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【無料オンラインセミナー】第4回「子どもの目線から見た世界」〜作品創作のプロセスを通して〜
Creative Kids Academyが開催してきた、全4回の無料オンラインセミナー。
これまでのレポートは、こちらの記事をご覧ください。
今回は最後となる第4回目、「子どもの目線から見た世界」〜作品創作のプロセスを通して〜をテーマにお届けしました。
ファシリテートするのは、Creative Kids Academyの共同代表である松本武士。ロンドン在住で、ダンサー・ダンスセラピストとしての経験を生かし、児童劇の創作を行なっています。今回は、世界ツアーで出会ったアーティストたちの作品紹介も交えながら、「子どもの目線から見た世界」について考えます。
イギリスでの児童劇の創作について
イギリスで作品創作を行う中で、子どもとの関わり方や、その声に対する耳の傾け方には、面白い発見がたくさんありました。
もともと伝統的な作品づくりというのは、アーティストのアイディアで全てつくるもの。たとえば、ダンス作品であればダンサーが振付し、それを観客に見せるというような形でした。ですがその風潮は、ここ10年20年で変わってきています。最近では、いかに子どもたちを作品創作のコラボレーターとして交え、一緒につくるのかということも着目されています。
僕はアーティストとして現場に行く時には、自分のアイディアがあったら、それを半分にして子どもたちと関わるようにしています。そして残り半分は空白にして、子どもたちが埋めていく。そのプロセスの中で、化学反応を起こすというイメージです。子どもたちから学び、一緒につくっていくという姿勢を心がけています。
そしてこの姿勢は、パンデミック中に出会った、ほかのアーティストと子どもとの関わり方も大きなヒントになっています。
アート教育について
アート教育の普及に関しては、日本だけでなく、イギリスでも課題を感じています。というのも、現在のイギリスの保守的な政策を見ていると、経済を立て直すことが中心の教育となっているように見受けられるからです。ですから、数学やビジネスに関する科目ばかりが重視され、アートやクリエイティビティが疎かになっているように思います。
イギリスは”個が強い”というイメージがあるかもしれませんが、そのような教育も、幼稚園の時期までで終わってしまう印象です。実際にワークショップで小学校へ行った時にも、子どもたちが自由に表現したり、やりたいことをやるというような雰囲気があまりないように感じました。
アート教育の側面には、感情と身体の関係もあります。たとえば、「嬉しい」と感じたら、胸がワクワクしたり、足をバタバタさせたり。感じたことや気持ち、思考がどのように身体に還元されていくのか。そこにはすごく個性が見えてきます。そして、身体の反応を通してわかる、自覚するということもアート教育のひとつだと考えています。
逆に、「苦しい」あるいは「悲しい」といった体験をした時に、その表現の仕方や、自分の身体がどう感じているのかがわからなかったとします。すると、ネガティブな感情の檻や枠に入ってしまうということもあります。そういう時にも、身体を動かしてあげて、感情を外に出していくツールがわかっていることはとてもいいです。
僕はこれまでダンスセラピストとして、鬱などの精神的な疾患から、感情と身体、そしてクリエイティビティのつながりがなくなる現場も見てきました。ですから、<アート教育>とは、単にアートのための教育ではなくて、行為そのものが、メンタルヘルスにも影響してくるのではないかと深刻に捉えています。
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<児童劇>とは?
舞台芸術:演劇、人形劇、影絵、あらゆる種類の演奏、ダンス、手品、パントマイム
<児童劇作品の創作プロセス>とは?
