【Go to 徳島 番外編】 実に長い徳島の1日
《本記事は、以前の記事「執念の渦潮リベンジなるか -徳島の海に呑み込まれた涙の理由-」の続きとなります》
さて、徳島に来て2日目の午後となった。
昨日から2日にわたる「渦潮」との闘いを経て、少しリラックスしたい気分になった。
徳島には、ほぼほぼ「渦潮」と阿波踊りのために来たわけではあるが、阿波踊りのスケジュールは最終日に時間を取っている。
いったん海を離れて、街にでも繰り出してみようか。
鳴門海峡からさほど遠くない場所に「第九のふるさと」と呼ばれる場所があるとわかった。
「第九」は、あのベートーヴェンの交響曲第9番の「第九」のことであり、ベートーヴェンの作曲した9作目の交響曲、且つベートーヴェンの最後の交響曲と言われる「あれ」のことである。
「第九のふるさと」は、地元の観光関連のページでは「ドイツと鳴門~友好の架け橋~」的なスポットとも位置付けられている。
徳島県観光情報サイト「阿波ナビ」によると、同スポットには以下のような歴史的背景があるらしい。
~大正時代、第一次世界大戦に参戦した日本は、ドイツの租借地であった青島を攻撃し、何千人のドイツ兵を俘虜とした後、約1,000人の俘虜をこの地「鳴門市大麻町(当時、板野郡板東町)」の板東俘虜収容所に送り込んだ。
そのとき、収容所を管理していた松江豊寿所長をはじめとした人々は、俘虜たちの人権を尊重し、可能な限り自主的な運営を認めたとのことである。
そして、1918年6月1日、この地でドイツ兵捕虜により「第九」が全曲演奏されたのが、日本における初演とされていることから「第九のふるさと」と呼ばれているらしい~
私はちょうど、四国八十八箇所霊場の第1番札所であり、地元で「一番さん」と呼ばれて親しまれている「霊山寺(りょうぜんじ)」にも行きたいと思っていた。
その霊山寺も「第九のふるさと」と同様、JRの「板東駅」が最寄りとなるようだったので、ここに行くことに決めた。
さて、すっかり楽しませてもらった鳴門海峡に別れを告げ、バスでいったんJR「鳴門駅」まで戻ることとした。
バスに乗ると、どうやら昨日、港から駅に戻る際に乗ったバスと同じ運転手さんだった。
と言うのも、この運転手さん、バスが大きく曲がるたびにマイクで「はい、揺れま~す」とか「左に曲がりま~す」とか独特なイントネーションで声掛けしてくれるので、印象に残っていたのである。
また「ここの食堂はなかなか人気がありまして~」とか「左手に見えるのが~」とか、バスガイドさんも兼ねているかのようなサービス精神であり、地元では案外有名な運転手さんなのかもしれない。
さて、昨日から4度目の到着となるが、「鳴門駅」に戻ってきた。
駅の隣にある観光案内所にて、「第九のふるさと」への行き方を以下のとおり再確認した。
1.「鳴門駅」から(徳島駅に戻る「鳴門線」で)「池谷(いけのたに)駅」まで戻る。
2.「池谷駅」で下車し、(「香川県高松市の高松駅」から「徳島県徳島市の徳島駅」に至る)「高徳線」の高松方面行きに乗り換える。
3.高徳線のすぐ次の駅となる「板東駅」で下車。
