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CIVILSESSION 20:RESTART

開催日:2019年1月26日

CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。

第20回目のキーワードは「RESTART」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者2名の計5名で行いました。

Maoko Ochi(コミュニケーションプランナー)
・加藤佑介(税理士)

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グランプリは根子敬生に決定しました。

根子は過去の自分のCIVILSESSIONでの作品を再度作り直すというコンセプトの元、第8回「GAP」で行った機械学習を再度取り上げ、ネットで集めた手書き文字を人工知能に読み込ませて「ブレ字フォント」を制作し、見事グランプリに輝きました。

伊藤はパソコンの再起動音がリスタートを思い起こさせるものとして、MacとWindowsでの起動音の違いを利用した旗上げゲームを考案し、その場に来ていた観客に実演してもらう発表を行いました。
Ochiは自身が興味のある映画というジャンルの中で、リスタートを題材としている作品として「華麗なるギャツビー」と「そして父になる」を取り上げ、「リスタートすることによって得られる気づき」を発表しました。
杉浦は、一度見たホームページを後で読もうと思ってブックマークに入れるが、その多くは忘れ去られると説明。それを再度読み始める為に、自身が保存している全てのブックマークページを出力し一冊の本を制作しました。
加藤は自身の人生がリスタートを繰り返しているとして、その軌道がまるでメコン川のようであると解説。その上で「人生には一杯のコーヒーと音楽が必要」という結論とともに、観客にコーヒーを振舞いながら民族音楽を聞かせる発表を行いました。


①伊藤佑一郎(写真家)/再起動音旗揚げゲーム

わたしの一番身近な再起動であるMacとWindowsの再起動音「ゴオーン」と「ピロッ」を、その音を聞くと同時にメーカーがすり込まれていることを利用して、旗上げゲームにしました。

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②Maoko Ochi(コミュニケーションプランナー)/My favorite heroes’ restart

人々がtwitter等で話題にしている現存の人物のリスタートは、事実の一部しか見えないものなので、映画というフィクションからリスタートを解釈して、リスタートとは何か考えようと思いました。
さまざまな映画を思い浮かべる中で、映画の中でリスタートした人はたくさんいました。greatest showmanの主人公夫妻、gone girl のエイミー、あゝ荒野の刑務所出のプロボクサー、レミゼラブルのジャンバルジャン、バタフライエフェクト。
その中で、華麗なるギャツビーと、そして父になる に着目してみました。
華麗なるギャツビーは、財を成して人生をやり直そうとした男の物語。そして父になる は愚かにも親が気づかなかった親子関係で築かれた絆に気づき、自分自身を再生する物語。
そして、再スタート、リスタート、再出発、この言葉には二つの方向性があることに気づきました。
ギャツビーは、デイジーとの時間を取り戻したいと願いつつも、戻らないことはわかっているから、過去を乗り越えて、いつもアメリカ的希望を持って一つの道を前へ進む男。
そして子供の頃から努力を惜しまなかったギャツビーは、財を成して再出発したのではなく、いつもその弛まぬ努力で前へ進み続けていたことに気づきました。
きっとギャツビーはもし生きていても、カルメンのドンホセみたいに、デイジーに新天地に行ってやり直そうとは言わないでしょう。
過去を否定することは、その努力もデイジーも否定することになるからです。
彼にとって財を成して手に入れたウエストエッグの豪邸は、未来に続く努力の結果であり、彼にとっては再出発の場ではないと理解しました。
一方そして 父になる の良多は、今までちゃんと生きてきた人生や立派な日本人の大人としての価値観を、血の繋がらない息子からいい意味で打ち壊され、本当の愛とは何なのかを学びました。
社会的地位は十分な大人かもしれませんが、自分の価値観や生き方を一度否定し、こうあるべき像を壊して新しい心に従うことは、彼にとって真のリスタートだったと感じました。
私たちは後何度リスタートできるでしょう。
大人になるとこり固まりがちな価値観を壊し、心をまた作っていく作業は骨が折れますが、それをやめたら人間として生きる楽しみもそこで終わりのように感じます。
そんな気づきをみなさんと共有できればと思い、映画の中のリスタートを考察してみました。
※当日は本人が体調不良で参加できなかったため、伊藤による代読での発表