テーマや時事問題、子どもを取り巻く課題などから始まる創作。子どもが創作過程の中で協働作業をする作り方。
僕は個人的には、前衛的なものや、意味のわからないものが好きです。子どもと深く関わっていると、大人では考えつかない発言や、意味のわからない行動、あるいは曖昧なものを投げかけてくれることがあります。ですがそうした題材もまた、”子どもが使う言語”のひとつなのではないかと思います。
作品創作におけるプロセスも、100人のアーティストがいれば、100通りあります。その中で、子どもと協働作業するやり方が僕のやり方です。また僕だけでなく、先にも言った通り、このようなプロセスを大切にしているアーティストたちにも、パンデミック中に出会うことができました。
作品紹介
ここからは、実際に創作した作品と、ダンサーとして出演している作品の2つをご紹介します。
「Club Origami」by Takeshi Matsumoto
子どもたちのオリガミから生まれるダンス作品。
対象年齢:5歳以下
児童劇の世界では西洋アーティストが多い中、日本あるいはアジアの文化から始まる作品をつくりたいという思いをきっかけに、折り紙を題材に創作しました。
また、折り紙は平面が立体になるのに対し、ダンスは立体の有機的なアートです。パンデミック中は、人との繋がりが平面だったことも意識しています。
そして、ダンスが好きな子もいれば、音楽が好きな子、工作が好きな子と、いろいろな子どもたちがいます。だからこそ、多方面にアクセスできるよう、ダンス・生演奏・感覚的な遊びの3つの要素を取り入れたいと考えました。
創作中には、イギリス東部のノリッジにある幼稚園・小学校を3校を訪ねました。そこでは言葉でのコミュニケーションは一切なく、いきなり折るところから始めてみました。すると、だんだん子どもたちが集まってきて、僕たちの真似をしたり、自由に遊んだり、飾ったり、床に線で並べたり。
初めは「折り紙=折る」ということを思い描いていましたが、破ったり、口に入れたりする子がいたのには驚きました。それと同時に、子どもたちが紙とどう関わるのか。折る、破る、ぐしゃぐしゃにする…というのもまた、子どもたちの”紙の言語”なのだと感じました。
そして作品の中では、動物をつくったら、ダンサーがその動きをしたり。最後はビリビリにして、紙のプールで遊んだりしながら展開していきます。この「Club Origami」は、ありがたいことに2024年まで世界各国で上演することが決まっています。
僕の作品は、常に未完成です。ですから、ちがう文化の子どもたちと関わる中で、作品も少しずつ変化・進化していくのも興味深いです。作品をつくったら終わりではなく、子どもたちに見せることでどのように変化していくのかも、児童劇の魅力だと思っています。
「We Touch, We Play, We Dance」 by 2nd Hand Dance(イギリス)
イギリスのNo touch policyという、一部の学校で実施されている子どもに大人たちがふれてはいけないルールに対し、ふれることの大切さを投げかけた作品。
対象年齢:0〜18ヶ月 / 18ヶ月〜3歳
この作品は、子どものための病院を訪問し、上演させてもらう機会もありました。大きな病気を抱えた子や、手術をしてまだ数日後の子どものいる環境でのパフォーマンスは、こちら側の感情が強く揺さぶられる経験にもなりました。
ダンサーにふれられることで、ふっと眠りについていく子がいたり、リラックスしていたり。改めて人とのふれあいについても、僕自身が考えさせられる体験でした。
ここからは、僕が知り合ったアーティストたちの作品を紹介します。
PULSAR by Teatro al Vacio(アルゼンチン・メキシコ)
流動的な積み木の世界。
対象年齢:0〜3歳
World Images by Theatre Madam Bach(デンマーク)
私たちの住む世界のあらゆるものから感覚に訴えかける作品。
対象年齢:2〜6歳
Oogly Boogly by National Royal Theatre(イギリス)
赤ちゃんがダンスのリーダーになる作品。
対象年齢:0歳〜18ヶ月
彼らの作品には、子どもが思わずやってみたくなるような動きや、風が吹いたら「気持ちいいな」というような、素朴でシンプルな感覚がたくさんあります。一般的に子どもの作品には、飽きさせないように笑いが必要ともされています。ですが、こうした素晴らしい作品を見ていると、大人が作り込むような大きなドラマは、実はいらないのではないかと感じさせられます。
ディスカッション「子どもの目線から見た世界」
それは、どのようなものなのでしょうか?僕は、子どもに寄り添い、子どもの特有の”言語”を知り、対話することで見えてくるのではないかと考えています。
ディスカッション①
「みなさんの子どもは、どんな”言語”を通して世界を見つけ、出会っていますか?」
子どもの発言、行動をシェアしてみましょう。
参加者より一例:
・飛行機の中で聞こえた音を、オリジナルソングにして歌っていた。
→感じ取った音を、歌に変換して表現していた姿。
ディスカッション②
「みなさんは子どもの頃、どんな”言語”を使っていましたか?」
色、触覚、感覚、どんなツールがあるでしょうか。
参加者より一例:
・話すのが苦手な分、絵で表現していた。
・歌いながら身体が揺れていた。
→表現は必ずしも言葉ではないこと。声と身体など、同時に表現されていくこと。
Creative Kids Academyとして初めて、参加者の方とのディスカッションを中心にお届けしてきた全4回のオンラインセミナー。子育てをしている方に限らず、子どもに関わる大人のみなさんとの時間は、新しい発見がたくさんある貴重な機会となりました。今後も、みなさんからのトピックのリクエストも随時お待ちしております!
松本武士の世界ツアー、そして子ども心にまつわるエピソードは、こちらのポッドキャストからもお聴きいただけます。ぜひご試聴ください!