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来週の相場見通し(9/27~10/1)

来週は、いよいよ自民党総裁選が行われる。第100代総理が誕生し、新たな内閣の顔ぶれもすぐに決まる。その後は臨時国会の召集、そして総選挙へと焦点はシフトしていく。今回は、日本の新たなスタートを期待して、「日の出」の写真を掲載した。

 さて、市場では中国恒大グループのデフォルト懸念を理由に、一時急速にリスクオフの展開となり、欧米株価も調整色を強める展開となった。但し、それでも米国株の調整は4%程度の下落で終わってしまい、相変わらずS&P500は2月以降、5%超の調整すらない堅調な展開が継続している。今回の恒大グループの問題は、中国を取り巻く様々な問題の氷山の一角ではあるものの、本件が世界のリスク資産に深刻な影響を及ぼす懸念は極めて低い。中国経済において不動産セクターは15%程度を占めることや、従来から不動産バブルが指摘されてきたため、市場は「中国バブルがいよいよ崩壊」のような警戒感が高まりやすいが、そもそも中国恒大グループの資金繰りが苦しくなったのは、昨年の8月に政府が3つのレッドラインを引いて、不動産融資の抑制を図ったことによるものだ。言い換えれば、政府が意図を持って進めてきたものであり、アンダーコントロール下にあるということだ。ちなみに、中国のメディアでは、この恒大グループについて、ほとんど報じられていない。私は、チャイナ・ネットというサイトで中国の日々の情報を欠かさず見ているが、ここにも恒大問題は、全然出てこないのが面白い。マーケットで「○○ショック」が発生する際は、市場にとって不意打ち的な突発的なニュースが引き金となる。そのインパクトを、価格に織り込むまでに時間がかかるし、情報不足等により、過大に価格に織り込まれるため、パニックが生じるわけだ。しかし、この中国恒大の株価急落は、1年前から継続してきたほか、既に格付けもデフォルト水準まで引き下げられている。すなわち、完全に織り込まれている問題の再確認に過ぎないのだ。過去1年を振り返っても、恒大の株価下落や社債スプレッドの拡大は、全く欧米株に波及してこなかった。現在、急に騒がれているのは、中国政府がここもとITプラットフォーマーへの規制や、不動産、教育、芸能まで幅広く民間への規制を強めていることに対して、そもそもチャイナリスクが意識されてきたことが大きい。更に「共同富裕」という最近の習近平政権のキーワードが、どうも必要以上に強調されて誤解されながら、使われていることも関係している気がする。そういう中で、恒大グループの社債の利払い日が相次ぐことから、いよいよデフォルトするのでは?という警戒モードになっているのである。しかし、中国政府はそもそも既にここ最近はデフォルトを容認する姿勢を強めている。今年の上半期に発生したデフォルトは、過去最高に達している。その中には国有企業も含まれており、中国政府はモラルハザードを回避し、潰れるべき企業は救済しないという、本来は市場が好感する正しい判断をしているのである。恒大グループの突然のデフォルトでも、中国の社会や市場が混乱しないなら、そのまま破綻させるであろうし、影響が出るようなら「時間をかけて」、バランスシートを縮小させたうえで、破綻させるだけのことだろう。パウエルFRB議長がいみじくも指摘したように、中国の固有の問題なのだ。ちなみに、中国全体のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)も50bp以下で安定しており、市場はシステミックリスクへの拡大を懸念していない。23日のドル建て債の利払いは行われていないが、これは30日間の猶予がある。過去にも中国企業は猶予期間内ぎりぎりに支払う例は何度もあるため、今回も支払われると思われる。何故なら、中国の国内問題とはいえ、タイミング的に中国政府にとっても、10月以降はG20、COP26や六中全会等の政治イベントが継続するなか、ちょっと格好悪いからだ。但し、中国政府の基本姿勢は、時間をかけて、恒大集団の規模を縮小させ、最終的には破綻させる公算が高いと思われる。


