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第3回 土木学会全国大会 第78回年次学術講演会で発表しました!【2022年度シビルエンジニアの定年退職後の活動に関する意向・実態調査結果】
はじめに
土木学会 教育企画・人材育成委員会 成熟したシビルエンジニア活性化小委員会は、2007年度から5年おきに、「シビルエンジニアの定年退職後の活動に関する意向・実態調査」と題するWEBアンケートを、若年層からシニア層までのすべての年代のシビルエンジニアを対象に実施してきました。
シニア土木技術者を取り巻く状況が変化していることを踏まえ、2022年度(2022年12月~2023年2月)も、調査を実施しました。
これから、アンケートの分析結果を、テーマごとにアップしていきたいと思います!
皆様こんにちは。
今回は、土木学会全国大会での発表について、ご紹介します!
土木学会全国大会で発表しました!
9月11日~9月15日の期間、広島において令和5年度 土木学会全国大会第78回年次学術講演会が開催され、本小委員会では、「2022年度シビルエンジニアの定年退職後の活動に関する意向・実態調査」の速報を発表しました。発表概要は、下記のとおりです。
タイトル:
定年退職後の土木技術者の活動に対する意向 -2022年度調査結果の速報-
キーワード:
土木技術者(シビルエンジニア)、定年退職、高齢者、アンケート調査
概要:
建設業界において、人材不足は大きな問題である。技術伝承、担い手の処遇改善、働き方改革、生産性向上等に対する課題も多く、定年退職後の土木技術者の活動実態を把握することは、重要である。筆者らは、2022年度に土木に関わる個人に対してアンケート調査を実施し、3,318人の回答サンプルを得た。簡易分析の結果、労働力確保や技術伝承のために就労を継続して欲しいという就業者減少への問題意識がある一方、他の活動をして欲しいという高齢者への配慮が見受けられた。シニア土木技術者の豊富な経験、技術・技能の伝承等は、5年前の調査と変わらない重要なキーワードであった。
大会2日目の最後のセッションでしたが、数十名の方に聴講していただきました。また、会場からは、有益なご意見をいただくことができました。今後の分析に活用させていただきたいと思います。
聴講およびご発言して下さったみなさま、ありがとうございました!
ここでは発表内容の一部である、「シニア土木技術者の就労継続に対する意見」について、全国大会でいただいた意見も踏まえ、少しご紹介したいと思います。
シニア土木技術者の就労継続に対する意見
こちらの図は、シニア土木技術者に、定年退職後も働いてほしいか聞いた結果です。
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2007年度調査から2022年度調査まで、全ての調査での結果を比較して載せています。途中、質問の仕方が少し変わっていますが、おおむね、ピンク色がシニア土木技術者が継続して働くことに対して好意的な意見、青色が否定的な意見です。
2007年度、2012年度調査では、「勤務時間が少なくても良いので就労して欲しい」という意見が80%前後でした。2007年当時、団塊世代が60歳を迎えることによる一斉退職で、労働者不足が問題となっていました。それが、このような結果になった原因の一つと考えられます。
シニア土木技術者に「働いて欲しくない」理由とは・・
2017年度調査では、「今までと同様に就労してほしい」が多くなった一方、「就労して欲しくない」も増えました。
こちらの図は、シニア土木技術者に「就労して欲しくない」理由の結果です。
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アンケートでは、理由を複数選択式で聞いています。2017年度調査では、「新規採用の減少に影響するから」や、「若手層、中間層の昇進に影響するから」など、自身への影響を懸念した理由が多い傾向でした。
2022年度調査では、シニア土木技術者の就労継続に否定的な回答が、さらに増えています。しかし、その理由としては、「新規採用の減少に影響するから」が2017年度調査よりも7%程度減少しており、「仕事以外の社会活動や趣味を行ってほしいから」や「健康上の不安が考えられるから」の回答が、2017年度調査よりも5%程度増えていました。
残された人生を、就労継続よりも大切なものに使って欲しいという高齢者への配慮が、多くみられる結果でした!
シニア土木技術者に「働いて欲しい」理由は?!
一方、シニア土木技術者に「就労して欲しい」理由を図に示します。
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2017年度、2022年度調査において、シニア土木技術者に「就労して欲しい」理由はおおむね同じでした。しいて言うなら、「技術などの相談相手」や「次世代育成に必要」は割合としては高いものの、減少傾向を示しており、「資格保有者として必要だから」や「労働力として必要だから」が票を伸ばす傾向でした。
シニア土木技術者は就労継続をどう考えているのか
これまでの結果は、シニア土木技術者に対しての全世代の土木技術者の意見です。それでは、シニア土木技術者本人はどう考えているのでしょうか。
これは、【2022年度シビルエンジニアの定年退職後の活動に関する意向・実態調査結果】第1回「定年退職後の就労に対する動向」で詳しく紹介しています。60歳代までは「収入を得る」が20%程度と最も多く、「組織・企業からの要請」が60歳以上全体で15%程度でした。一方、「次世代育成をしたい」という選択肢の順位は低い結果でした。
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企業側が再雇用のシニア土木技術者に求める役割
また、本小委員会が行った2022年度の企業に対するアンケート(定年退職後の技術者の雇用に関する実態調査)では、企業は、シニア土木技術者に「能力・経験」や「教育」の役割を期待しており、技術の伝承を求める面も大きいことが示されています。
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シニア土木技術者本人と企業や全世代の土木技術者の考え方に、少しギャップが見られる結果です。
まとめ
シニア土木技術者が、「能力・経験」を活かした技術の伝承や次世代の「教育」に魅力を感じ、その役割を全うできるような仕組みを、企業側がきちんと整備するのか、もしくは、シニア土木技術者は、「有資格者」や「労働力」であると、企業側がきちんと理解し、シニア土木技術者に就労してもらうのか・・・シニア土木技術者個人と企業や全世代の考え方のギャップをどう埋めるかが、シニア土木技術者が今後さらに活躍するための対策の一つになるかもしれません。
今回の調査分析が、皆様の参考になれば幸いです。
次回は、社会情勢変化や、近年話題になっているリスキリングについての分析結果をご報告する予定です。お楽しみに!
2023.9.22 yaa
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