『読書感想7』『クララとお日さま』#カズオ・イシグロを読む
『Klara and The Sun』
『クララとお日さま』
この作品は、カズオ・イシグロが
ノーベル文学賞(2017年)、受賞後第一作として書いた作品です。
❪AI ❫┉┉Artificial Intelligence
人工的、人為的、技巧的、 知性
❪AF❫┉┉Artificial Friend
(人工親友)として開発された
❪AI❫人工知能搭載のロボット
★★★
この小説の主人公クララは、
❪AF❫ ┉┉人工知能搭載の人工親友ロボットです。AFは、各々自分の顔を持ち(性格、個性と、知能の発達、能力)も違います。各々、情感、感性も違いがあります。
❪AF❫自身の日々の努力によって人工知能は、発達し、感性豊かなAFに成長していきます。
❪AF❫は、家庭で子供達の遊び相手、話相手、見守りをしたり、病弱な子供のお世話や話相手などをします。
❪AF❫クララは、
店頭に陳列されている時から街の状況、店の客、街を行き交う人々を通して観察し知性、感性の能力を高める事に努力する優れた❪AF❫でした。店には、店長と❪AF❫女子、❪AF❫男子等仲間がいますが、クララは特に観察能力、学習能力に秀で優秀な頭脳を形成され人間の感情を読み取れるまた、自身の考えを発言でき、アドバイス等もできる能力を持つまでに成長しています。
ある日、クララは、店に訪れたジョジーとその母(クリシー)に親しみを感じます。娘ジョジーもクララを大好きになりお互いが再開を願います。
長い待ち時間の後、クララは、ジョジーの❪AF❫として買われて行きます。クララは、ジョジーの年齢を14才半位だと推定します。病弱のため、話相手、見守り役として❪AF❫が必要だったのです。
ジョジーの父は、別居中で滅多に会う事はありません。母は、仕事に出かけますので、お手伝いの、メラニアさんが日常生活のお世話をしています。
ジョジーには、サリーと言う姉がいましたが、病気で亡くなっています。
リックは、ジョジーの、隣人の幼友達で、クララの推定で15才です。母ヘレンと二人暮しです。母ヘレンは、クララの母クリシーとは、隣人であり友人です。隣人といえ距離があります。
リックは、時々ジョジー宅を訪問する事が許されています。二人は、未来を夢見る約束を持っています。
近未来、何処かの国の何処でも心を持った❪AF❫が、日常的に人間と繋がり、友人として、あるいは職場の中でリーダーとして補佐として❪AF❫が、活躍する世界、社会が間近に迫っていると言う事を感じます。
実際に、10数年前日本のソニーの犬型ロボットが発売された時、友人のお姉さんが、一人暮らしが淋しいと、お友達として購入したとの話に、私は、その当時としては驚きました。しかし、現在では、職場でも工場でも介護の現場でも❪AI❫搭載のロボットが、導入され活躍しています。
しかし、まだAF設定として人間との意見交換、感情の交流、アドバイスまで可能な豊かな能力と心を持ったロボットに成長していません。
ジョジーの家庭には一つの秘密があります。それは、ジョジーの姉サリーの病死に関して、ジョジーの病弱を心配する余り両親の考えていることです。
❪AF)クララにジョジーを学ばせる、ジョジーそっくりのクララになることを学ばせ、娘を永遠に遺したい、永遠に側におき慈しむ事を願う親心です。
娘の長命を願う欲望でしょうか。
実際にロボットが成長を重ね人間と同一の感情を表現するロボットができるのでしょうか。
未来には、そういった現実が待っている可能性があると私は思います。
クララは技術的に造られた人間のお友達として優秀です。❪AI❫搭載 にも関わらずジョジーにジョジーの家族に、また隣人に献身的に優しい心を育み❪AF❫として自身の危険もかえりみず躊躇なく尽くす姿は、心打たれます。
クララは、❪AI❫で心が養われた❪AF❫ロボットです。
人間の欲望は際限がありません。
技術的に創られた人工知能で長命の欲望 、長命を精神的な拠り所としてデーターを工学的、蓄積術にて人間的 人格的にも 寿命、長命の欲望を成し遂げたいと考えていると私は思います。
❪DNA❫生物学的 施術的にクローン人間を産み出す。
以前ある映画にて、ある島にてヒットラーのクローン人間を産み出し、育てるという設定の映画を観ました。あってはならない事だと恐ろしく感じました。
★★★『現在、クローン人間の応用は禁止されています。』
太陽を栄養とする ように設定 されたクララは、ジョジーにもその効用を導きます。人間関係が希薄になっていく現在の社会を考える時、クララのその過程における献身と努力は、涙ぐましい物があります。美しい物を感じます。
ジョジーは、徐々に健康を取り戻して普通の生活が可能になります。未来の希望も持てる状態までの快復は、奇跡でありクララの努力、献身なくては考えられません。
ジョジーとリックは、各々の進路を目指し各々の方向に巣立ちます。
クララの使命は、終わったのでしょうか!クララは、不要品倉庫の棚に置かれています。とても切ない胸打つ情景です。進化した新しい型のAFが次々と産み出される時代に入り、AFクララは古い型になったのです。
★★★
作家 カズオ・イシグロ(1954年~ )の文学の世界、文学の基本理念は何処にあるのでしょう。
イシグロは、原爆が投下された長崎に生まれ5歳の時に海洋学者であった父の仕事の関係で家族と共に英国に渡り、英国の教育を受け成人します。日本人としてのDNAを持ち英国の教育を受け成人する過程では「世界の歴史」を「英国の歴史」を「日本の歴史」「負いの歴史」を含め的確に客観的にとらえる精神が養われたようです。
歴史的視点、未来を見据える視点は非常に深い豊かな資質を持ち各々の作品に反映されています。
カズオ・イシグロは、
現在、自国第一主義、分断、分裂と暴力の連鎖の世界、科学技術の進歩が大きく変わって行く時代を見据え、異なる人々を理解するだけではなく『文学は人間の壁を乗り越え貴重な世界を創っていく。』と考えているようです。(NHK対談より)
私は、こういったカズオ・イシグロの特有の視点が好みです。
明確な基本的思考と姿勢を持ちながら柔かな優しい視点を文学の中で共有できるのは魅力です。
★生成AFの進化が、めざましい近年、動き、感情には、まだまだ未完成の部分を残しつつ、進化の道は、止めがありません。
人間が生きるとはどういう事なのかと言う大きな問題を提起していると思います。
依ってリスクの面への追求、研究、法整備も急がれるでしょう。
近未来について考えさせられる貴重な一冊でした。
★★★
カズオ・イシグロは、分野の異なる多くの課題、作品に各々多くの受賞をしています。
カズオ・イシグロの作品・及び受賞について
『遠い山なみの光』
『A pale View of Hills』
『日の名残り』ブッカー賞(英国)
『The Remeins of The Day』
『わたしを離さないで』
『Never Let Me Go』
『忘れられた巨人』
『The Buried Giant』
『浮世の画家』
『An Artist of the Floating World』
★★主な受賞は
2017年┉┉ノーベル文学賞
1989年┉┉ブッカー賞
『日の名残り』
1986年┉┉Costa Book of the Year prize.
『浮世の画家』
1982年┉┉王立文学協会賞
『遠い山なみの光』
1998年┉┉芸術文化勲章
フランス文化省名誉勲章
その他いろいろです。
未熟な読書感想を読んで頂きありがとうございました。
記┉2024/8/24 ユリ🌿🌿