次にFOMCだ。今回のFOMCでは、テーパリングは11月の会合で決定、来年の半ばにはテーパリングも終了との可能性が高まった。マーケットは不透明要因を嫌うが、今回の会合により、テーパリングの開始時期と終了時期に対する不透明感が消えたことで、株式市場は好感している。現在FRBは月額1,200億ドルの債券を購入しているが、これを11月以降、毎回150億ドルずつ減らしていき、8カ月ほどでテーパリングを完了するというのが、目下のメインシナリオだ。これは、2014年に10カ月かけて行われたテーパリングよりも、短期間でかつより大幅に債券購入を減らすペースであることになるが、米国では国債発行がこの時期に大きく減少する見通しであるため、需給的にはほとんど問題ないと見積もられている。今年の経済見通しについては、GDPが6月時点の7.0%から5.9%に引き下げられた。失業率についても前回の4.5%から4.8%にネガティブな修正がされた。一方でインフレ指標であるコアPCEは前回の3.0%から3.7%に引き上げられた。利上げ見通しについては、18名のメンバー中の9名が22年の利上げ開始を見込んでいるが、これは6月のFOMC時点から2名増加したことになる。今回から公表された注目の24年金利見通しは中央値で1.75%となった。これは23年に3回、24年にも3回の利上げが行われるペースである。FOMCの発表後には、金利はフラットニングして低下したが、その翌日からは利上げ見通しに沿うように、金利は上昇し、米長期金利は久しぶりに1.45%台へと上昇している。こうした金利上昇の中でも、米国株式市場は恒大グループ問題で小幅な調整をした後であることから、比較的堅調な動きを維持している。米金利上昇に敏感なナスダック市場なども、安定した動きの範囲内である。但し、名目金利が上昇する中でも、期待インフレ率は伸び悩んでいることから、実質金利が急上昇している点はリスク要因だ。過去のケースでは、短期間で実質金利が60bp程度上昇すると、米国株式市場は調整局面を迎えている。現在は▲1.15%くらいから、▲85bpくらいに切り上がっている。期待インフレ率が上がらず、米長期金利が1.7%台まで上昇すると、株式市場は調整局面となる可能性が高い。但し、私は2つの理由から楽観視している。それは、米中経済の勢いが鈍化しているなか、米長期金利が1.7%台まで上昇するのは不可能ではないにしても、相応の時間を要すると思われることだ。ゆっくりとした金利上昇には、株式市場は耐性がある。もう一つは、10月中旬から米国で第三四半期の決算発表が出てくることだ。現在、S&P500企業は売上で14%弱の伸び、収期益で29.5%もの増益が見込まれている。そして、この見通しはずっと引き上げられてきた。実際の決算発表で予想を上回れば、これだけの企業業績の裏付けがあるなら、僅かな金利上昇など何の懸念要因にもならないだろう。

米長期金利については、FOMC後の最新の各社の金利見通しを待ちたいが、FOMC前には、米長期金利の年末の水準については、ドイツ銀行が2.25%を予測する一方で、HSBCのエコノミストは1.0%を見込むなど、先行きの見方が大きく分かれている点は面白い。株式相場の予測は、強気な人と弱気な人で見通しは大きく乖離するが、債券市場においてこれだけ金利見通しが異なるのは珍しい。ちなみに中央値は1.69%である。私は、当面は1.5%から上下25bpのレンジでの膠着相場を想定している。


さて、 バイデン大統領は初の国連演説で、「冷戦時代に戻るつもりはない」との演説を行った。先般の習近平とバイデンの電話会談では、バイデン大統領は「一つの中国」を尊重することを表明した。ウイグル等の人権問題には全く触れなかった。また習近平主席からは、「海外で石炭火力発電所は建設しない」と気候変動に関する新たな公約が表明された。ケリー気候変動特別大使が、再び訪中するようである。また、イランとの取引容疑でカナダで拘束されていたファーウエイの孟晩舟副会長が、司法取引で釈放され、中国に帰還した。こうした一連の流れは、バイデン政権の中で、中国との宥和モードが進展していることを示している。もちろん全面的な宥和ではなく、部分的な宥和であるものの、これは対面での米中首脳会談開催に向けての地ならしと思われる。実際に対面での会談が実現すれば、中国との気候変動問題での協力関係の強化や、新たな貿易交渉等が出てくるだろう。これは、市場にとってはポジティブな材料となる。


さて、日本については、来週はいよいよ総裁選を迎える。改革派の河野氏、財政拡張の高市氏が勝利した場合、株式市場では再び強い上昇が再開し、岸田氏が勝利した場合には緩やかな上昇となる見込み。いずれにしても、新総裁へのご祝儀相場と内閣改造、衆院選への思惑から、日本株は上昇基調となりやすいだろう。高市氏が勝利した場合には、一時的にしろ大きく円安も進行するかもしれない。また国内では緊急事態宣言の解除のみならず、蔓延防止措置もすべて解除されそうだ。こうした中での日銀短観は注目したい。総裁交代に伴う期待感がどの程度反映されるか、そして大企業全産業のDIがどうなるか。このDIが大きく改善した場合には、市場ではTOPIXの予想EPSの上方修正を織り込むだろう。国内要因は、明るい材料ばかりに見える。更には25日はテレビで鬼滅の刃の無限列車編が放映されたが、なんとトレンドワードの上から30番目くらいまでは、すべて鬼滅関連のワードが独占した。相変わらずの鬼滅人気である。さらに12月からの地上波での遊郭編の放送開始のみならず、10月10日より煉獄さんを主役としたサイドストーリーが全7話で放映されることが発表された。これはサプライズである。全く新たなストーリーなのだ。来週は、鬼滅関連株であるソニー(傘下にアニプレックス)や、鬼滅関連のグッズを販売するエスケイジャパンなどが大きく上昇するかもしれない。特に10/14に発売されるプレステでの「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」は相当に売れる可能性があり、注目していいだろう。

懸念材料は海外要因だ。米国ではつなぎ予算が成立しなければ、10月1日より政府閉鎖が発動される。債務上限問題からの米国債デフォルトの懸念は小さいが、リスク要因であることは間違いない。米金利もFOMC後は、金利上昇地合いとなっており、入札の状況によってはリスク要因となる。中国恒大問題も徐々に鎮静化する見込みだが、市場は「ネクスト恒大」への思惑も高まりやすいため、注意が必要だ。ドイツの選挙いついては来週取り上げたいと思う。来週の日経平均株価は、30,000円から31,200円と強気な展開を想定している。(総裁選次第ですよねー)

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