CIVILSESSION 14: NOSE
開催日:2018年6月23日 開催場所:東京・表参道 虎屋ビル2F
CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。
第14回目のキーワードは「NOSE」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者5名の計8名で行いました。
・石田幸彦(フロントエンドエンジニア)
・猪原悠(写真家)
・宮崎菜通子(デザイナー)
・森本翔太(起業家)
・山崎良弥(デザイナー)
グランプリは杉浦草介と根子敬生に決定しました。
CIVILSESSIONで初の同率1位という結果になった杉浦と根子の作品は、いずれも違うアプローチの作品でした。杉浦は鼻を「自信の象徴」と捉え、知人・友人の鼻の写真とともに、その人からの自分への褒め言葉を自分の写真に重ね、自分の「鼻を高くする」という本を制作しました。根子は「美人=鼻が高い」という通説に疑問を投げかけ、むしろ可愛いアニメキャラクターには「鼻」自体が存在しないという検証を行い、その調査を元に架空の「鼻がない女の子」だけで構成されたアイドルグループNO NOSEを提案、各アイドルのポスターを製作し、見事グランプリを獲得しました。
森本は自身が起業家であることから、鼻でビジネスモデルをつくる過程をプレゼンテーションし、猪原は架空の鼻を切る妖怪「劓(はなきり)」のビジュアルや背景を実在する物語のように発表しました。伊藤は即興演劇をその場で撮影し、リアルタイムでスクリーンに映し出すパフォーマンス、石田は嘘をつくと鼻が伸びるというピノキオの物語をモチーフとしたAR作品を実演。宮崎は普段から製作している作品シリーズ「Daily Color Collage」を拡張させた写真作品、山崎は自身が鼻炎である経験から、鼻から発せられるノイズ音をサンプリングし、音楽を生成できるウェブサービスを提案しました。
過去数回は概念とも言えるような抽象的なキーワードが続きましたが、今回は具体的な「もの」を表すNOSEというキーワード。しかしながらアイディアや手法が被る事はなく、想像以上に作品の幅が広がる結果となりました。
①杉浦草介(デザイナー)/Sosuke Sugiura's Nose
日本語で「鼻」を使った慣用句には、鼻が高い、鼻にかける、鼻をへし折る、など、人の自信に関する事柄が多いようです。また人は、極度に緊張している状態や嘘をついている際に鼻を触ることが多いらしく、これは「自信の不安定さの現れ」とも受け取れます。鼻とは、体のパーツの中で自身の象徴とも言える器官かもしれません。
自分のことをよく知る方々に以下二つのお願いをしました。
①あなたの顔写真を送って下さい。
②あなたの思う杉浦草介の良いところを一つ書いて、写真に撮って送って下さい。
人から送ってもらった自分の「良いところ」は、直接自分の自信になります。これを、人から自信(=鼻)を分け与えてもらうことと捉え、自分の顔写真の上に、その方の鼻を重ねていく本を作りました。鼻写真の裏面にはその方から送ってもらった言葉が記され、これを一枚ずつ自分の鼻の上に重ねていきます。ページを重ねるに従い、自分の鼻がだんだんと高くなっていく本です。
②森本翔太(起業家)
制作物を提示出来ない中で、NOSEというキーワードから事業を連想し、そのビジネス思考を作品として提示しようと考えた。
NOSEから連想出来る様々なモノの中でマネタイズに繋がりそうな「美容整形」
を題材に、市場感・課題・対策・ブランディング・マネタイズを考案した。
また「嗅覚」を題材にデザイナー・クリエイターなどプロダクトアウト型の方に向けて、マーケットイン型のマネタイズについての視野と考え方を提示した。
③猪原悠(写真家)/劓(はなきり)のアーカイヴ
noseというキーワードに対して、最初にインスピレーションが湧いたのが2011年のTIME誌の載った性差別を受けたアフガニスタンの女性の写真でした。その写真は特に衝撃的で、顔の中心である鼻を取るという行為が、とても残虐な行為だという事を示した報道写真でした。
日本でもそういった事が、刑罰として残っていないかと思い調べると、平安時代から首切りなどと同様に鼻切りや耳切りといった刑罰があったようです。戦に勝った兵士が相手の鼻や耳を戦利品として持ち帰ったり、アイヌの刑罰でも鼻を切る行為があったようです。京都には今もそれらを葬った塚である鼻塚、耳塚と呼ばれるお墓もあります。
