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小説・ショートショート(つくり話)

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【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~第5話~

 『夢鳥の幽館』の主、鳥尾吊士(とりお つるし)は招待客たちの囁き声も気にしないかのように続けた。 「まず、皆さまに、この洋館について簡単にご紹介したいと思います。当館は、私の曾祖父が建てたものであり、代々我が一族が所有してきました。数多くの重要なイベントや会合が行われてきた歴史ある場所です。皆様にも、この特別な空間をお楽しみいただければと思います」  鳥尾は続いて、自分がいかに稀有な資産家であるかを仄めかすように「我が一族は、数世代にわたって様々な事業を展開し、幸いにも、大

【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~第4話~

クセツヨな主、登場!  14時50分になり、『夢鳥の幽館』の各部屋でひと息ついていた招待客たちは、パーティー開始の時間が近づいていることに気付いた。そのとき、洋館の召使がそれぞれの部屋を訪れ、「パーティーの開始時刻が近づいておりますので、これからご案内いたします」と丁寧に声をかけた。  招待客たちは召使の誘導に従い、廊下を進みながら一緒に洋館1階の大広間へと向かった。廊下を歩きながら、健太が召使に尋ねた。「さっき、外で何か有ったのですか?何だか、鳥が随分と騒がしかったようで

【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~第3話~

 澄み渡る青空の下、緑豊かな山々に囲まれた謎の洋館、『夢鳥の幽館』が陽の光を浴びている。そこに、ほかの一行より遅れ、招待客の最後の1組が現れた。  パタパタパタパタパタ~🐦🐦 「👀ピヲッ!🐦博士!大きな館が見えてきましたよ!あれじゃないでしょうか🐦ピヲピヲ🐦」とうろたえピンク鳥🐦助手が囀ると、戸惑いピンク鳥博士が「👀ピヲッ!ピンク鳥クン、間違いなさそうだね。ついに『夢鳥の幽館』に着いたようだね。思ったより遠かったね。ピヲピヲ🐦」と囀り返した。 「そうですね、遠かったですね。

【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~2話~

 召使の案内に従い、招待客たちはいったんそれぞれの部屋に案内され、各自の部屋でパーティー開始を待つこととなった。洋館の広大な廊下を進み、皆は一旦自分たちの部屋に落ち着くことにした。招待客たちの寝室は、すべて洋館の2階にあり、一箇所にかたまって配置されていた。  招待客たちが荷物を部屋に置くと、召使は全員を廊下に集め、パーティー開始となる15時前に呼びに来るので、少なくとも10分前には必ず部屋にいるようにと皆に伝えた。召使は立ち去る間際、「屋敷をお散歩されるのでしたら、あまり遠

【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~第1話~

【第1章 クセツヨな主】 洋館は、森の奥深くにひっそりと佇み、周囲を山々で囲まれていた。長い坂道を上って行くと、木々の間から徐々にその姿が現れる。洋館は古びた石造りで、ツタが絡まり、窓には重いカーテンが引かれている。まるで過去の出来事がそのまま時間を止めているかのような雰囲気である。  館の入口には大きな鉄の門があり、ところどころ錆び付いている。門の上には風化した文字で『夢鳥の幽館』と刻まれている。  庭には古びた彫像、噴水、温室などが点在し、不気味なほど静かな空間が広がって

【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~プロローグ~

【プロローグ】それぞれの反応 (武とミヤビの場合)武が仕事から帰宅し、ポストに挟まれたそれを見つけた。最初は何か分からず、無造作に食卓テーブルに置いていたが、ミヤビが夕食の準備を終えると、それを開いた。そして、興味深そうな表情を浮かべた。 (剛と真由美の場合) 剛はその夜、リビングでくつろいでいると、真由美が昼間受け取ったそれを話題に出した。剛はニヤリと笑って言った。「面白そうなことになりそうだ」。 (スミレとリナの場合) スミレとリナは夕方のリビングでお茶を楽しんでい

【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~あらすじとキャラクター紹介~

【物語の舞台】:『夢鳥の幽館』近日投稿予定!🐦乞うご期待🐦(👀ピヲッ!🐦 👀ピヲッ!🐦)

