる。とはいえ、練習してもできない部分が、顧問の精神的なアドバイスでできるようになったというだけの話で全然盛り上がらない。そもそもこの主人公、主人公のくせに異様に掘り下げが少ない。この回では急に実力不足を痛感し、泣きながら川に向かって「うまくなりたい」と叫ぶ奇行を見せるのだが、これまでの積み重ねが一切ないため、切実さがまるで感じられない。後で調べたところ、この回は純度100%のアニオリらしい。大方、「とりあえず人前で叫ばせとけば青春ぽくなるだろ」みたいな、クソ適当な思いつきで書かれたのだろう。
どうでもいいが、鼻血の時に上を向く対処法は誤り。血が食道に流れ込み、吐き気や嘔吐の原因になる。仮にも部活ものなのだから、正しい医学知識ぐらい事前に調べてほしい。

最終回。見事府大会で優勝し関西大会出場を勝ち取るも、他校の演奏描写が一切なく、お手盛り感が半端ない。ついこないだまで身内で足引っ張り合ってた連中に負ける有名校、不甲斐なすぎでは。名前の通りお祭り色の強いイベントだった5話はともかく、今回のは明確に勝ち負けが出る競技である。競技において、理由のない勝利ほど白けるものはない。創作も同じ。過程がないのに結果だけついてくるのは、作劇で最もやってはいけないことの一つである。

エンジョイ

そもそも、府大会で勝つことがそんなに大事だろうか。なんか結果的に勝てたから万々歳みたいになってるが、元々民意を無視して強引に路線転換したことを忘れてはならない。そのせいで7話では退部者を出す事態になっているし、彼女に対するアフターケアも一切ない。もちろん競技志向それ自体は悪いことではないが、全部員に強制するのはどう考えても間違っているし、そんな強制された目標に価値などない。普通スポ根ものというのは、部員が自主的に勝利を目指すからこそ盛り上がるのだ。何か根本的に勘違いしてないか?

まとめ

小うるさいギャグもさることながら、それ以上にストーリーが壊滅的。原作者・脚本家の頭が悪いので、登場人物も全員知的障害という悲惨なことになっている。主要な指摘だけでかなり長くなってしまったが、これでも結構はしょって書いた。なんか人間関係で色々シリアスっぽいことをやろうとしてはいたものの、実力主義・成果主義で行くならどれも当たり前の話で、実際に全国を目指しているような奏者からすれば噴飯ものの内容だろう。そもそも人間関係のトラブルを乗り越えたところで、技術面での向上とは全く別の問題である。これを絶賛している信者どもは、この程度で現実の厳しさを知った気になっているのだろうか? これなら初めから中身がない分、『けいおん!』のほうが余程マシである。2期と3期と劇場版があるが、金積まれたって見ない。


結論

ボロボロのストーリーに豪華な作画をメッキしてごまかす、京都アニメーション一流の詐欺アニメ。

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