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楽しんだもん勝ち -関西シティフィル76回定期レポ

いつものように、演奏会が終わった。
ただただ、楽しみたい一心だった。
もちろん、人間だから、いろいろある。
ゴギ先生も仰ってた。
「プロもアマも関係ない。人間が創り上げるものだから。」

今回の定期シーズンは、いろいろあった。
詳細は書かないが、人間関係と演奏技術というアマオケでは必ずといっていいほど起き得るテーマ。その両方でいろいろあった。
アマチュア音楽活動において私の考えの原点は、「残ったもん勝ち」というものだ。我々アマチュアは、音楽で飯を食っていないし、ただただ、楽しむために、やっている。だからこそ自由だし、お互いの自由が尊重されるべきだ。
「辞める」ことも自由、「残る」ことも自由。もちろんパートの制約で上限があるのはある。アマオケだとクラリネット100人は入れない。ともかく、その自由があり、お互いの自由が尊重されることで、成り立っている、と思う。
所属歴の長さや役割のあるなし、それも自由に「みんなで」決めていくものだ。だから、自分の時間や労力を少しずつみんなのために差し出して役割を分担するべきだし、「会話」を通じてお互いの「尊重」を深めていくべきだ。

「会話」をすると、その人の持っているバイアスを感じることがある。仕事でもよくあるのだが、その人の持つバイアスか強い人ほど、私は共感しやすい。オケに限っていうと、「アマオケやってる人にろくなヤツはいない」は言い過ぎかもしれないけども、自己顕示欲と自意識過剰の傾向は強い。バイアスかかりまくり。私ももちろん、その一人(じゃないとこんな文章書かない)。今度、アンサンブルという音楽を通じた会話についても、考えみたい。ノンヴァーバルコミュニケーションは成り立つ。

「尊重」については、私はまだ浅い。若いときは、他者への尊重という考え方は、できなかった。「他人の気持ちになる」という普通のようで普通でないことを、営業の仕事で鍛えられた。しかしまだまだ、本質的な理解が浅い。だから離婚もする。自分大好きだし、自己顕示欲強いし、ソロがどうだったかやっぱり気になるし、「ボクも褒めてよ」っていつも思っている。しかし、他者への尊重を少しでも考えるだけで、世界が広がる感覚がある。読書にも似た感覚。「人は、他者を通じて自分を認識する」と言ったのは誰だったか。その、不思議な感覚が、何だかさいきん心地良くなってきた。

会話を通じてお互いの尊重が深まれば深まるほど、共同体感覚が強まる。アマチュアオーケストラというのは、そのプロセスを、常に踏み続けている気がする。やはり、気持ち大事で、「あの子上手いけどなんか嫌いやし音合わんわ」的な話は、このプロセスが十分でないケースなのだろう。ここで、演奏技術の話。

今年から、レッスンに行き出した。何年振りか。インマークライナーを演奏するために韓国にいったのが2016年だったので、その時に名古屋でゆかりん先生に習った以来。やっぱり、レッスン重要。長年のこびりついた垢を、削り落としている。先生に褒められ、しばかれ、ショックを受け、ソワソワする。大先輩でスーパープレーヤーの玄宗哲先生ならではの、鬼レッスン(他の人には優しいらしいが)。いやでも、勝手にコッチで鬼に見えてるだけかもね。コワイけど。

8年振りの個人レッスンを受けてみて、いかに自分がダメかというのを、思い知らされる。上で書いた、「もっと褒めてよ」感がなくなっていく。ネガティブな側面は「オレなんてどうせ…」という卑下が出てくるが、一方でポジティブな側面として、「こうすればいいのか!」という手応えを感じるのだ。自分の実力の客観化というものを、手に取り始めつつある。もちろん、普段の練習でも録音録画でチェックはしているのだが、もっと根本的なところ、本質的な音楽への向き合い方。

あれあれ、書き出してみると全くもって定期演奏会のレポになっていない。ごめんなさい。気を取り直して。

東大阪市文化創造館DreamHouse大ホール。お初の会場ということで、勝手が違うのは想定していたが、無事に大きな問題もなく使わせていただいた。音が抜群に良いホール。ステージで演奏する側も演奏しやすいし、客席で聴いた感じもとても豊かな響き。お風呂感あり、音の方向性が出にくいか。高い天井の開放感と出来立てホールの清潔感は気持ちがいい。スタッフの方々のご苦労が気になった。現場大変。運営マニュアルが悪いのか、しわ寄せが現場に寄っている。詳しく書かないが、エラソウにするのが仕事じゃないと思う。また、77回でお世話になります。