こういった事から、様々な怨念や恨みを孕んで現代に怨霊として残っているのではないかという仮説を立てて、想像できる範囲の怨念の塊、いわゆる妖怪はなきりを、写真のコラージュで作ってしまおうと考えました。約20テクスチャくらいの写真を組み合わせて、架空の妖怪を写真イメージとして作品にしています。
話の中に登場させた、アザーソースとして、江戸時代に切腹した兵士の架空の記録分や、自分で作った子守唄の意味の違う訳、コラージュして作った鼻きり刑罰をイメージした浮世絵などを作りましたが、これらは全てフィクションです。
鼻を切られるという事はとても怖い事で、そういった刑罰に対するアプローチをフィクションと視覚的な表現でしてみました。プレゼン自体も本当にあった史実と嘘の情報を混ぜる事で、敢えて小説的、映画的なフィクション作品として構築しました。
④根子敬生(デザイナー)/NO NOSE
世界三大美女のうちの一人であるクレオパトラ7世よろしく、鼻は高い方が美しい!というのは一般的な価値観だとは思うのですが、最近の美少女画(≒萌え絵)では鼻が描かれない、描かれたとしても豆粒程度のものになっていることが多いような気がします。
そこで「果たして鼻は必要であるのか?」という観点で仮説を立て考察を行い、最終的な検証として、鼻を持たない架空のアイドルグループ「NO NOSE」のメンバーポスターを制作しました。
スライド『鼻の描写方法から考察するヒトの進化と退化』
https://www.slideshare.net/CIVILTOKYO/civilsession14-takao-neko
⑤伊藤 佑一郎(写真家)/直感と反射神経と
今回のキーワードであるnoseの意味の一つ、「直感」「勘」があります。
「直感」や「勘」というのは闇雲な行動ではなく、個々人の経験から導かれて行われるようです。これはとても写真的だと言えます。構図、色合い、空気感、天気、被写体との関係性などの撮影条件を、直感と反射神経をこなしていくからです。これは特に予測できない物事を撮影する際により発揮されます。写真家の直感と反射神経を体感していただく作品を考えました。
観客から3名演者を選び、直感で演じてもらっているところを、直感で撮影して、それがリアルタイムでスクリーンに映し出されるというものです。
無作為に体を動かしてもらう目的で脚本を用意したのですが、脚本ではなくて「マルモリダンス」をかけて踊ってもらうくらいのシンプルな事でも良かったなとパフォーマンスが終わった後気づきました。
⑥石田幸彦(フロントエンジニア)/嘘つき
世の中は嘘であふれています。本当のことなんてほんの一握りと思うほどです。
人々は嘘に対してとても敏感で、嘘が発生する度に炎上を繰り返します。
しかし、ちょっと待ってほしいのです。
その燃え盛る炎は果たして必要だったのだろうかと思うのです。
確かに許せない気持ちは誰にだってあるでしょう。
『そう思うな』なんて、とてもではないが言えません。
だからといって、なんでもかんでも燃やしていいわけではありません。
私たちが燃やしていいものは、キャンプファイヤーとちょっとの情熱だけなのです。
だから私は考えました。
自分ひとりだけで、嘘をこらしめることができないかと。
そうすれば炎は上がりません。
くすぶった火種だけで済みます。
昔の人は「嘘をつくと鼻が伸びる」と言いました。
現代の技術があれば、人の鼻を伸ばすのなんて簡単です。
顔認証というシステムがあるからです。
このシステムを利用し「嘘をつくと鼻が伸びる」作品を作りました。
⑦宮崎菜通子(デザイナー)/Nasal Cycle
人間の鼻には「ネーザルサイクル」という生理現象がり、1~3時間たつと鼻のよく通る側は反対に移動する。
知らぬ間に起こるこの鼻閉を、光や色の反射を利用した自分の作風で表現したいと考え、身近なモチーフで習作を繰り返しながら、作品を制作した。
⑧山崎良弥(デザイナー)/nose sound
花粉症である自身の経験から、鼻をすする時に生じる音に注目した。一般的に鼻をすするという音は、他人に不快感を与える音だとされている。この不快感を与える音を、サウンドとして利用できないかと考えた。それがサウンドとして成立すれば、不快感が快感に変わったということになる。
架空のウェブサイト「NOSE」を作り、サイト上であらかじめサンプルングしておいた「鼻をすする音」や「くしゃみの音」をリミックスすることができる。
一つの例として不快音が少しずつ増えていき、最終的にノイズとして聞こえるというサウンドを製作した。
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