中高生にキャリア教育をしようにも、世の中にどんな職業が存在するのか大人もよく分かっていないんじゃないか。
どうも。医薬品関連の研究開発職で岐阜に移住し、まもなく5年目に突入する、くらどに屋です。
移住者のコミュニティに出入りするうちに同年代の仲間が増え、地元の中高生と対話する機会もいただけるようになってきました。
私が住む地域の中学・高校では、キャリア教育-将来どのように生き、どんな職業に就きたいかを考える学習-に注力しているようです。
その一環で、地域の社会人から進路選択や職業についての経験談を聞き、進路について相談してみるというイベントが、課外活動として取り入れられています。そのような活動に参加して中高生と対話していると、将来のことを真剣に考えている様子が伝わってきました。
ただ一方で、「世の中にどんな職業が存在するのか、大人もじつはよく分かっていない」という事実が見えてきて、大人世代でも横・ナナメの繋がりを開拓していかないと視野狭窄になりかねないな、とも感じています。
社会人になってから分かる選択肢の多さ
ある高校生との座談会は、同地域に住む同年代の大人どうしの交流会としても盛り上がりました。初対面の方が大半だったのですが、私が住んでいるような地方都市でさえ、予想していなかったほど多くの職業があったのだと気付かされました。
地域おこし協力隊として赴任し、コミュニティ運営などに取り組む人。
独立してwebマーケティングを仕事にしている人。
副業で中小企業のICT導入を支援しているプログラマ。
会社員を辞めて新規就農した人。
大手企業から地方自治体に出向し、その後起業した人。
私も割とマイナーな進路を歩んできた部類だと思っていましたが、身近な場所に同年代の猛者がこれほどいたのかと、視野が広がりました。地方都市でも、こんな多様な働き方があったのか、と。
会社と自宅の往復生活では、自分と異なる働き方をしている人たちと接する機会ってあまりありません。だから、本業と関係ないコミュニティに飛び込んでいかないと、「こういう働き方もあるのか」という気づきって得られないんですよね。
高校生の時に、今の自分を想像できたか?
キャリア教育の企画で高校生と談話していると、進路選択や受験についてよく相談されます。その都度考えて話してはいますが、正直、私自身そこまで進路を真剣に考えていたわけではなかったので、心苦しいところがありました。
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私の場合、小中学校では幸い勉強に困ることはなく、理系科目が好きだったので、「行けるとこまで行ってみよう。あわよくば大学の研究者に」くらいの気持ちで大学に進みました。
ところがどっこい、本気で研究者目指して大学来る人たちというのは、専門家顔負けの突き抜けた得意分野を既に持っており、高校時代からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)みたいな所で論文に載せるような実験に参加したりしていたわけです。その上で普通に受験して受かってくるような人たちに遭遇すると、地方都市で井の中の蛙だった私なんぞは速攻で戦意喪失しました。
アカデミアの世界は論文の質・量で明暗が分かれてしまい、雇用の保証なんてものもありません。まして私の進んだ農学・生物学系は、大学のポストに対して学生も研究員も供給過多気味だったので、ここで競争して生き残る道にベットする踏ん切りがつかなかったのです。
それでも農学や生物学への未練があったので、別の生存戦略を考えたところ、「安定した収入源を確保したうえで、副業や趣味で専門性を活かそう」という方針に一旦落ち着きました。
で、某就活プラットフォームに登録したところ、最初に内定が出たのが現在の職場でした。医薬品関連で実験できるし、生物学や農学の専門性も伸ばせるし、田舎で週末農業できるし、まあいいんじゃないかという発想です。
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私の進路選択がこんな感じだったので、「親が看護師なので、私も看護師になろうと思っています!そのために看護学校を目指します!」という逆算思考が既にできている高校生が、凄く眩しくて逞しく、立派に見えるくらいです。
(逆算思考で進路を考えると、他の選択肢が見えなくなるので軌道修正しにくいというデメリットもありますが・・・。)
まさか民間で研究開発しながら週末農業とライターやって、株式投資でセコセコ稼いでるなんて、高校生の頃の私は全く想像していませんでしたから。
大人世代の分断は、中高生の進路選択にも影響?
社会人になってから、世の中の職業が実に多様であることに気づく。自分自身も、中高生の時には思ってもいなかったような職業に就いている。そのような大人は私だけではないと思います。
要は、中高生へのキャリア教育以前に、世の中にどんな職業が存在するのか大人もじつはよく分かっていませんし、大人も想定外の進路を歩んできたものです。
まして今の子供たちの大半は、今存在しない職業に就くことになるだろう、とも言われています。もはや、大人の個人的な経験論だけで進路相談に乗る方が難しいのかもしれません。
じゃあどうすればいいのか、という疑問への答えを私はまだ持ち合わせていませんが、中高生が親や教師以外の大人と対話する機会は確実に必要だと感じています。そのためには、大人世代が横・ナナメの人間関係を開拓してゆくことが下地として重要だと思います。
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リアルな話をすると、高校生のキャリア教育みたいなイベント事に積極的に出て来る大人って、ほとんどが移住者かUターン組なんです。
イベントをSNSで告知したりオンライン開催したりしても、結局「IT機器を使い慣れていて、新しいコミュニティに入って行くのにあまり抵抗がない人」に参加者が偏ってしまう。その多くは、都市生活や移住経験で場数を踏んできたような人達です。
その一方で、ずっと地元にいる、いわゆるマイルドヤンキー的な人達との間に、なんとなく分断があるんじゃないかと懸念しています。
もしそのような大人世代の分断が実際にあるのだとすると、移住者やUターン者が身近にいない環境で育った中高生は、「地元を離れる」「新しい街やコミュニティに飛び込む」という経験をした大人から、リアルな体験談をほとんど聞けないまま進路選択を迫られることになります。
たとえば「割と勉強できる方だと思ってたけど、都市部の大学行ったら上には上がいたし、そもそも研究と勉強って別物だと気付かされたんだよね。海外インターンにも行ったけど、全く通用しなくて自信なくしたわ。」みたいな体験談を、生で聞けないわけです。
大人世代の分断が、中高生の情報格差に繋がり、進路選択の選択肢の質・量に差ができてしまう。
根が深い課題ですが、「親・教師以外の大人と対話するイベント」を通して、大人どうしの横・ナナメの人間関係も開拓されてゆくことが、分断解消の糸口になってほしいと期待しています。Uターン者がハブになることで地元勢も巻き込み、大人にとっても「こんな働き方があったのか」という新鮮味が得られる。そのような場を地方でも増やすため、引き続き協力していきたいです。
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