白水先生とゴギ先生

新しい極上のホールでの演奏会に相応しく、華やかなベーメ作曲のトランペットコンチェルトを、白水大介先生をソリストに迎え演奏していただいた。ブラボー!いやマジで、お越しにならなかったトランペット吹きはホンマに損してる。私はこの極上のトランペットを、極上のホールで聴いて、腰を抜かした。純粋に、トランペットが上手い。上手すぎる。本番を客席で聴けなかったのは残念。白水先生とコンチェルトシリーズとかやりたい。アルチュニアン聴きたいし吹きたいな(もちろんクラリネットの方)、、、
ネタバレで書いていいのか先生に確認していないので後で消すかもしれないが、音色や技術が素晴らしいのは別として(これはもちろん超一級)一番すごいと思ったのは、前日当日ゲネ、そして本番への持って行き方。ウチのオケのことも良くご存知な上で、ピンポイントで詰めていく、ご自身の音と音楽を微調整していく、細やかさとプロセスの踏み方。その精緻でスマートなお姿に他のプロとは違う何かを感じた。アマチュア出身と公言されてもいるけれども、油断のさせ方というと言葉が悪いか、賢さが漏れていらっしゃる。決して感覚だけでない、感覚を理性でコントロールしている、それでいて心に訴える音楽を奏でる。めちゃくちゃ勉強になりました。ちょっと書き過ぎかな、白水先生、大丈夫ですよね?

トランペットが素晴らし過ぎて、他の曲が色褪せるかと思いきや、ワーグナーもシベリウスも面目躍如といったところ。ワーグナーは打ち上げでも多くの方が語っておられたように、前奏曲の初めからの集中力が素晴らしく、けだしお客様をバイロイトにお連れしたのではないか(!)。とくにオーボエ、クラリネット、トランペットの美音は聴き応えあった。ハーモニーがシンプルなのでズレると格好悪い音楽だが、大健闘だったと思う。私はバスクラで聖金曜日だけ乗り番。オーケストラサウンドが心地良過ぎて前奏曲で落ちそうになった(実話)。映像見るのが心配。
この曲だけのエキストラさんもいらした。演奏箇所マジ少ないのに!2曲だけのためにお願いした方々、本当にありがとうございました。またご一緒しましょう、近々。

そして、シベリウス。演奏始まるとき、なんかもったいないなと、思った。なんだろうあの感覚は。

シベリウス、大好きでベルグルンドの全集聴きまくってた。3番が好き。5番も好き。7番もちょっと好き。5番は好きなのになかなかプロオケでもやらない。その理由のひとつに、あまり「映えない感」があるのかも。漂う音楽というか、一歩間違えれば印象が薄くなる。その割に、弦楽器は刻みがめちゃくちゃ多いし、管楽器も目立って美味しいソロはあまりない。分かりにくい音楽ともいえる。演奏難易度の割に映えないから、あまり選ばれないのであろうか。

ヴィオラが、今回の殊勲賞だったと思う。clarinetist3D賞を、ヴィオラにあげたい(どこから目線やねん)。退団されるS氏がパートリーダーとして率いるのは今回が最後。その最後を華々しく盛り立てようとするような、気概を感じた。ヴィオラも御多分に洩れず刻みが多く、実は高齢の演奏者も多い中、S氏がよく引っ張ってくれましたし、メンバーもよく食らいついていらした。雛壇の上からその様子を拝見していて、込み上げるものがあった。団内発表会であったヴィオラパートだけのアンサンブルも思い起こされ、弾くのにまさに骨が折れるあの曲をしっかり演奏されていて、感動的。

もちろん、ソリストさんたちブラボー!ファゴットのビッグソロ、ホルンの大自然、ティンパニの輝き。フルートもオーボエも良かった。木管パートはデュオで繋ぐ箇所が多く、個性を活かしつつアンサンブルが難儀した。本番は何とかなったかな。

自身の演奏はどうだったか。改造中なので何ともいえないが、疲れなくなったように思う。今まで、何かしら余計な力が入っていたのかもしれない。本当に絶妙のタイミングでレッスンに行って良かった。もっと早くても良かった。
音も伸びてたと思うし、デュオもキレイにハマってたし、悪くない。2楽章に悩んだが、本番はゴギさんを信じて、みんなとゴギさんと一緒に、素直に楽しめた。ゴギさんの懐の大きさ。大きい音楽。感謝、感謝。

今回シベリウスで相棒だったG氏が演奏後、「こんなに楽しめた演奏会は久しぶりやわ」とのお言葉。なるほど。いろいろあったけど、私も楽しめたといえば楽しめた。よき仲間がいて、素晴らしい指導者がいて、どこかで楽しんでいる自分もいて。向いてないと思いながら、インスペクターの役割も担うことになった。重荷でないといえばウソになる。営業スマイルにほころびは出ないか。調子こいてはいませんが!

やっぱり、私も楽しかった。オケをやり続ける限り、楽しみ続けるしか、ない。せっかく貴重な時間を割いてるのだから。楽しんだもん勝ち。

ふと、誰と戦って勝つのだろうと、思った。自分かな。いや、誰かに勝つための話ではない。私は、表現として「楽しんだもん勝ち」を使う。別の考え方をされる方もいらっしゃるので、参考まで。

次はファミリーコンサート。スメタナのモルダウと、シューベルトの未完成と、チャイコフスキー交響曲第5番。私はチャイコフスキー交響曲のトップ初体験。楽しみな反面、みんながみんな知っているが故の怖さもある。ちゃんと吹けて当たり前の世界。コワイ練習しよう。

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