な~んだ、「板東駅」への行き方はいとも簡単である、などと思い、「少し腹減ったなー。鳴門駅周辺で食べていくか、、、」などと空腹が気になり始めた。
しかし、鳴門線の電車もほどなくして来てしまったので、急いで乗り込み、「池谷駅」までいったん戻り、そこで下車した。
「池谷駅」周辺で何か食べるかー、、、と思ったが、同駅はいわゆる無人駅で、駅の中に誰もいないだけでなく、、、駅の周囲にお店のようなものも見当たらず、駅の外にも誰もいないようであった。
腹減ったけど、、、「何もねぇ~し~、誰もいねぇ~」などと思って、悔しくて写真だけ撮っておいた。
今回はレンタルカーもない公共交通機関での旅である。
この駅で1時間とか待たされるのも辛そうだな、、、などと思いながら時刻表を見ると、次の高松方面行きの電車が来るまで20分ほどもあるようだ。。。
先ほど写真をパシャパシャ撮ってた無邪気な気持ちもどこかへ行き、ここで20分かぁ~と少し面倒な気分になった。
それにしても、電車は1時間に1本とかの本数であり、1本逃すとかなりたいへんなことになるという気がした。
さて、間もなくして、到着した電車に乗り込み、「きっと、次の板東駅には、すぐ着くだろうな」などと思いながら、「第九のふるさと」に少しワクワクし始めた。
すると、ワクワクする私の隣で、私の愛すべき中国人ソウルメイトの「モンキーマジック」さんが、何かソワソワし始めた。
そして、「ねえ、板東とか言ってたよね?あの電光掲示板見て。合ってる?」と言い出した。
私は「まあ1駅だから、慌てなさんな」などと言いながら、通過駅が表示された電光掲示板をチラっと見た。
「ほら、合ってんじゃん。板東でしょ?あそこに書いてるよ。板東、、、ん?板、、、板、、、板野?ん?『東』じゃなくて『野』になってる?『板野』? 掲示板の誤記か?」
人間、思い込みが強いと、すぐに自分の誤りを認めないものである。
「いや、、、掲示板はさすがに間違えないか。。。」と、そこにちょうど良く車掌さんが通りかかった。
「すいません、『板東』に行きたいんですけど、何か次の駅が『板野』になってるようで、、、この線じゃなかったんでしょうか?」と私は車掌さんに尋ねた。
「あー、なるほどこれ特急なので、『板東』は通過しちゃうんですよね。次の駅で下りて、もう1度『池谷』まで戻って、各駅停車の『高徳線』に乗っていただくことになると思います」
う~ん、特急であったか。
また、あの何もない「池谷駅」まで、また戻るということか。。。
少し面倒だが、まあ仕方がないか、、、1駅だし、、、でも、あの駅で何分ぐらい待つことになるんだっけ。。。
間もなく、勘違いで到着してしまった「板野駅」にて下車した。
そろそろ空腹を満たすべく、「板野駅」周辺で何か食うか、、、と思いきや、、、おー、「池谷駅」に引き続き、「何もねぇ~し~、誰もいねぇ~」。
この駅で下車した人は、ほかには誰もおらず、私は急いで「池谷駅」に引き返す電車の時間を調べるため、駅に設置してあった時刻表を見た。。。
嘘だろ。。。今が昼の1時過ぎだが、15時半過ぎまで電車がない、、、?今から「2時間」以上もないですとぉ~?
