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ファンタスティック
クリスマス。
いつものクリスマス。
家族でパーティー。
俺はサンタのコスプレをして、ジェームス・ブラウンのクリスマス・アルバムを大音量で流し、段ボールで作ったヌンチャクを手に、いつもはしない大暴れをカマす。
息子達が笑い転げる姿を見ると、気分がいい。
これが正しい現代の父親の姿だと思っている。
今年は嬉しい事に、息子達の方から「ファンタスティック・ミスターフォックスが観たい」と言ってきた。
なぜかクリスマス・イブにこの映画を観るのが、我が家の恒例行事になっている。
昔は正月になると必ず「猿の惑星」がテレビで放送されていたし、クリスマスには「ダイ・ハード」が放送されていた気がする。ああいった、ガキが映画にハマるきっかけとなる古き良き恒例行事を、自分で作り出しているのかもしれないな。淀川的とか水野的なヤツね。
しかし、ミスターフォックスは何回見ても面白いぜ。
「ねえ、なんでこの映画の主人公ってキツネなの?」
「お、いい質問だ。それはな、キツネってのは絶対に人間に飼い慣らされない動物なんだよ。ヤツラは野生で生き抜く道を選んだ生粋の野生動物なんだよ。この映画に出てくるモグラもフクロネズミもアナグマも、み〜んな人間のペットにはならないヤツラだ。絶対に人間になびいたりしない。いわば、みんな反体制なんだよ。パンクなんだよ。で、最後にオオカミが出てくるじゃん。オオカミってのは、人間に飼い慣らされない動物の象徴みたいなもんで、いわば野生動物達のゴッド・ファーザーだな。だけど、いまや絶滅危惧種でもある。そんなオオカミが、キツネ達が人間に勝利した後の凱旋中に出てきたんで、キツネ達はグッときちゃってるんだよな」
「へ〜。父さんの説明よくわかんないけど、なんだか凄いね」
「それ大事。よくわかんないけど凄いって感覚は、今後も大事にしろ」
説明していて、俺まで熱くなっちまったな。
さあ、子供たちもようやく寝た事だし、そろそろサッカーソックスの中にド派手な包装のプレゼントを入れようかね。