観劇/ライブの満足度について。(#015)
観劇もライブも、ステージ上で起こる出来事を目当てに観客は訪れる。だが満足できるかという点で言えば、その限りではないようだ。観客は、どんなところから「満足」を感じるのか。私なりの考えを提示してみたい。
満足度係数的なやつの式
「いやぁ良かった!」と心の底から言えるライブ(あるいは観劇)とはどんなものか。簡単に言うと、次の式で出る答えがプラスであれば「満足」、プラスが大きければ大きいほど「満足度が高い」と言えるのではないだろうか。
展開すると、次のようになる。
提示しておきながらだが、そもそも体験は数値化できるものではなく、この式も数値を当てはめて計算するための式ではない。また、各項目の比率も人によって異なる。「ステージングが良ければ満足」という人もいるだろう。私の場合どうやら色んな要素が絡み合って満足度に反映されているらしい、ということから上記の概念にまとまってきたまでだ。
以下、各項目について簡単に補足する。
演者のパフォーマンス
・ステージ上のパフォーマンス(ステージングや公演内容)
・ステージ外のパフォーマンス(特典会など)
を含め、演者側から発されるものすべてを指す。
演劇においては、演技、演出、音照美のテクニカル面も含めた「作品のクオリティ」全般を指す。
運営状態
「いつどこで誰が何をどう仕切るか」という、「(ハコ側ではなく)演者側のスタッフ」による運営状態・手際を指す。具体的には時間管理、接客対応、列整理、動線設計、人員配置、物販手法、メニュー展開、レギュレーション、撮影、広報など、演者以外の管轄において可変的なものほぼすべて。快適性・ストレス感を左右する要素。
物理環境
主にハコ側に起因する、物理的に変更不可能な要素を指す。具体的には立地、営業時間、ステージの高さ、フロアの形状、モニターの有無をはじめ、偶発的には客の位置取りによるステージの見やすさ、近くの客との相性なども含んでよいだろう。コロナ禍での各種制約は運営サイドの独断で決められない部分もあるので、これも含める。
期待値
「演者のパフォーマンス」「運営状態」「物理環境」それぞれに掛かる、「期待に対してどうだったか」を表す部分。「期待値」そのものというより「期待係数」と言った方がいいかもしれない。
例えば同じパフォーマンスでも、「思ってたほどじゃないな…」なら×0.8、「予想してたより良かったぞ!」なら×1.2などで満足感が増減する。
「期待以上か以下か」のみならず「期待した方向性か」というコンセプチュアルな部分が介在するのが、一筋縄にはいかないところ。
推しブースト
オタク特有の要素である、いわゆる「今日も推しがかわいかった!」というボーナスポイント。シンプルにプラスされる。
タイミング
他の要素の合計に対して掛け算される、タイミング要素。演者側のドラマとしてのタイミングと、客側の日常からみたタイミングとがある。個人的に苦しい時に観て救われる場合もあれば、苦しい時だからこそ一層ネガティブな受け止めになる場合もあり、どう転ぶかは一概に言えない。
〈現場〉を構成する4者
この式がライブ(あるいは観劇)の現場を構成する4セクションそれぞれに対して働き、その結果が「満足度」「後味」になる。気がする。
演者
「演者のパフォーマンス」「推しブースト」「タイミング」に反映される。また、演者のパフォーマンスが良ければ多少は目を瞑れたり、逆に演者が良いほど運営の不手際が目立ってしまうこともあるため、「運営状態」にも作用する場合がある。容姿や日頃のSNSなどから「期待値」への影響も大きい。
観客
マナーが悪い客への対応や、他の客経由で入ってくる情報で見方が変わることもあることから「運営状態」に反映される。また、周囲の客との相性が自分では変えられない要素になることから「物理環境」への作用も大きい。クチコミは「期待値」にも影響する。
ハコ
ライブハウス/劇場のこと。主に「物理環境」、ハコの制約やスタッフの接客次第で「運営状態」にも反映される。また形状や設備次第でライブ・演劇とも演出に影響が出ることから「演者のパフォーマンス」にも作用する。
運営
「運営状態」に反映されるほか日頃の運営体制は「演者のパフォーマンス」にも影響し、コロナ禍においては「物理環境」にも作用する。また「期待値」は広報などの事前情報やスタッフ陣を見て形成されることから、運営による部分が大きい。
満足感と後味の例
・作品は良かったが、周辺客のマナーが悪かった
観劇界隈でよく見るパターンだ。劇場は基本的に固定席のため、隣席ガチャ要素がある。この不確定因子を最小化するために、連番でチケットを買い、布教がてら知人を連れて行くことがある。
また、前後関係も重要だ。映画館だと背もたれが高いため影響しづらいが、劇場で前の客が前のめりな姿勢を取っていると、後頭部で舞台上が見えなくなる場合がある。劇場や公演者はトラブル予防の観点から「背もたれにもたれるのが観劇マナー」と豆知識的事前周知に努めている。
・演者は良かったが、周辺客の巻き添えを喰らった
ライブハウスでよくあるパターン。ツーステで足を踏まれたり、モッシュやリフトで突進される、サーフで顔面を蹴られる、など。起こることは仕方ないとして、その後の対応を含めて不快感が残った場合、ステージングの良さを帳消しにしてしまう場合がある。下記noteにて少し触れている。
・作品や演者のパフォーマンスはそこまで良くなかったが、スタッフの対応がとても良かった
(随時追記)