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雑感

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本とか、本以外のいろいろなことについて。
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#エッセイ

『うんこかん字ドリル』をめぐって

 学校で話題になったらしく、娘から『うんこかん字ドリル』を買ってほしいとせがまれた。『うんこかん字ドリル』とは、数カ月前に発売されるや爆発的に売れた「全例文に『うんこ』を使った、まったく新しい漢字ドリル」で、「子どもが夢中になって勉強する!新学習指導要領対応」とのこと。  買わないぞ! だって、あれがうんこのたのしさのすべてだと思い込んでしまったら、子どもがかわいそうじゃないか。最初から「うんこ」と書かれたドリルの、どこにどんな魅力があるというのか。あらかじめ落書きが印刷さ

ビビアン・スー曰く「誰もみんな、君のようならいい」

 私がいわゆる〝多感な時期〟を過ごしていた1990年代のJポップ。なかでも街で、コンビニで、テレビで、ラジオでひっきりなしに流れるものだから覚えてしまったけれども、そう熱心に聴いていたわけではないからちゃんとは覚えていない曲たち。時を経てそういうのを聴くのは、なんかいい。といっても、そこで歌われている劇的な恋とか苦境とか運命とかにはちっとも感情を移せない。ただ当時は気づけず聞き流していた妙なフレーズとか、予想外に素晴らしい言葉とかを探し歩くのが楽しいのである(見つかるのはたい

物体を並べて文字列を作り、空白を想う

 先月末、下北沢ケージで開催された「TOKYO BOOK PARK vol.1」で活版印刷を体験。これが感動的だったので、いまさらながらざっと体験記を書いておこうと思います。  「TOKYO BOOK PARK vol.1」は、代々木八幡の古本屋リズム&ブックスさんの呼びかけで立ち上がったブックフェスの企画。10月末に第一回が開催され、もちろん我がクラリスブックスも本をたくさん売りました。古本屋だけでなく、雑貨やレコードなどのお店もブースを出していて楽しく、ぜひ恒例のイベン

「できるだけ純情でいたい」とのことーー岡村靖幸について

わかってよちょっと 勉強すりゃわかるよ(略)14回もしょげずに  このシンプルにして過剰な物言い。異様な数字の使い方。衝撃だった。アニメ『シティーハンター』のエンディング曲の中のフレーズである。曲名は「SUPER GIRL」、歌い手の名は岡村靖幸。 ■ 8時47分、授業はもう始まってる  少年時代に上記フレーズと出会って以降、私はずっと岡村靖幸のことが気になって気になってしかたなかった。いつもいつでも宿題みたいに気にしてた。なのにずっとまともに聞くことができなかったのは