うずしおの誤算 -メエルシュトレエムに感化されて鳴門に来てはみたが-
今日、初めて徳島に来た!
理由は1つ。渦潮である。
若き頃にエドガー・アラン・ポーの『メエルシュトレエムに呑まれて』を読んで、一度、本物の渦潮でも見てみたいもんだと思って暫く経ったが、やっと「渦潮と言えば鳴門」の鳴門に来た。
私は、水が激しく流れているのを見ると、何だか催眠状態みたいになってしまうことがあり、波とか滝とか洗濯機の中で回る服などを延々と眺め続けてしまうことがある。
何が自分をそうさせたのか分からないが、催眠術にかかり過ぎない程度に楽しみにきた次第である。
期待に胸を膨らませ、徳島阿波おどり空港に降り立つ。
空港から出ているリムジンバスで、徳島駅に到着し、駅周辺の街並みも見て回りたいが、、、
居ても立っても居られず、ホテルに荷物を置き、早速、渦潮が待つであろう鳴門海峡へと繰り出した。
しかし!
今日は潮の流れがさほど速くない日であるらしく、あまり目立った渦が見えなかった。。。
渦潮スポットや渦潮観光船などのウェブサイトをよく見ると、なるほど渦潮が強く発生すると見込まれる日が赤で色分けされていたりする。
今日は何とも天気もよく、穏やかな瀬戸内海である。。。およそ渦が出てきそうなムードでもない。
毎日、渦潮のピーク時があるのは知っていたが、私はそれが、いわば花形選手のようなものであり、少なくともそこそこの規模の「前座」のような渦潮ぐらいは「今日はボクらの名前だけでも覚えて帰ってください!」みたいに日々頑張って活動しているものだと思っていた。
渦潮のために徳島に来た割には、何とも事前準備が杜撰なものだと反省している。
日本全国の渦潮ファンの皆さんにひと言。
「渦潮は、我々が期待するほどには愛想がないぞ!」
そこそこ狙わないと、想像しているような渦らしき渦には巡り会えないかもしれない。
このたびの私の敗北を無駄にせず、渦潮を、そして渦潮という名を借りた心の中の天竺をぜひ目指し続けていってほしい。
実は、もう1つ誤算があった。
私は、鳴門にある「渦の道」という渦潮の有名スポットを普通の建物か何かだと思っていた。
これは実は、鳴門海峡に架かる大鳴門橋から真下の渦潮を覗き込むというスリリングなスポットだったのである。
この橋が2段ベッドみたいになっており、上段を車が走り、下段が人の往き交う「渦の道」になっている。
さあ、これは大きな誤算である。
やばい!
、、、めっちゃ怖い!
私は過去に、中国の海南島にある「亜龍湾熱帯天堂森林公園」という長い名前のリゾートパークで、わざわざ追加料金を払って吊り橋を渡ったことがある。
そのとき、吊り橋の途中で怖さのあまり足が動かなくなり、吊り橋の上にいる中国人の群れを暫く通行止めにした苦い思い出がある。
そのときは、後ろの中国人のお姉さんから「ねえ、あなた行くの戻るの?ねえ、どっちなのさ?」と詰められたり、優しい中国人のお婆ちゃんから「あらあら、下を見なきゃ大丈夫だから、勇気を出して」などと鼓舞されたり、と日本男児のヘタレぶりを曝け出してしまった。
さて、今回は吊り橋ほどではないものの、この渦の道、頭上を車が通過するたび、大きく揺れるのだ!
ひえ〜!
悠々と涼しい顔で行き交う人々の間で、私だけが極めて腰が引けたような姿勢で、まるで盗っ人のような、いやそれこそ徳島名物阿波踊りみたいな歩き方で、渦の道に入り込んだ。
途中、床に強化ガラスが嵌め込んであり、真下に瀬戸内海を見下ろすことができるスポットも何箇所かあった。
周りの観光客は、楽しそうにそのガラスの上に立ち、「ほぅほぅ」などと真下の景色を堪能していたが、いやいや何とも子供である。
断言する。ほぅほぅではない!そんなところに立つ必要は全くない!
上が何とか、勇気を振り絞り、恐る恐る斜めから遠巻きに下を撮った写真である。渦のカケラもないが、とにかくこれ以上、覗き窓に近付くのはムリ!
渦の最終地点に、ボランティアのガイドのおじさんがいたのだが、腰が引けっぱなしの私の1人阿波踊りのような動きを見て、「大丈夫ですか?」と言われてしまった。
私は心拍数上がり過ぎて、少し意識も朦朧とし、「あー、こんにちは。今日は渦は巻いていらっしゃいますか?」とか訳の分からない敬語を使いながら雑談した後、渦の道から命からがら逃げ出した。
いや〜、それにしても、今日はまた1つ勇敢な闘いを終えた。
大鳴門橋の近くの休憩所にて、勇敢な戦士のみが手にすることを許される「わかめソフトクリーム」で勝利を祝福した。
さて、本日の2つ目の教訓はすでにお分かりいただけたであろう。
「渦の道は、怖い人には、そこそこ怖い!」である。
さて、渦は小さ目で少し残念だったが、旅に失敗は付きものであり、また旅で悲しい気持ちを引きずることもナンセンスである。
初の四国、初の瀬戸内海、そして鳴門海峡、今日は失敗と成功をありがとう!
さあ、それにしても、少ない荷物で旅に出たため、スマホで記事書くのは、なかなか時間がかかる。。。