【身の毛も羽毛もよだつショートホラー】口裂け過ぎ女
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季節は冬、3連休後の憂鬱な火曜日の夜、時刻は午後11時43分と54秒のタイミングで、アルバイト先から自宅に戻る立希(たつき)は背後に足音を聞いた。
コツコツコツコツ…………。
ひっそりと静まり返った住宅街、その足音の主を除き、周囲には人影もない。
思わず立ち止まり、何気なく振り返った立希の目に映ったのは、茶色のロングコートに身を纏い、黒のロングヘア―、口をマスクで覆った長身の女。
女は、立希の目の前まで来るとパタリと止まり、おもむろに「私……