【逆さ吊りバード🐦受難記 - 2】 揺れる

 ここは郊外にある静かな公園。  今日は、天気のよい週末の昼下がり。  ついつい鼻歌なんか飛び出してきそうな長閑な雰囲気です。  ドナドナドナ~ドーナー~♪  ハチドリ🐦載せて~♫  おや?  どこからともなく、心地良い歌声が聞こえてきましたよ!  ドナドナドナ~ドーナー~♪  鳥カゴ揺れる~♫  何とも気分がウキウキする歌ですね💕  …………。   バード🐦も揺れる~♫ バード🐦「ピヲ~ッToT🐦 ハミングさぁ~んToT🐦 助けて~ToT🐦 ピヲピヲピヲ~To

【脚本】『イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)』(5)~最終幕~

【最終幕】(リカとケンジは、店内のテーブルを挟み、向かい合って座っている) リカ:「はい、ケンジさんにお渡ししたその花には、私の思い出が詰まっています。。。私の母はかつて、自然界に存在しない青いバラがとても好きでした。その中でも、淡い藤色から青紫色にかけての繊細なグラデーションが一際目を引く品種があり、ロマンチックな気分を引き立てる香り、そして、どことなく感傷的な雰囲気を纏ったその青いバラは、母の一番のお気に入りでした。母はいつからか患い始め、その頃から、その青いバラの話を頻

【脚本】『イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)』(3)

ケンジ:「花の不思議な力、、、ですか」 リカ:「私自身も花に囲まれて働いていると、元気が出てくるんです」 (リカが明るく微笑む) リカ:「『利花』っていう名前、祖母が付けてくれたんです。お花のように美しく、心を和ませる存在になってほしいという願いが込められているんですよ」 ケンジ:「そうそう、さっきリカさんの名札を見て、『あっ、名前に花が入ってる!』って、花との運命みたいなものを感じたんです。お婆さんが付けてくれた名前だったんですね。代々、リカさんの家系は、花にご縁があるのか

【脚本】『イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)』(2)

【第ニ幕】(リカとケンジはレジを挟み、リカが優しく微笑みながらバラを包んでいる) リカ:「それでは、このバラを特別なラッピングでお包みしますね! メッセージカードも無料でお付けしていますが(レジ台の下からカードを取り出す)」 ケンジ:「ありがとうございます。では、せっかくですから」 (ケンジがリカからカードとペンを受け取り、レジ台の上でカードに書き込む。リカはその間、クリップ留めされた書類を見ている) ケンジ:「メッセージ書きましたので、お願いします」 (リカがケンジから受け

【脚本】『イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)』(1)

《注:色々あって舞台用の『脚本』書きの練習をしています。脚本のスタイルに慣れるための練習投稿なので、話自体は非常に大げさ且つありきたりかもしませんが、ご容赦ください》 登場人物: リカ:花屋で働く女性。 ケンジ:客として花屋に入って来た男性。 場所:花屋 時間:午後遅く 【第一幕】(花屋の店内。新鮮な花々が並び、店内には花の香りが漂っている。店内は静かで、優しいジャズのBGMが流れている。リカが花のアレンジメントをしている。ケンジがドアを開けて店内に入って来る。BG

【対話体小説】『幻想的な星から』

「…ですから、私の作った幻想的な話など誰も興味がないのです。ねえ、あなた、どうか聞いていただけませんか?」 「まあ、そこまで言うのなら。ただし、幻想的というくらいですから、私が意味を理解できないくらいには荒唐無稽でないと困りますよ」 「チャンスをいただき、ありがとうございます。では、試してみます」 「いいでしょう。どうぞ」 「先週の金曜日の夜、絵本教室からの帰り道のことでした。青い空を見上げると、ペンギンのパレードが木管楽器の音色に合わせて踊っているのが見えたのです。彼らのリ

【身の毛も羽毛もよだつショートホラー】口裂け過ぎ女

(1,455文字)    季節は冬、3連休後の憂鬱な火曜日の夜、時刻は午後11時43分と54秒のタイミングで、アルバイト先から自宅に戻る立希(たつき)は背後に足音を聞いた。  コツコツコツコツ…………。  ひっそりと静まり返った住宅街、その足音の主を除き、周囲には人影もない。  思わず立ち止まり、何気なく振り返った立希の目に映ったのは、茶色のロングコートに身を纏い、黒のロングヘア―、口をマスクで覆った長身の女。  女は、立希の目の前まで来るとパタリと止まり、おもむろに「私……