フランソワ=グザヴィエ・ロト/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団/河村尚子【concert review】
こんばんは。本日は久しぶりの雨でしたね。
こんな日にはモーツァルトのピアノ・ソナタ第6番K.284第3楽章が雨音とともにすとんと心に落ちてくる。モーツァルトの曲はmajorのものが圧倒的ですが、その機微と色幅の広さにうたれ…、本日のような日は雨粒のようにしか聴こえてこなくなります。内田光子さんの弾かれるこの曲が一押しです。
さて、今日も今日とてMCの一員である三浦よりコンサートレビューが到着したのでお届けしたいと思います。
こちらは音声でもレビューしておりますのであわせてお聴きください。
------------------------------
7月3日(日) フランソワ=グザヴィエ・ロト[指揮]
ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
河村尚子[ピアノ]
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K466
シューベルト:楽興の時第3番 op.94-3 (河村尚子 アンコール)
ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調《ロマンティック》WAB104(1874年第一稿)
最近の公演から
今、最も注目を集めている指揮者と言っても過言ではない、フランソワ=グザヴィエ・ロトが、現在音楽監督を務めている手兵のケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団と来日した。ケルン・ギュルツェニヒ管は初来日。
演目は、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番ニ短調k466(ソリストは河村尚子)とブルックナーの交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」である。
ブルックナーの交響曲第4番は、当日に配布されたプログラムを見て、「1874年第1稿」で演奏されると知る。あらためて演奏会のチラシを後で見たら、当たり前だがその旨がしっかりと記載されていた。
ブルックナーの交響曲の版のことは、正直言って自分ではほとんどわかってはいないしあまり知識もない。
しかしながら、演奏が進行していくにつれて、この「1874年第1稿」というのは、現在一般的に演奏されていて聴きなじんでいる第2稿とは著しく異なっているということがわかってきた。
まず第一楽章、主要な旋律など今までに聴きなじんでいるものであまり違和感は感じないが、どことなく違うなという印象。
第二楽章は、ん、今まで聴いてきたのとはかなり違うことがわかる。
第三楽章は、まったく聴いたことがなく、第二稿ではこの楽章全体が書き換えられている。
第四楽章も、大半の部分で第二稿とは異なっていることがわかる。
率直に言って、同じ交響曲第4番「ロマンティック」と言っても、後半は全く別の楽曲であるが、聴いていて非常に新鮮な印象を受けた(聴いたことないんで新鮮なのは当たり前ですよね)。
前回の、これまた手兵の「レ・シエクル」との来日公演で聴かせてくれたラヴェルの「ラ・ヴァルス」やストラヴィンスキーの「春の祭典」も鮮烈極まりない演奏だったが、今回の「ロマンティック」もそう。
新聞(6月23日の朝日新聞夕刊)のインタヴュー記事によると、そのアプローチは「作曲家の挑戦心、そしてその音楽に初めて触れた瞬間の聴衆の衝撃を『再現』する」というヴィジョンを貫くとのこと。
解釈においては、初稿を最も重視する。作曲家の中に最初の楽想が芽生えた、その瞬間の息吹を刻印しているからだそうである。
それが初稿で演奏することの理由であり信念である。
ブルックナーの全交響曲も初稿で録音するとのこと。
再来年の2024年は、アントン・ブルックナーの生誕200年に当たる記念の年である。
そのブルックナー・イヤーに向けて、ブルックナーの全交響曲の初稿での録音は着々と進行するであろうし、また、その年にぜひ実演も聴きたいものである。(レビュー:三浦)
------------------------------
アンコールで楽興の時を弾かれたとのこと、シューベルト・シリーズの狭間に期待を持たせる選曲ですね。私は河村尚子さんの演奏といえば、シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化芝居「幻想的情景」op.26 Finaleの演奏がとても好き。モーツァルトやシューベルトはさることながら、どの曲においても魂を感じる力強さが魅力と聴くたびに感じます。ぐっと客席の凝縮された小さめなホールでまたソロの演奏を聴きたくなりました。
※過去レビュー(podcast限定)
マタイ受難曲(公演2)
東京都交響楽団 第948回定期演奏会Aシリーズ
谷昂登リサイタル
新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 #641
亀井聖矢ピアノコンサート
アレクサンダー・ガジェヴ ピアノ・リサイタル
エマニュエル・パユ リサイタル
(文・構成:華)
クラシック・ウィルス 各PFからコンテンツをお楽しみください♪
PODCAST
YOUTUBE