私のおばあちゃん①
今年101歳になった私の祖母のことです。
祖母との思い出はたくさんあるので、とりあえず①としておこう。
祖母は堀の深い顔立ちで、昔からよく外国にルーツがあるのですかと聞かれたりしたそうで、なかなかの美人である。自分でもその自覚があるらしく、80歳になっても、90歳になっても、「美しくある」ことを意識していた。別にブランド品を身にまとうわけではないが、いつもうっすらと品の良い化粧をして髪を巻き、ときどき娘(私の母)とデパートに買い物に行ってシンプルでセンスの良い服を買う。母が高齢者向けの衣料品の売り場へ連れて行くと「こんなものは着ない」と言って見ようともせず、母が恥ずかしくなるほどの若い人向けの売り場へ行って流行の服を物色したらしい。
結局は買わないにしても、若い人のおしゃれな服を見るのが好きだったのだろう。デパートに買い物に行くこと、きれいなものを見たり、触れたりすることが好きだった。私にもペンダントやブローチをよく買ってきてくれた。
祖父が入院していた時期には、私はよく祖母の家へ行き、車で一緒に祖父の病院へ行った。祖母には孫が7人いて、女の子は私を含めて3人。当時は車を運転できるのは私だけだった。だから私は進んで祖母のドライバーを買って出た。
私が迎えに行くと、祖母は玄関に出てきて私の姿を上から下までチラと見る。さりげなく見ているつもりだっただろうが、私にはよく分かっていた。祖母はおしゃれが好きなのだ。身なりに気をつかう。孫が自分と一緒に夫の見舞いに行くのだから、適度におしゃれをしていてほしいのだ。
私はいつも、それなりに身ぎれいにして行くように心がけていた。
祖母は私を見ると満足して、いつも「そのスカート可愛いね」とか、「似合ってる」などと感想を言った。
だいたいいつものことで、「おばあちゃん、本当におしゃれに気をつかう人だなぁ」くらいにしか思っていなかったのだが、今でも妙に印象に残っているのは、私がピンクのパンプスを履いていた日のことだ。
普段、車を運転しやすいスニーカーやスリップオンシューズをはいていたのだが、少しヒールのあるピンクのパンプスを履いて、祖母を迎えに行った日のこと。自分でも気に入っていて、今でもあれはホントにかわいい靴だったと思っているのだが、玄関に出てきた祖母がいつもとはくらべものにならないほどのテンションで「まぁーーーー!!!かわいい!」と目を輝かせたのだ。病院に行く間も「その靴かわいいねぇ」と連発し、私もそんな靴を履きたいわと言っていた。
何がそんなに祖母の気に入ったのかわからないが、80歳を過ぎていた祖母は、洋服なら若い人のファッションを取り入れられても、さすがにハイヒールは履けないこともあり、「いいなぁ、履きたいなぁ」と、うっとりしたのではないだろうか。
今でもその時のおばあちゃんの表情は鮮明に覚えている。本当にかわいいものが好きで、いつまでもおしゃれをする気持ちを忘れないおばあちゃんのエピソードだ。
今は施設に入っていて、ときどきしか会えないけど、会いに行くときはおばあちゃんの好きそうな服を着て、靴にも気をつける。100歳を過ぎてもおばあちゃんはきれいで、私が行くと全身をチェックし、服や持ち物を何かしらほめてくれる。私に「きれい」だとか「可愛い」だとか言ってくれたときには、「おばあちゃんもきれいだよ」「おばあちゃんは全然100歳には見えない!」と全力でほめる。
そうするとおばあちゃんは、ものすごくうれしそうに笑う。笑ったおばあちゃんはまた、本当にかわいいのだ。