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脳神経科学による食の好き嫌い解明 東京大学のムーンショット研究
東京大学が取り組んでいる「食の嗜好を脳神経の働きから解明し、好き嫌いをなくすことを目指した研究」について詳しく解説します。
研究の目的
東京大学の研究は、食の好き嫌いをマウスで再現し、脳神経の回路がどのように機能しているかを分析することで、好き嫌いをなくすことを目的としています。研究チームは、人間でも同様の研究を進め、脳科学的な手法で苦痛なく好き嫌いをなくしたり、摂食障害への対策を見いだしたりすることを目指しています。
ムーンショット型研究開発事業への採択
この研究は、政府の大型プロジェクト「ムーンショット型研究開発事業」に採択されました。プロジェクトマネジャーを務める東大農学部の喜田聡教授は、脳の記憶領域に関する専門家であり、従来、食の好き嫌いは主に心理学の面から研究されてきたため、「脳神経科学によるアプローチは珍しい」と語っています。
認知調節という仮説
研究の着眼点は、食の経験という「記憶」が深く関わるという仮説です。認知調節と呼ばれる行動には、見た目やにおいにつられる「衝動食い」や、満腹でも残りを食べきろうとする行動、ストレス解消のための食事などがあり、これらは摂食障害を引き起こすこともあるとされています。研究では、まずは認知調節に関連する脳の神経回路を特定することが目的です。
米国の研究結果
15〜21年に公開された米国の研究では、甘い物を食べると快感を感じ、苦い物を食べると不快に感じる神経回路が扁桃体や島皮質という脳の領域で見つかったとされています。東京大学の研究チームは、このような神経回路を参考にしながら、マウスの行動や脳活動を調べ、食の好き嫌いをコントロールするためのメカニズムを解明することを目指しています。
具体的な研究内容
東京大学の研究チームは、マウスに甘い水と苦い水を与えて、好みの違いを調べています。その後、脳活動を計測しながら、どのような神経回路が働いているかを解析します。また、マウスに食事制限をかけたり、特定の神経回路を刺激することで、好き嫌いを変えることができるのかも調べています。最終的には、これらの結果を基に、人間の食の好き嫌いを改善するための新しいアプローチを開発することが目標とされています。
今後の展開
東京大学の研究チームは、2023年度までに、マウスを用いた研究を進めた後、人間に応用するための研究を開始する予定です。この研究成果が実用化されれば、食の好き嫌いによる栄養バランスの偏りや、摂食障害などの問題を解決することが期待されます。