ウィーン・プラハ紀行 1日目 その3
(2019年4月5日)
マーラー 交響曲第9番ニ長調作品125
G.Mahler / Symphony No.9 D-dur Op.125
セミヨン・ビシュコフ指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
Semyon Bychkov / Czech Philharmonic
ルドルフィヌム(ドボルザーク・ホール)
Rudolfinum, Dvorak hall
演目と演奏家を書いて、「これ日本だったらいくらするんやろ?」とゲスな想像をしてしまいました。ちなみに、今年の秋にビシュコフ/チェコフィルの日本公演最低価格は文京シビックで6,000円。シンフォニーは10,000円。
私は150コルナ(約733円)の立見席でした。1ヶ月半前にネットで申し込む時点で座席は完売。恐らく、定期会員が沢山いるのでしょう。もうちょっと良い席でも良かったのですが、折角の骨太プログラム、このチャンスを逃す訳には行きません。
少しだけ仮眠をして余裕を持って行くつもりが、しっかり2時間以上寝てしまい、慌しくホールへ。途中ハブラシを買いました(持ってくるの忘れた)。
ホールは1100人ほどのキャパだそうですが、息を呑む美しさ。ベルリンのフィルハーモニーも美しいと思ったけれど、装飾美というか、音楽ホールにこれほどの美しさを感じたのは初めてのこと。プラハ中の老夫婦が集い、さながら社交場。ちなみに黒のスニーカーにジャケット、チノパンでしたが、少し恥ずかしくなりました(靴買おう)。同世代以下の若い人は少なかった。
演奏の前から満足してしまって、既に元を取った気分の中、オーケストラメンバーの入場。チェコフィルには思い入れがありまして、往年のクラリネット首席のルジーハ先生や、バボちゃん(失礼!)はじめとするアフラートゥスの響き(チェコの括りで)、そしてケイマル先生!!!管楽器ばかりで申し訳ないです。でも、好きなのですよ、あの独特な管の響きが。
ファゴットはアフラートゥスのロスコヴェクさんでした。あとフルートのトップに、スキンヘッドのアジア人が。名前を見ると、「さとうなおき」さん?ネットで調べても出てこない、、、
どうしても管楽器の音とかアンサンブルに耳が行きがちなので、弦の方々には申し訳ないのですが、偏った感想を。
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3年前に我がオケで演奏した記憶が生々しいマラ9。いろんな瞬間に思い出が蘇ります。マエストロ・ビシュコフはCDでしかお会いしてない方。若手と思ってたらもう67歳なんですね。昨年10月にチェコフィルのシェフになったばかり。
マエストロの音楽づくり。良く言えば爽快、悪く言えばアメリカン。オケが個性的なので、瞬間瞬間は面白いことも多いにありました。「ちょっとここはサラリと行きたいのになー」という瞬間に、オケがやりたいようにやる、みたいな。それがまた楽しく、スリリングで。2楽章後半でズレて崩壊するちょっと手前でサラリと進んで行くコントロールは鮮やかでした。個人的な好みからすると、4楽章などもう一声いただきたいけれど、これもまた良し。ロマンチックになりすぎず、メカニックになりすぎず。
オケの印象はシェフの影響もあってか、CDで聴いた往年の超個性はあまり感じず、むしろ洗練された中に従来からの個性があって、最近のトレンドにもマッチしているのかも。そんな中での俺的1位はトロンボーン!グイグイ来てました。「よっしゃー行ったるでぇ」感満載、それでいて破綻せず、かなり吹いてると思うんですけどオケの中でやっていい限界スレスレを狙ってやってる(たまに超えてる)。金管が素晴らしいです。本当に。ホルンのヴラベックさんもラッパのホフバウアーさんも、「この人ミスするのかい?」という安定感に加え、オケを包み込むブラスサウンドを惜しみなく聴かせて頂きました。
木管ではファゴットが一等賞!ロスコヴェクさん、めちゃめちゃ楽しそう。ファゴットセクションの方がクラリネットセクションより圧勝で聴こえてくるってこと、あります?それもクラ吹きの私に!
音響には詳しくないけど、好き嫌いはあって、フェスよりシンフォニーの方が好きだし、東京あんまり良く知らんけどサントリーより芸劇の方が好きな私からすると、「こんなホールがあるんか!!!」というぐらい、別次元でした。何でしょう、決して良席とは言えないホールの一番後ろの立見席で、こんなに全ての音が聴こえるとは。全ての音がトゥッティでもソロでもピアノからフォルテまで、美しく響きます。狭いのもあると思う。壁越しだからなのか、低音がズンズン来ます。ヘビメタ張りに。目の前で弾いてるんちゃうかいと思うぐらい、チェロとコントラバス、ホルンとトロンボーン・チューバ、ファゴットが聴こえるんです。コントラファゴットなんてめちゃめちゃ聴こえる。だからと言って、破綻しない。これは良いホールですわ。ホールが音楽を育む。
決して最高の名演!という訳ではありませんでしたが(ミスもチラホラ)、素晴らしい演奏。ドイツとは違う中欧の音楽文化の片鱗に触れさせて頂きました。ご馳走様でした。また来たいな。
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