私は、決して誤解などではないことに半ば気付きながらも、駅員さんを探したが、上記のとおり、どこを探しても「誰もいねぇ~」の状態だった。
無人駅に掲示してあったカレンダーに「JR四国」の電話番号が書いてあったので、念のため、掛けてみた。
電話の向こうのお姉さんは「そうですねぇ。。。今日は週末なので、あいにく次の池谷行きの各駅止まりが来るののが『2時間以上』後の、、、」とお墨付きをくれた。
何か少し疲れて、無人駅をいったん出た、、、が、やっぱり「何もねぇ~」であり、私とモンキーマジックさん以外には誰もいない。
我々は顔を見合わせ、「どうしようか?タクシーって、こんなところまで来るのにどれぐらいかかるんだろうね?」などと話し合った。
、、、と、駅の横に1台だけ、タクシーが無造作に止めてあった。
「何だこれは?これはもしやの、、、タクシーでは??」と当たり前のことを自分自身に再確認していたら、ちょうど駅の隣の建物からおじさんが出て来て、タクシーに向かってきた。
私はおじさんに「すいません、、、もしかして、、、運転手さんですか?あのー、霊山寺まで乗せて行ってもらったりとか、、、」。
すると、おじさんは「おお、いいよ。今ねー、別のお客さん迎えに行くんだわ。ここで10分ぐらい待っといて」とのことである。
この「何もねぇ~」環境で、また10分か、、、と一瞬思ったが、すぐに待っている旨の返事をした。
その後、ベンチと自動販売機ぐらいしかない駅の外で10分ぐらい、おじさんの帰りを今か今かと待ちわびた。ホントに誰1人通らない。。。週末とは言え、この駅を利用する人はいないのか。。。
しばらくして、今やヒーローと化したおじさんが駅に戻ってきて、ようやく「霊山寺」まで送ってもらった。
それにしても、駅の隣にタクシー会社(個人タクシー?)があって助かった。我々のように路頭に迷った観光客相手に張り込んでいるのであろう。
霊山寺に行く道中、運転手さんに「霊山寺の近くにレストランとか飲食店はありますか?」と聞いた。
運転手さんいわく「すぐ近くにレストランがあって、テレビであの出川哲郎さんも、その店が美味しいって言ってたよ」みたいに教えてくれた。
間もなく「霊山寺」に到着し、私は運転手さんにお礼を言って、「一番さん」に挨拶する前に急いで教えていただいたレストランに向かった。
メニューに「シカ肉のオムライス」というのがあったので、私はそれを頼んだ。
私はアメリカのシカゴに住んでいたときに、「シカ」との生涯忘れることのできない出来事を体験したのだが、それは別の話なので、いつか別記事で書くかもしれない。
「ほぅほぅ、ジビエ料理だぜ~」と思って食べていたら、ちょうど目の前のテーブルの上に「阿波地美栄まつり2023」なるイベントの広告があり、「ジビエ料理のグルメレポート」みたいなのを募集していた。
この場で記事でも書いて応募してみようかと思ったが、「一番さん」が待っているのであきらめた。
その後、お腹も満たされ、やっと「一番さん」こと「霊山寺」でのお参りを済ませた。
境内は、厳かな雰囲気ながらも、綺麗なお庭にしばし旅疲れし始めてきた心も癒された。
さて、この後は、これと言って目的地もなかったので、「第九のふるさと」の静かな街を歩いてまわった。
「道の駅 第九の里」に行ったり、、、
隣接する「鳴門市 ドイツ館」を冷やかしたり、、、
、、、さて、歩き疲れてきたので、最後は「大麻比古神社」で締め括って、「徳島駅」に戻ろうか。
実は、私は「神社巡り」も好きで、旅行に来た際も著名な神社はできるだけお参りして回るようにしている。
「大麻比古神社」の大鳥居。
さて、本殿を目指すぞぉ~
ん?結構、道が長そうだぞ。。。
むむ??5分以上歩いたが、まだ本殿が見えない??
おっ!何か赤い橋が見えてきたぞ!何となく神社っぽい雰囲気??
おぉ~ ToT
10分以上歩いた気もするが、やっと建物が見えてきたー。
立派なご神木。
本殿へのお参りも済ませ、、、
(※ 本殿の写真は、あまり正面から撮らないようにしています)
本殿の裏にある「めがね橋」へ。。。
「めがね橋」が架かる裏の池は何とも神秘的な雰囲気であり、何かと水辺に吸い寄せられがちな私は、いい気分で数分間、池を眺めていた。
さて、何かいい気分になったことで帰りますか、、、とそこに、恐ろし気な看板が!
「危険 サル出没中」だと!
ヒエ~ッ!