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③根子敬生(デザイナー)/(人間と機械の)手書き文字

この企画に毎回参加していると、もう作品らしきものを20回も作っていることになるのだけれど、自分の過去の発表を見返してみると、技術的な部分で個人的に新しい試みをするものの、表現として見せる以前にただ「やってみた」だけで終わってる発表がやたらと多いと感じる。
そこで、やりかけになっていた興味・開発を「再始動」する意味で、第8回「GAP」の回で大失敗した「機会学習」を使っての画像生成を、表現として活用出来ないか?というところから制作をはじめた。

一般的に人工知能がもたらすメリットは、機械ならではの演算能力を用い、膨大なデータ量を処理することによって生まれる正確性や利便性と共に語られることが多いような気もするが、今回は、機械を一つの人格として捉え、学習過程に生成される「歪み」に注目し、そもそも歪みのある人間の書き文字を、機械の解釈を通して再生成する「ブレ字フォント」を制作し、発表した。
具体的な方法は以下の通り。

①Web上から手書き文字が描かれた手紙画像を収集し、一文字ずつ画像化を行う。

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②コンピューターに抽出した画像セットを学習させ、その学習過程の画像群から、機械的な「ブレ」が含まれた文字を抽出し、フォントを生成。

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③実際に出来たフォントをイラストレーター上で、ランダムにフォントを読み込むスクリプトを作成し、デザインとして使用してみる。
(上)元画像Helvetica組 (下)フォント・スクリプト適応後の状態

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実際のフォントとスクリプトは取り敢えずここに置いておく。

手書きの文字の量が増えれば、出身地・年代・性別・血液型・右利き/左利きによって、それぞれの特徴を持った手書きフォントをダウンロードできるサービスとか出来るかも。
人口知能など新しい技術に関しては、それ一つで完結するものも面白いが、素材作りや作品制作の一要素として使える道がないか、それも試作を重ねていきたい。

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④杉浦草介(デザイナー)/START TO RESTART

RESTARTという言葉を「もう一度始める」とだけ訳してしまうと、例えばRESETやREPEAT、REPLAYなどと一部意味合いが被っちゃいます。家にある家電のスイッチを入れるという行為はSTARTなのか、もしくは「再度電源を入れる」という意味でRESTARTなのか、よくわかりません。個人的に「一時的に停止、もしくは保留状態にしていたものを再開すること」がRESTARTの解釈として一番しっくりと来ました。

自分のMacに入っているブックマーク先のページを全て(114ページ)出力して本にしました。ブックマークは「そのページの内容をもう一度読みたい(or 見たい)」から保存しますが、その中で実際に再訪するのはごく一部です。誰でもアクセスできて、物理的スペースも取らない、物事を便利にするはずのウェブの情報が、なんでもできちゃう便利なパソコンを使って見つけられたのに、その手軽さゆえに雑にフォルダへ振り分けられ、内容どころかその存在自体も忘れ去られるのは何だか皮肉な気がします。自分だけかもしれませんが、実物の本はなんとなく本棚から手にとってパラパラとページをめくることがあるため、「こんなウェブサイトが自分のMacにブックマークされている」と思い出すきっかけになります。だから自分が「ブックマークされたページを再訪+再読(=RESTART)する」ことを「始める(=START)ための本」をつくりました。

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⑤加藤佑介(税理士)/Let it be

Restartを自分の人生と結び付け、ファッションデザインから税理士へと方向転換した軌道をメコン川に置き換えて、プログレッシブロックバンドのメコン・デルタに出会う。その出会いと共にデルタ=三角州という地形からインスピレーションを得て作品を作成しようとしたが、一杯のコーヒーと音楽が人生には必要だとの思いから、YouTubeで見つけた安心お宿のBGMと共にコーヒーを観客に振る舞うことで作品を完結させた。

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