母の手づくり人形
私は人形が好きだ。
ただし、子供の頃はずっと人形が怖かった。
母は裁縫が得意だ。
私が小学生の頃、母が姉に手づくりの人形ヲプレゼントした。
その人形は姉の部屋に置かれたが、部屋の入口近くに置かれたその人形が、たまに私の目に入ることがあり、そのたびに私は怯えた。
これも私が小学生の頃、私はタヌキのキャラクターの壁掛けヲ姉にプレゼントしたことがあった。
その壁掛けも姉の部屋の入口近くに飾られた。
ある日、私は高熱ヲ出してうなされた。
そのとき、母の手づくり人形と壁掛けのタヌキが一緒に夢の中に出てきて、心配そうな顔で私ヲ看病してくれた。
その日から、その人形に少しずつ愛着ヲ感じるようになった。
やがて姉は成人し、実家ヲ出て行った。
荷物ヲ増やしたくなかったのであろう、母の手づくり人形とタヌキの壁掛けは、姉の部屋に残されたままだった。
ある日、私と私の両親は引っ越すこととなった。
母が姉の部屋ヲ整理し、不要となった物ヲ大量に捨てた。
そのときに手づくり人形ヲ見て、随分と古くなったものだと言い、人形ヲ一緒に捨てようとした。
その場に姉はいなかったが、私はその人形ヲ捨てないでほしいと母に頼んだ。
母は不思議そうな顔ヲしたけど、特に反対もしなかった。
その人形は未だに実家にいる。