この「サルに注意」とか「トンビに注意」とかいう例の看板がまた出て来たぁ~。
私は過去に、香港の山奥でサルの大群に凄まれた経験があるが、それも機会があったら別記事で書くかもしれない。
ここでサルに出くわしたら、何か怖そうだなぁ~などと冷や冷やしながら、神様には「ホントにありがとうございました。最後に少しサルを大人しくさせておいてください」などと、先ほどのお賽銭の効力が消えない内に、心の中で追加でお願いした。
そして、そそくさと境内から逃げ出すことに決めた。
サルが出てきても、そのまま「去る」のであれば問題ないが、何かヘンに絡まれて、思いもよらぬモンキーマジックでも繰り出された日には怖過ぎる。
さて、お参りのご利益もあって(?)サルに取り囲まれることもなく、また長い道を経て大鳥居まで戻り、いよいよ「徳島駅」まで戻ることとした。
ここから「板東駅」までも徒歩で20分ぐらいあるようだ。
サルに余計に精神もすり減らされたので、「板東駅」周辺の喫茶店あたりで、少し休憩しながら「徳島駅」行きの電車を待とうか。
、、、と思ったが、、、はい皆さんも薄々お気付きの、、、(せーの)「何もねぇ~し~、誰もいねぇ~」!
、、、もう徳島はん、鳴門はん、同じネタばっかりですやん。。。
そして、案の定、最寄りの「池谷」行きの電車も1時間以上来ない。。。
そして、今度は少しハードモードになっており、「池谷駅」から「徳島駅」行きの電車が、間もなく「20分」ほどで到着するらしい。。。
今日は「たった1駅なのに、実に遠い1駅」を感じる日である。。。
、、、何か、こんなんばっかりで、ちょっと疲れた、、、と思ったら、駅の正面にタクシーが無造作に止まっており、その近くの事務所でおじさん達が3人ぐらいで談笑している。
、、、駅の隣の建物におじさん、、、何か数時間前に似たようなことがあったような。。。
デジャヴを感じつつ、私はおもむろに事務所に突入し、「あの~、お話し中のところ、すみませんが、、、どなたか池谷駅まで乗せて行っていただくわけには、、、」
一番ドアの手前にいたおじさんが「ああ、いいよ。今日は祝日だし、電車もなかなか来ないでしょう」などと言ってくれて、サッと車の方に移動した。
タクシーに乗り込みつつ、私はGoogleマップで到着時間を調べ、念のために運転手さんにも「実は、20分ぐらいで池谷駅に電車が来ちゃうんですが、大丈夫そうですか?」と聞いた。
運転手さんは「うん、10分ぐらいで行けるよ」と言ってくれた。
おぉ~、運転手のおっちゃん~ToT 実に頼もしい~
運転手さんも「都会からこの辺来た人は、みんなビックリするんですよー。前まで、もうちょっとバスも有ったんだけど、コロナで全部売っちゃって、、、。電車とバスだけだと厳しいから、タクシー乗り継いでも、そんなにかからないし。。。」などと結構、話し好きな方であった。
そして、親切にも「『池谷駅』には、券売機はないですからねぇー。見つからなくてもビックリしないでね」などと教えてくれて、「この間も、中国人の観光客の人たちが『中国より田舎だー』なんてビックリしてて、ハハハ」などと言って、私はチラっと隣のモンキーマジックさんを見た。
それにしても、徳島もいい所だと感じたが、公共交通機関は少し不便だと感じた。電車もバスもあまり来ない。
しかし、その分、電車の駅の隣には、心強いタクシー運転手さんたちがスタンバイされているようである。
暫くして、例の「何もねぇ~し~、、、」の「池谷駅」に到着し、運転手さんに本心からのお礼を伝え、「徳島駅」まで無事に戻ってきた。
車なしで徳島旅行を考えられている方は、本記事を参考に、公共交通機関の利便性についてだけは、事前に少し心の準備をされてはどうかと思う。
(私があまりにも無計画に、行き当たりばったりで、急に色んなところに行くからでもあるが)
徳島駅に戻った後は、すっかり疲れたので、のんびりと駅の周辺を散歩した。
では最後に、スリルある「実に長い徳島の1日」を闘い抜いた私と「すだちハイボール」で乾杯しよう!
今日の教訓。
「電車と女は追うな 。次のが、すぐ来る」(スペインだかオーストリアだかのことわざ)
「徳島の電車は追うな。タクシーがすぐ来る」(徳島のことわざ(嘘))